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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第0章 0%の鉄板
96/123

転生への階段 (真)

第4章ラスト 転生への階段 の別視点です

コンコン……コンコン


「ハイハイ……仕事の話しかね……アンちゃん?」



隣の夫婦の扉を叩いたのはアンだった




「おにぃちゃんどこに行ったか教えて?」


「……わからないわね?何か用事だったの?」


「うん!おにぃちゃんに

これからはアン達と

ずっと一緒にいてほしいってお願いするの!」



「……お兄さんは、確か……

森に行ってるはずよ……

おばさん達が連れて行ってあげる」


「ありがとう!

おじちゃん、おばちゃん!」



少女の手を取り、森へと入る


…………



…………



「おじちゃん、おばちゃん。どこ〜?」



森の奥へと入ると2人は消えてしまった


意図的に


青年は願った事は全て叶えてきた

順番通りに……あの少女が

青年の仕事を辞めさせるのは簡単だ


二度とするなと言われれば

二度としない。あの青年は感情など無い

ただの道具だ。


村人達の願いを叶えるだけの……




それをさせない。

その為に魔物が住むと言われている森へと

連れてきた。置き去りにする為に


あの姉妹は村人達にとって邪魔者だ

青年を一人占めしている

村人が上手く扱ってやれば

みんな幸せになれる。


その為に……まずは、妹から消えてもらう



夫婦は足早に森を出る

日中だというのに寒気がする

気を抜けば凍え死んでしまいそうな錯覚



「……流石に戻って来れないでしょ?」

直接手を下さないのは夫婦の優しさか……

手を汚したくない醜さか……

誰にもわからない




「おにぃ〜ちゃん。どこ〜?」



少女は構わず奥へと入る

この程度ならまだ帰れる自信があった

道も覚えている


姉と違い、妹は方向感覚に優れていた



しかし



「…………なんだろ?」


更に奥、更に奥へと突き進む

これ以上は帰れなくなる。

解っていても少女は奥へと。進み続けた



兄は辛そうだった。初めから兄は

人など殺したくは、なかったんだ。


少女1人がすぐに気付いた。



でも……この先に……もっと辛そうな人が居る



奥へ進む度に寒さが増す

少女の体力は奪われる


「おねぇちゃん……おにぃちゃん……」




その人がいた

とても暖かそうな人

全身が燃えているような……でも



その人がこの寒さの原因だった



少女はその存在に声をかける


「どうしたの?一人なの?」

『…………』


「名前はなんて言うの?お家は?」

『…………』



何も喋ってくれない……

「寒いから……少しそばに居ても良い?」


『…………』

その人はコクリと頷き


腕を伸ばし辺りを優しい光で包み込んでくれた


「暖かい…………ありがとう」

少女はそのまま気持ち良く眠ってしまった



…………


…………



夜が明けた。その人は変わらず側に居てくれた

ずっとアンを見守っててくれた



そうだ!まずアンの事から喋らなきゃ!

この人も不安なんだよね?


「おにぃちゃんを捜しにきたの

でもおねぇちゃんがダメって言うから……」


その人は頷いてくれた

ちゃんと伝わってるよね!


「アンの名前はアンだけど……

アナタは?良かったらお名前教えて。」


『…………』



その人はゆらりと消えようとする


「待って!行かないで!」

『…………』



その人は消えてしまった

アンは一人ぼっちだ。……違う。アンには

おにぃちゃんとおねぇちゃんが居てくれる


でもあの人は……ずっと一人ぼっち……

きっと誰よりも一人だったんだ。

だから……あんなに悲しそうな顔を……



想像しただけで涙が溢れてくる

「うぅ〜……ごめんね。

アン。嫌な事きいちゃったよね?

もう聞かないから……戻ってきて……」



『…………』

その人はあたしの目の前に現れてくれた


「来てくれた!」

あたしは飛びつこうとしたが

その人はひらりと身を躱す。

恥ずかしいのかな?……でも


「えへへ〜…………また会えて良かった……

もう一人は嫌だよね?ずっと一緒にいよ!」



『…………!』


その人は笑ってくれた




それからずっと、その人とお話をした


ずっと一緒だった。

次第に体力がなくなっても……ずっと


話す力も無いけど……一緒だった


「櫟おにぃちゃん。おねぇちゃんを守ってあげて

ジェシカおねぇちゃん。我儘言ってごめんね。」



多分アンは死ぬんだろう。

パパとママの所にもうすぐ……行ける



…………まだいけない



この人はアンが居なくなったら

また一人ぼっちになっちゃう。


それだけは……悲しい思いはさせたくない


名前……聞きたかったな



でも……もう……ごめんね。




「一緒に居てくれて……ありがとう。

1人は寂しいから……大事な人をつくってね」


『…………イ……ヤ……ダ』


その人は……あたしを慎みこむように

両腕を広げてくれた。


「……アンがずっと……一緒にいてあげるから

…………嬉しいの?もう寂しくない?」



少女はその存在へ飛び込む

身は焼け落ち、魂がその存在の奥へと入り込む



…………これがこの精霊(ひと)の心。

こんなにも熱い炎を纏っているのに

心は凍てついている。



……でも大丈夫だよ



    『ずっと一緒だから』



少女は精霊の心を抱きしめる

凍った心が溶け精霊の目から

大粒の涙が流れる



それは貴方の涙。

もう貴方は1人じゃない。

貴方の願いは叶えられたの。





一緒に生きよう。いつか貴方にとって

大事な人が見つかるまで



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