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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第0章 0%の鉄板
97/123

転生への階段 (真)2

精霊は喜びの(うた)をあげる

初めて1人ではなくなった喜びの歌



森全てを焼き尽くし(やめて!)


生物を根こそぎ灰に返し(どうしたの!?)


草木1本残らぬ炎の歌を(ダメだよ!)




精霊(あなた)はやり方を間違えてる!

少女は精霊の心から声を荒げる



『…………』

精霊は悲しそうに1人頷く。




大丈夫!アン怒ってないから。ね!

アンも一緒だから、頑張ろ!



『…………!』

精霊は笑う。嬉しそうに





それから、その精霊は救い続けた

道に迷えば光を照らし

干伐があれば光を弱め……雨を待ち



優しく 全てを見守り続け


救い続けた。場所も頻繁に変え

救い続ける。ひたすら。感謝もされず


それでも精霊の力では

どうしても救えない人が出てくる

その人を優しく看取り。


藻掻き苦しむ者がいれば、

牙をもって神へと捧げ……


その後、火をもって葬う事で神へ返す

その度に精霊は涙を流す



百人を救い、1人を救えない

その度に精霊は悲しむ


千人を救い。10人への救えない存在へ

己の無力感に絶望していく



…………



400人を救えなかった頃

精霊にお友達が出来た。

精霊の考え方に賛同してくれたのだ


現世の精霊(まもの)……深淵の精霊(まもの)


これまで以上に救える人が増えた。

皆で知恵を振り絞り、様々な救いを施す

それでも、やはり救われない者は出てくる



……お別れの時間が近づいてくる




精霊が800人を救えなかった頃

精霊達に救われた者は数十万人を超えていた。




その時が訪れる

『アン.ドーソン……転生の時間だ』




……最後に精霊さんとお話ししていい?


『……構わん』



 

貴方はもう1人じゃないから

泣かなくていいんだよ?

精霊でも魔物でも種族なんて関係無い。


みんな貴方の優しさに……ついてきてくれてる

みんな貴方と友達になってくれてる。



アンの声……いつの間にか届いてないよね?

きっと……アンは必要ないからなんだよ?



だから……さよなら

少しだけ……アンを置いていくから

貴方の暖かさを……少しだけ貰って逝くね




『ヒトリハ……サビシイ』



大丈夫!貴方は1人じゃない!

周りを見て!貴方の心を見て!



……それでも寂しかったら……

またアンが来てあげる

必ず貴方を迎えに行けるように





少しだけ……置いて来ちゃったけど……

少女の申し訳なさそうな言葉に神は笑う


『……構わん。どうとでもなる』


神に導かれ、少女は天上へと誘われる


神の1つが言葉を発する

『この娘がアン.ドーソンか……』


「こんにちは!」


世界に存在する全ての神が集まっていた。

精霊が人々を救うたびに……生物を救う度に

感謝をしていた。

精霊ではなく。神々へ。感謝は信仰となり


神々の力の糧となる

その手助けまで、あの精霊はしていた



器神が少女に近寄る

『アン.ドーソン。そなたの功績は立派なものだ

望みの体に転生させてやろう』


『…………』


「誰でも良いの?」



全ての神々が固唾を飲む

退屈な神々は賭けをしていた。


あの精霊を操った少女が何になりたいのかを



金持ちの子供か、貴族の娘か……

あるいは普通の娘も有り得る

王族の子でも、力ある勇者であろうと

望みのままだ。神々全てが力を貸すだろう



少女は選択する。そこで少女の底が知れる

何になろうと神の予想の範疇……そのはずだ




少女は世界を見下ろす

「本当に誰でも……いいの?」二度目の質問



世界の根本を創った神の1つ 器神が

『勿論だ。決まるまでは此処に居ても良い』



破格の待遇。神の住処に人間の魂が

入る事態あり得ないこと

それに加え……此処に居ても良い……つまり


神になっても良いと、言っている



それも含めて賭け事だ



「あの子……あの子に転生させて」

少女が指指した世界を神々が見つめる



『…………』

それは野原に捨てられていた少女

捨てられたのではない。母親が怪物に喰われ


必死に逃した結果。野原で力尽きていた



根本の神 生命神が

『あの子はもう魂が消える。

10分も持たない。他の子にしなさい』



怪物に匂いを嗅がれ追い詰められている。

今や死を待つだけの存在



それでも少女は意見を変えない

「アンは2回も確認したよ?」



末弟 時神がほくそ笑む

声変わりしていない少年のような声で

『僕の勝ちだね』


アン.ドーソンは早く死にたいんだ

早く死んでまた。あの精霊の元に戻る気だ

そんな事できる訳がないのに


その事を教えようと少女に近寄ると



「違うよ」少女は振り向き無表情に言い放つ

『…………え?』



「あの精霊(ひと)は、もう1人じゃない。

でもあの子は1人ぼっちなの……

だからアンがついててあげなきゃ」


『あの子はもうすぐ……死ぬんだよ?

神の決定だ。覆らない。覆えせない』



少女は神々に笑いかける

「1人は寂しいから……神様……お願いします



    あの子を1人にさせない為に

    あの子に転生させて下さい」



名も知らぬ……会ったこともない人の為に

万能の望みを……捨てる。




『…………これは(アン)の総取りかな?』

神々が絶句している中、声を出す

神の予想を覆し、神の考えすら超えていく


地神(とおさま)生命神(かあさま)宜しいですか?』

器神が2大神に確認をとると2つの神は頷く



…………


…………


アンドーソンの魂が少女と溶け込む




…………『器に入れて来ました』

器神が戻ってくる


そして神々は少女の行く末を確認する

決まりきった未来を……覆らない決定を



『……あのさ。』

末弟が声を出す


あの子を救えないか?……


  違う


もう決定されている。神の力は届かない

祈りがあろうと届かない



『賭けをしないか?あの子が助かるかどうか』



『鉄板ではないか!勝負にならん』


そう。鉄板だ。あの子は助からない

何も起きず怪物に喰われる。決まっている


『だからこそだよ!僕は賭けるよ

勝ったらあの子と(ライン)を繋げてもらう』



末弟の言葉に神々が乗る

『我も賭けよう。報酬は末弟と同様』

『私も賭けたい!あの子面白そう!』


『……ならん!』

1つの神 神々の父 地神が声を荒げる

『……地神(とおさま)?』



『あの子は私と繋げてもらう。

悪いが鉄板に賭けさせてもらう』

神々が笑い合う


次々と皆鉄板に賭ける





    0%の鉄板へ




神々は期待している。

予想を裏切り考えを覆し、

神の決定までも打ち破れるのか?





決まっている。奇跡がおきる

いや……すでに起きている

その布石は、ずっと積み重ねていた



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