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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第0章 0%の鉄板
94/123

貴族への帰還

ドグマ.マグナス、クーガー.エヴァンスは

並んで歩いている


一万人の王国部隊と、ともに


クーガーはため息を吐きつつ愚痴る

「ハァー。何であんた等と一緒なんだよ?

俺達はもう軍は辞めただろ?」


冒険者全員参加のミセス村の犯罪者鎮圧

何故か、2人は後発の指示を受け

暗闇の中 村を目指している



「……黙って歩け」

部隊兵からの1言。


「……チッ」


クーガーは舌打ちをしドグマに語りかける


「なんか……ヤバくねぇか?嫌な予感がする」


村の開放と犯罪者の対処

それだけで軍が動いてくるのはマトモでは無い


「嫌な予感と言うのなら……ユウゴが

死んだ時からだな」


「オレもだ。アイツとは短い付き合いだが

あそこまで無茶する奴じゃねぇ。

……なにか……あったんだ。」



ドグマも賛同する

「ユウゴはお嬢様の事以外で、動いた事が無かった

それが今回は知り合いを助ける為とはいえ

お嬢様を動かそうとした。」



ユウゴカタスはジェシカ.ドーソンに

村に来てもらえるよう頼んだ


来る訳が無い。来たくても行かなかっただろう

ユウゴが指定した時間は夕暮れ時

ジェシカ.ドーソンはその時間

屋敷から動けない。



動けば少女は無くしてしまう

100年の努力を……目前に迫った悲願を……



天秤が釣り合わない

……仮に、天秤の均衝がとれるのなら

少女は動いたのであろうか……?



ユウゴはそれを知っていて……

死ぬと解っていて頼み込んだのではないのか


…………



ならば村になにかがある




村にたどり着く



「……全員死んでるのか?」


凄惨な村だった。

ある者は串刺しにされ

焼き払われ

家内の僅かな蓄えさえも、奪われている


「胸糞悪い!オレは帰るぜ!

もう終わってるじゃねぇか!」



これが人間の本質だ。

善も悪もない。奪える者から奪う

弱い者を悪とし強い者を善と定め


自身達の行為を正当化する



その行為に嫌気がさし、2人は軍を辞めた

冒険者などと聴こえだけは良いが

一度衣を剥げば、その凶暴性を剥き出しにする



「まだ終わってません。これからです」

女性の声が、凄惨な村に響く



「この村には魔物が出ます

それを私達が狩ります。全て」


「全てって何体いやがるんだ?

1体も見当たらねぇぞ!」


クーガーが女性に詰め寄る



しかしドグマが驚愕の声を上げる

「な……何故……彼女が……」



「あん?オッサン何ビビってんだ?」

クーガーも目にしてしまう


   見知った女性の案山子(したい)



「何故……ミカ.レミナス殿が……

こんな酷い仕打ちを」



「と……兎に角下ろすんだ!

クソ!仲間じゃねぇのかよ!?」



クーガーは案山子の隣にある

魔除けの生首を優しく抱き

思考を巡らす……巡らすまでもない。




王国軍と2人は先程到着した。

つまりミカ.レミナスを磔にしたのは



冒険者達だ



ドグマがミカ.レミナスの遺体に触ろうとすると


殺気を感じ


ザシュ



男は動揺していた。気配に気づき

防げる猶予はあった筈だ。



しかし剣を取ろうとした腕……

無意識に亡くした腕で剣を抜こうとしてしまった



ドグマの片腕が空へ舞い上がる


「何やってんだ!!?」

クーガーが女性を睨みつける

そしてその名を呼ぶ


「ヴァネッサ!?イカれちまったのか!」



「…………」

彼女は腕を上げ……


森から何かが飛翔してくる


それはクーガーの反応出来ない速度ではなかった

ギリギリ反応出来た。躱せた筈だ。

しかし殺気が全くなかった



無機質な悪意がクーガーの肩をえぐり

「ガ……!ァァァ……」


その場で倒れ。数秒と経たず意識を失う



ザシュ……首をハネられる


「反逆者を助けようとしましたね?

貴方達を反逆者とします。」


「……ヴァネッサ……」


両腕を亡くした男がヴァネッサを睨む


「私は今回の功績で貴族に上がります」


「こんな事で功績などなるものか!」



なる訳がない。村人犯罪者を

百も満たない数を殺したぐらいで

貴族などなれる訳がない


例え元貴族であろうと……

この程度何も功績では無い



「……私の考えが間違えで無いのなら

来るはずです。その功績と

反逆者の英雄。

ドグマ.マグナスの首を功績とします。」



「…………何が来るのかは知らんが、

良いだろう。私の首を持って行け

その代わり……彼女……

ミカ.レミナス殿をおろして上げてくれ」


男は自身の最後を悟り。せめて主が

慕う姉だけでも……安らかに……



ザシュ ザシュ 二回の斬撃


ミカの両腕は切り取られ

男の目の前に捨てられた


「ヴァネッサ……」


「貴方とお揃いにしてあげました。

私は、もう戻れません

明日から私はヴァネッサ.ローです」



ザンッ



ドグマ.マグナスの首をハネ


部隊の1人が声をかける

「本当に来るのか?」

「……来ます。彼女が昔教えてくれました

この村の秘密だそうです。

今の私には関係ありませんが……」



…………


「…………クッ!」


何に対しての苛立ちか、焦りか……

ヴァネッサが案山子のクビを

改めて突き刺した瞬間




それは確かに来た


燃え盛る死体から溢れんばかりの魔物




一万を超える魔物の群れ

その全て……ほぼ全てがミカ.レミナスに向かって



ヴァネッサは全軍に声をかける



「さぁ!魔物狩りだ!

大陸の力を王国の力を魔物どもに見せてやれ!」



…………



…………




ザシュ!最後の1体が消えていく

一万の魔物は全て殲滅された


王国軍に誰一人。犠牲者、負傷者すらいなかった



当然だ。魔物達は戦う意思などなかった

全ての魔物がミカ.レミナスを取り戻そうと

向かって来た、だけなのだから



結局叶わず魔物達は

大地に飲み込まれていった

神の元へ還ったのだ。




「…………戻りましょう。

もう、ここには用はありません」



一万の軍隊全員が引き返していく



反逆者(えいゆう)の首と、

魔物一万体の殲滅という大功労を得て


…………



…………

1人の老婆が歩いてくる。


老婆はミカ.レミナス。

彼女の乱雑に破り去られた衣服の

そばから、小さな小石を拾い上げ…………




なお、燃え盛る火炎に目を向け、去って行った




…………


『…………誰だ?あれは…………』

神は疑問を声に出す



女性は間違いなく人間だった。

欠片を拾った人物が

神である可能性も考慮したが、

結果はハズレだった。



力も無く、老い先短い老婆。




『もう解らないな……

またジェシカ.ドーソンにきこう』


神は森へと戻る。この後来るであろう

クヌギ.イシノギを待ちつつ

ジェシカ.ドーソンを待ちつつ

望まぬ同じ展開を待ちつつ


…………


…………

やはり結果は同じだった。

クヌギ.イシノギは飛び

この世界も終わる


人間1人では奇跡など起こせないのだろう






そしてジェシカ.ドーソン

少女は後悔しか持っていない

奇跡など起こせる訳がない




少女は奇跡は起こせない

しかし……少女は1人では無い

勿論クヌギ.イシノギも




その時が来るまで


今しばらく語られぬ記録を紐とこう




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