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第一章 ゼロの烙印


 王国随一の賢者が私の前で嘆いた。


「な、なんと!? クリス殿の魔法適性ゼロだと?? あ、ありえん……そこらの庶民でさえ持っている魔力がない……」


 いつも優しくて綺麗なお母様の顔がオーガのようになってしまった。


「ああ、あ、悪夢よ……わ、私の夢が……」


 お母様はその場に崩れ落ちてしまった。



 お父様は厳しい顔付きで賢者に言い放つ。


「我がナイツ公爵家の娘が魔力ゼロのわけが無い!! 今一度、今一度魔法適性検査をお願いいたします!」


「……ふむ」


 賢者は再度、私の身体に魔力を通した。

 私は何をされているかわけがわからない。

 魔力なんてものを感じられない。


 賢者は再び落胆した。


「だめじゃ……ノー魔力じゃ。……スラム街の連中どもから探せば魔力ゼロはいるはずじゃろう。……だが、貴族から魔力ゼロが出ることは歴史上ありえない事じゃ……」


 お父様は天を仰いだ。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!! わ、私の野望が……。……いや、まだ次女のプリムがいる。今から王子に売り込んで……」




 この王国の貴族は十五才になると、魔法適性検査を行われる。

 身体の中で検査できる程度の魔力が育つのが十代前半と言われている。

 そして貴族たちは王立貴族魔法学園のホールで魔法適性検査を行われる。


 各々の名家が勢揃いで、これは令嬢達の晴れ姿の場でもあった。


 まさかの事態に呆然としている私を押しのけるように妹のプリムが前に出た。


「ちょっとクリスお姉さま、邪魔よ! ……無能令嬢は下がってて」


 気が強くてわがままな妹。いつもだったら私だって言い返すのに、今は言い返す言葉がない。



 妹の検査が始まると賢者の顔つきが変わった。


「お、おお!! これは……聖なる魔力を感じる……ふむ……こいつは『聖女』じゃ!! うっほほーい! 百年に一度の高純度な魔力じゃわい!!」


 魔力の質に応じて私達の適正ジョブが決められる……はずなのに……。

 なんで私は魔力がないの!? 私の前の令嬢達は『プリースト』だったり『魔法剣士』だったり『マジシャン』だった。



「おお! 流石ナイツ家のご息女!」

「ふう、これで国も安泰だ」

「聖女様の降臨だ!!」

「……ねえ、王子の婚約者様ってクリス様よね? ……プリム様に変えたほうがいいんじゃない?」

「おお、名案だ!!」

「そうだそうだ!!」



 来賓席の中でもひときわ豪華な席に座っている国王が立ち上がった。

 騒いでいた貴族達が静まり返る。

 国王の横には第一王子……であり私の婚約者であったレオン様が座っていた。

 端正なそのお顔は無表情で考えが読めない。

 でも、きっと落胆してることでしょう……


 王が口を開いた。


「ふむ……これは面倒なことになったな。我が王国は魔力の強さを重んじている。近隣最強と言われるのも、魔力が高い貴族に支えられての事だ。……我が息子を魔力ゼロの娘と結婚させるわけにはいかん! 我が名はロメオ・バルバトス! 我が名の元で、王子レオンと公爵令嬢クリス・ナイツとの婚約破棄を言い渡す!! ……そして、新しい婚約者はプリム・ナイツとする!」


 会場がざわめいた。


「おお、流石ロメオ王!」

「聖女様と王子様を祝え!!」

「……ていうか検査の後に婚約者探せばいいじゃん」

「馬鹿!? 王子が幼少の頃クリス様を見初めたからだろ? それに貴族が魔力ゼロなんて思わないよ」

「王様バンザーイ!」

「王子様、聖女様バンザーイ!」

「――――」

「――――」



 妹のプリムが振り向いた。

 その顔はいやらしい笑みを浮かべて勝ち誇っていた。

 お父様とお母様はもう私を見ていない。妹の横で手を挙げて声援に答えていた。


 こんなにも大勢の人がいるのに、魔力がないというだけで誰も私の事を見ていない。


 私は一人ぼっちだ。


 レオン様を見ると、やっぱり何を考えているかわからない表情をしていた。


 ――ああ、私に落胆したのね……


 気がつくと、私の瞳から一筋の涙が流れていた。




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いじめられっ子のぼっちが生まれ変わる!

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