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いばらひめ

作者: 幌雨


むかしむかし、北関東の某所にお姫様が生まれました。それを記念して、家と関わりの深い人たちを数多く招いた宴が催されました。


七人の有志による占いの出しものの最中、「この娘は将来すごい美人になる」「頭のいい娘になる」などと調子のいいことを適当に言っていると、屋敷にひとりの老婆がやって来て言いました。


「みんなを呼んだのに私だけ呼ばないなんてヒドい!お前らなんか、糸巻きの針に刺されてみんな死ねばいいんだ!」


老婆は言いたいことだけ言うと、踵を返して憤懣やるかたないといった風情で出て行きました。


この珍事によって、宴は一気に白けてしまい、お開きになりました。

壇上の占い師の一団も唖然としてしまって、「針が刺さったぐらいで死ぬわけないよね」などと意味のないツッコミを入れるぐらいしかできなかったのでした。


十六年の歳月が過ぎ、赤ちゃんはいつしかかわいらしい少女に成長しました。


ある日、娘が糸巻きをしていると、うっかり針で指を指してしまいました。

薬を取ろうと立ち上がろうとしましたが、なぜか頭が朦朧として、そのまま寝込むことになってしまいました。


慌てた父親はかつて呪いの言葉を吐いた老婆を探させましたが、見つけ出した時には老婆は町外れの自宅で既に息絶えていました。


検死の結果、老婆の死因は新型インフルエンザであることが判明しました。

老婆には先週メキシコへの渡航歴があったのです。

それがわかった時には、インフルエンザは屋敷の全員に移っていました。父親もやむなく寝込んでしまいました。


数日後、病は屋敷だけでなく町全体に広がっていました。

噂を聞きつけた医師たちが治療にかけつけるものの、タミフルが思ったように効かず、逆に次々と罹患して倒れていきました。


いつしか訪れる医師もいなくなっていましたが、ある時隣の町から医師の玉子である研修医が派遣されてきました。

研修医は他の医師たちとは違う薬、リレンザや新たに開発されたワクチンを持っていたのと、気候が温暖になり病原体の活性が低下していたため、見事にインフルエンザの流行を抑え、人々を治療する事ができました。


その後、研修医は診察で出会った娘と恋仲になり、その町で開業として末永く幸せに暮らしましたとさ。


めでたし、めでたし。


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