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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第0章 0%の鉄板
98/123

0%の鉄板

アンドーソンの魂と名も知らぬ

少女の魂が溶け合う


『大丈夫だよ。もう寂しくない』


「あなたは……誰?」


『アンは……あたしはあなたになるの。

あなたの一部。

短い時間だけど、一緒だから安心してね』



少女は野原で涙を流す。

一緒……その言葉の暖かさに涙が出てくる



少女の匂いを嗅ぎ付けた餓鬼が

命を喰らわんと近づいてくる



『あなたのお名前……聞かせて』


「ミカ……ミカ.レミナス」


『アンの名前は、アン.ドーソンだよ。』



少女の魂と完全に溶け合い

少女が変貌していく


黒髪が見る見る赤く……

燃えるような……生命を体現したような赤髪

それはアン.ドーソンではなく、あの精霊の残滓



  「……暖かい……もう寂しくないよ』



怪物が迫る。しかし餓鬼の醜い爪は

少女に触れる事などない



地中から突如現れた不定形の魔物が

怪物を肉を裂き、骨を砕き

断末魔すら粉砕する



有り得ない事だ。いや、有り得ない事だった

種族が違うとはいえ、

同系列の怪物に魔物が襲いかかるなど



魔物達は人間を救い続けてきた。

どうすれば人間が助かるのか…………



前もって助けるには、どうすれば良いのか?

精霊が手本となり、他の物もそれを真似た



他でもない。魔物が尊敬する少女の魂

魔物が憧れる精霊の王 その残滓(ざんし)を持つ少女


護らぬ訳がない 見過ごすはずがない



例え我が身朽ちようとも少女を護る

例え少女の魂が神に還ろうとも

肉体すら安らかに送り届ける



魔物達の中で存在した暗黙の了解



倒れていた少女に

魔物達が覆い被さる。

少女を優しく包むように


少女を傷つけないように



…………



…………




『…………本当にどうにかなっちゃったよ』

天界で神が笑い声をあげる



『…………線を繋げるのは……全員ですね』



(ライン)……神と対話する為の儀式


神が特定の人間を気に入れば線を繋げ

更に線を太くしていく事で

その人間に力を貸せる


生涯を神に捧げた神官でさえ

10の神と線を繋げれば偉業と言われ

王国の大神官として丁重に招かれる。


神の使い そのものだ。



少女は幼くも全ての神と、線を色濃く繋いだ

50を超える神々全てと……


いや……1つだけ繋いでいない

此処にはいない神

この世界の何処にも存在しない神

神々が捜し求めている 1つの神だけが


ミカ.レミナスと線を繋いでいない




『彼女ならさ……姉様を……見つけられないかな?』



神々が見つめ合う

出来る訳がない。神々が5千年捜しても

手掛かり1つ残っていない


……だからこそ……アン.ドーソン、

いやミカ.レミナスには期待してしまう




その後、少女は村人に拾われる

魔物達は少女を陰ながら見守り続けた

いつか少女を迎えに来る者が現れるまで…………




『そろそろ……アイツの用意を

しておいた方が良くないかい?』



アイツの用意……あの精霊の事だ


『人間の器か……あの物に

耐えられる力の人間となると……』



器神が渋い顔をする


『僕は何でみんな人間になりたいか

不思議だったんだよね。

この前も竜が『人間にさせろ』とか言ってきたし』



『アン.ドーソンを観ればわかる気もするが……』



『…………予定通り。使う』

地神が決定を行う


末弟時神が

『タイミングが地神(とおさま)に任せるよ

石木櫟は時を止めてるから』



『…………わかった』



精霊の望み。人間の身体を得る事

人間とは弱い生物

あの精霊に耐える器を造る為には

強い器が必要だ。当然強い人間になってしまう


それは人間ではない

あの精霊の望みでは、ないのだろう



そこで用意してやった。

石木櫟と名乗る異世界人を……


アイツは人間の身体を持っているだけで

この世界の人間では無い。

魂も肉体も力も別世界の代物だ



石木櫟の存在を消せば、

精霊は自身の望む人間になってくれる



何より……アイツは一人で

この世界の人間を殺し過ぎた

神々も怒りが溜まっている



異世界からの侵略者 石木櫟(イシノギクヌギ)

どうやって来たかは知らないが

舐められたままで終われる訳が無い




『時間を止められているとはいえ、

気がついたら百年以上経っていたら

どんな気持ちになるんだろうね?』


石木櫟は祈った。『アンに会いたいと』

その結果。自身の存在を神によって止められ

老いる事も、行動する事も許されず



ただひたすら存在だけしている。

アン.ドーソンと再開させる為に



生命神に改めて確認する

生命神(かあさま)アン.ドーソンの魂は

あの精霊に残ってるよね?』


『そうね。一分……一厘にも満たない程だけど、

これも、あの子の力だったのかしら?』



『良し!十分だ。これからのペースだと

あの精霊が望みを言うのは……

25……いや……10年後だね』



『……随分と早いのだな?』

神の1つが不思議な顔つきをした。



ここ数年、精霊は

誰も見殺しにしていなかった


ならば残り200人は

どれほど時間がかかるか

計り知れなかったが……



その顔を見た時神は満足そうに


『気づいてるのか知らないけど、

あの精霊。もう時期、慌てて人殺しに走るよ

自身の大事な一部(すべて)が消えたんだからね。


後は願うだけで終わりなのに』



精霊は勘違いをしている

1000の人間を殺せば?


違う


1000の人間を救えば望みと願いを叶えると

誰も気づいていない。


目標を遥か昔に達成しておきながら

未だに誰も願望を言わない

だから神も叶えない



そしてアン.ドーソンも気づけなかった

少女がどれほど、あの精霊を支えていたのかを。

支えになっていたのかを……



少女を喪った事も解らずポッカリと

空いた心の穴……その穴を埋める為に

急ぎ、少女に会うことを望むはずだ。



自分の心に耳を傾ける事すらせず

少女はまだ支えているとも知らずに




『その時期にもう一回集合しようか?

観る価値無いけどね。

こっちにはアン.ドーソンもいるし』


『石木櫟がアン.ドーソンのように

精霊の声を聞こうとすれば、どうなる?』


神の1つの疑問。流石に今の精霊が

自分から殺しに行くとは考えにくい



『……賭けるかい?兄様。

石木櫟は精霊の事なんかどうでも良い筈だよ』



神が(わら)

『……辞めておこう。賭けにならん』



神々が頷き、姿を消していく




…………


…………


予定通り石木櫟は死に、精霊がその身に入った


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