佐藤(東大卒)の場合①
僕の名前は佐藤健太、25歳。東大法学部卒である。
折角なので、この機会にもう少しこの世界の説明をしよう。
「学歴社会法」で定められるポイントは基本的には上限100ポイントである。
しかし、その上限の100ポイントを適用されている大学は一つしかない。そう、僕の卒業した東京大学である。
「学歴社会法」には「東京大学卒には一律で100ポイントを与える。これはどんな状況においても上下しない不動のポイントとする。」という条文がある。
さらにその次の条文には「前条の規定は、東京大学医学部卒には適用されない。東京大学医学部卒は一律で101ポイントとする。」とある。
以上の規定があるため、僕たち東大卒は世間では通称「100ランカー」と呼ばれ、さらにその中でも医学部卒は「101ランカー」と呼ばれている。100ランカー・101ランカーは何でも望む職種に就くことが許され、免許が必要な職種を望むなら、即日必要な免許が交付されるという類稀な待遇を受けることができるようになった。まだ表には出ていないが、101ランカーだけに許される行動を示す規定も存在するらしい。
だから、「学歴社会法」が公布されてから、殆ど全ての人間が東大、中でも医学部を目指すようになった。
かく言う僕も生まれて物心ついたときから東大を目指して勉強して見事現役合格し、ストレートで卒業した。晴れて100ランカーになった僕は、機械系最大手の企業へ就職し、今に至る。
ちなみに、就活というものは、この制度のもとでは、卒業認定されてから行うものになった。いわゆる適性検査も面接もナシ。マイナンバーと5Gの発達により学歴含む個人情報が完璧に全てデータ化され、志望届を出せば数分で合否が分かるようになったのだ。
だから将来を約束された100ランカーの僕たちなら、卒業認定がおりてから春先までの約1ヶ月間の間で、志望する就職先に志望届を出すだけ。滑り止めを何社も受けたりする必要もナシ。これが良くも悪しくも現状である。
拙い説明だが、これでこの制度の一端が分かっていただけたのではないだろうか。