うきうきのアリッサ!
わ、私なんでこんなに胸がバクバクしてるの!?
あ、相手はセバスよ!? た、ただの、し、執事なのに!!
私はセバスと一緒に旧王国の観光名所をめぐる旅に出ているわ!
今日は二人で帝国にほど近い、旧王国の遺跡に来ているの。
2千年前に出来たとされる遺跡には、不思議な物で満ち溢れている。
「わ、わわ! セ、セバス、あれみて!!」
「……お嬢様、慌てないで下さい。あれは……きっと昔の馬車でしょう……」
「え!? ば、馬車? 全身鉄で出来てるのに動くの? 先端になんか筒みたいなの付いてるし……」
「うるさいですね。これでも食いやがれです」
セバスは私の口に何かを押し込んだ!?
ちょ、ちょっと!! 乙女の唇の触るなんて……はしたない……。
――もぐもぐ……もぐ……もぐもぐもぐもぐ!! 美味しい!!
「――美味しいもぐ! もぐ、これ、もぐ、何?」
「令嬢なら食べながら喋らないで下さい。……これはこの遺跡名物『温泉まんじゅう』です」
「温泉まんじゅう? ……渋いお茶に合いそうね」
「……今度、東の国から緑のお茶を仕入れておきます。楽しみにしてください」
「え、やった!! 一杯持って帰ろう!!」
ウキウキ気分で私は思わずセバスの手を取ってしまった!?
セバスの低い体温が私に伝わる……。
わ、わたし思わず手を握っちゃったわよ!?
セバスはメガネをクイッと直して、ため息を吐いた。
「はぁ……お嬢様が勝手に動かれても困ります……ほら行きますよ。ついてきやがれ」
「う、うん……へへ……いつもありがと……」
メガネの奥から優しい眼差しが見えた。
そんなセバスの事を一瞬だけ……そうよ! 一瞬だけ……見惚れてしまった……。
――今回の観光はお泊り旅行……も、もしかして私はセバスと……きゃーー!! お、大人の階段を登るのね……。
私が一人身悶えているときに、スマート水晶がブルブルと震えた。もう、なんなのよ! 妄想くらいゆっくりさせなさいよ! え、っと何何……
セバスも私のスマート水晶を覗き見る。顔が近くて良い匂いがしてきた。
「……お嬢様」
私は甘い空気を霧散させる、令嬢としての威厳のある声でセバスに命令をした。
「セバス! すぐに帝国に戻るわよ! クリスの様子がおかしいわ! あの子は私の大事な友達! 見過ごせないわ!!」
セバスはそんな私の姿を見て嬉しそうに笑い声をこぼした。
「ふふ、かしこまりましたお嬢様」
私は握っていた手を離そうとしたけど、セバスは離してくれない!? え、なんで!? むしろ強く握って来た!
「セ、セバス!?」
セバスは私の耳元に顔を近づけた。
「……ここはまだ旧王国です。はぁ……寂しがりやなお嬢様のために帝国につくまでは握ってあげますよ」
「きゅう〜〜!?」
私はカチコチになりながら帝国を目指すのであった……