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カフェで一息


 帝国にあるカフェはいつも華やいだ雰囲気であった。

 大きなテラス席は沢山のお花で彩られている。

 変わった料理もとても美味しくて、いつしかここは私達の憩いの場となっていた。


 テーブルには私の大切な仲間が取り囲んでいる。


 私はみんなを見るだけで幸せ……。


 ――あ、ギル!?


「む、どうした?」

「ギル、塩振りすぎよ! 身体によくないわよ。……はい、こっちのサラダも食べてね。身体にいいから」


「……わ、分かった」


「クリス様! パンケーキが来ましゅ!」

「あら、それはテッドが食べていいわよ?」


「嬉しいでしゅ!」


 可愛らしい猫獣人の店員さんがテッドの前に美味しそうなパンケーキを置いた。

 ホカホカと甘い香りを漂わせ、はちみつと木の実とホイップクリームがたっぷり掛かっている。


 テッドは目をキラキラさせながらパンケーキをフォークで刺した。

 口に運ぶ前に、フォークからパンケーキをポロっと落としていた……


「あっ……」


 しょぼんとしたテッドのお顔も可愛らしい。

 隣にいたミザリーが自分のフォークを使ってパンケーキを取って、テッドの口元に近づけていた。


「……はい、テッド君。フォークが重たいわ。はぁはぁ……早く……食べて」


「ひゃ、ひゃい!?」


 顔を真っ赤にさせたテッドがパクっとパンケーキを食べる。

 その顔が蕩けるような表情になった。


「美味しいでしゅ! ミ、ミザリーさんもどうぞ……」


「ありがとう」


 アリッサがその光景を見て目を細めていた。


「あー、胸がいっぱいだわ……。ちょっとこの空間糖分多すぎじゃない? はぁ〜、どこかに素敵な男性いないかしら……。この際多くは求めないわ! イケメンで優しいだけでいいわ!!」


「そ、そんな人なかなか居ないわよ、アリッサ。……レオンとかどう? 回復一杯していたし……」


 アリッサが口に含んでいたシュワシュワジュースを吹き出した。


「げほっ! げほっ!? ……ちょっと驚かせないでよ! ありえないでしょ! あいつクリスの事を……て、て、て、手篭めにしようとしたのよ!?」


 アリッサの横に立っていた執事のセバスがハンカチを取り出し、アリッサの口元を拭く。

 その拭き方は猫の顔を撫で回すように執拗な拭き方であった。


「……お嬢様、顔が汚いですよ。クリス様とギル様の事を心から祝福しているのに、恥ずかしがって欲しくもない恋人を求めるふりをする……そんなお嬢様は本当におバカ様なので、本当に好きになった人としか付き合ってはいけません。本当におバカ様なので騙されないか心配です。本当におバカ様なので」


「うるさいわね! 私だって殿方とデ、デ、デ、デートしてみたいのよ!!」


 セバスが盛大に溜息を吐いた。


「はぁ〜〜。……分かりました。今回だけは特別です、この私、セバスがお嬢様をエスコートして差し上げましょう。それで満足して下さい。訓練の一貫だと思いやがれ」



「え!? あ……うん……へへ……な、なんか照れちゃうな……。セバスからデ、デートの誘いなんて……」





 私とギルはそんな光景を微笑ましく見ている。

 一瞬だけ、、ギルは寂しそうな顔をしていた。


「――カインがいないから寂しいね」


 ギルは悪態を付いた。


「ふん、あんな奴……」



 私達が王国民を使って聖女プリムを封印した後、ギルのお父様が王国を本格的に占領して行った。

 私の力で王国内の人口が大幅に減っていたので、簡単に占領出来てしまった。

 そして、そのまま王国に支配されていた共和国を助けて、この地域は安定を取り戻して行った。


 王国城下町の広場にある封印の石像は厳重に管理されることとなった。

 私の力から生き残る事が出来た王国民達を集めて、レオンを筆頭に、管理者として新しい王国で生活をしていく。


 レオンはあの後、クズ王を斬り殺し、自害しようとしていた。実際、剣を腹につきたて、横にかっ捌いていた。

 アリッサが「生きて償え!!」って叫びながら回復魔術をかけて一命をとりとめたけど、それ以降、レオンのアリッサを見る目が……ハートになっていて……


 レオンの事はどうでもいいわ。



 プリムが最後に呟いていた言葉……私しか気が付いてないかもしれない……。


『主様……カ……様……』


 プリムに力を与えた存在がいるはず。


 そして、最後まで姿を現さなかったカイン……。

 彼は帝国を裏切って、王国に加担したんじゃなかったの?

 なんで槍で私達を助けたの?

 なんで姿を消したの?

 カインが黒幕なの?


 私はカインという存在が分からない……

 でもギルは違う。


 カインの事を本当に信頼していて、心を許した友であった。



「――カイン。次会ったときは、ぶん殴ってやる……」



 ギルが信じ続ける限り、私も信じるわ。



「ええ、その時は私も」


「……それは……クリスがぶん殴ったら洒落に……ならん」


「え!? ちょっとギル!!」


「ふふ。クリス、明日はよろしくな」


 明日は初めてギルのお父様と会うことになっていた……。

 私は柄にもなく緊張している。


「う、うん……が、頑張るね!」




 ――この平穏がつかの間かもしれない。

 だから私は今を精一杯楽しむの。











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