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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第9章 螺旋階段  観測記録
83/123

偽りの勲章

「ここ私の村なんです!」


ミカが立ち上がる。

所長は取り敢えず座ってくれとジェスチャーをして

事の経緯を説明してくれた



…………



…………



俺達は無言で斡旋所を出る


「私。1回村に戻ってみる。

急ぐからクヌギ君は家に帰ってて」



ミカは俺の返事も聞かずに

両足をさすりつつ軽く跳ねる



風を纏う如く、疾風となり一瞬で

ミカは見えなくなってしまった



「俺は……どうすれば……」

俺の独り言に反応してくれた人物がいた



「こ 困ってるのかい?イシノギ君」


俺の目の前には 今日は眼鏡をかけている

色白の優男。イーディスさんがいた。



「イーディスさん!」

男の登場に俺は笑顔になる

彼は1番……いやミカと同じぐらい

俺を理解してくれる大事な人だ



2人だけが、クヌギ.イシノギを理解してくれる



「今回の依頼。

イーディスさんにも回ってますか?」


「あ 明日の特級かい?全員参加だろ?

人間相手だから僕は出るよ。」



イーディスさんは人間相手を専門にしている

それも暗殺専門とかいう物騒な人だが


この人と話していると落ち着く

しかし彼が出るという事は……



「依頼に対処ってあったんですが……

追い払うぐらいで済むんですかね?」



彼は嘘はつかない。つかないと信じている

だから俺は所長より、彼を信じる



何も事情の知らないイーディスさんは


「普段なら、こんな特級依頼はないよ。

精々上級かな?しかもたかが30人

僕1人でも終わらせられる。


それなのに強制全員参加。所長まで参加だ。

どう考えても、おかしい……

ここからは、僕の推測だけど、いいかい?」



俺はコクリと頷く。



「竜撃退は知ってるよね?

あれで大陸から王国精鋭部隊が派遣されたんだ。

1万人とか言ってたかな?竜を討伐しに


でも結局、島中捜し回っても竜は居なかった

イシノギ君が部隊の人間だったらどう思う?」



……ジェシカが1人でやり合った竜か……

あの竜は何万人いようと倒せない

全員死ぬ気なのか?


それとも精鋭部隊とやらは皆

ドクマさん並に強いのか……

……それでも無理な気がする



仮に死ぬ気として島に送りこまれ

竜を捜索しても姿はない


「島から逃げたか……討伐されたか……

…………」



「き 虚偽だったか。こんな島国の出来事だ

まさか大陸から部隊が派遣されるとは

思わなかっただろう」


「いや、嘘じゃないですよ!

俺も実際見ましたから。あの巨大な竜を」



「し 真偽の問題じゃ無いよ

島まで出向いて、竜の形跡はありません

討伐もされていません。


でも島の人達は500歳の龍種を撃退しました。

それも僅か数名で……信用の問題だ」



確かにあの竜を数名で

どうにか出来るとは思えない

冗談みたいに強かったジェシカでさえ


逃げろと言い……その後は解らないが

多分ジェシカも逃たんだろう……



「あの……それと今回と関係あるんですか?」



「……き 君は王国の奴等を知らないからだけど

奴等は兎に角、争いたいんだ。

一万人も遠征させて、成果無しが嫌なんだろう


ミセス村……だったかな?

犯罪者が住みつき。村側が受け入れている

反逆の村として

見せしめに、されるんじゃないかな?


何故その村なのかは謎だけど……

犯罪者が住み着いた程度で部隊が出動したら

それこそ恥だと僕は思うけどね……


それでも、少しでも信用を取り戻す為に

斡旋所も必死で功労を取りに行く。」




……冒険者だけじゃなく、

王国部隊……一万人が村1つを滅ぼすと……


俺が青ざめた顔で愕然としていると



「イ イシノギ君。僕の妄想だから

気にしなくていいよ」



「……はい……」


俺は力なく返事をする


「……イ イシノギ君。

もしかして君の故郷なのかい?」


「……故郷……俺の大事な人の故郷です。」



男は眼鏡を外す

眼鏡を外した時、イーディスさんは

まるで別人のようになる




「……なるほど……イシノギ君さえ良ければ

僕が力になろうか?」



『僕の力で殺してやろうか?』と

言われている錯覚に陥る



イーディスさんの力……借りたいが

今回は借りられない。

今回の仕事を断れば冒険者資格の剥奪


中級は愚か、初級すらも受けられないと

所長に脅された。

イーディスさんを、巻き込む訳にはいかない



「イーディスさん。気持ちだけ貰っておきます

犯罪者を追い払うだけで、済むかもしれませんし


皆……話せば解ってくれます。」



そうだ。今の話しは全部イーディスさんの推測だ

誘導尋問みたいなものだ。



「……イシノギ君。1つだけ忠告させてくれ」



男は改まり静かに語る


「人間は綺麗な生き物では無いよ

真逆。醜い生き物だ。万が一が起こっても……

覚悟だけは、しておいた方がいいよ」



「……はい」



それでも俺は……人間を信じている


…………



…………



馬を借りたおかげで

3時間ほどで、ミセス村に到着した


犯罪者がいる村……



畑を男が片手で耕している

片腕はブラブラとさせながらも器用に

鍬を大地に下ろす



俺がその光景を見つめていると

別の誰かが大声をあげる


「来たぞー!見えてるのは1人だ!

爺さん婆さんを家に避難させろー!」



大声に反応した者達が

ワラワラと集まり、俺は取り囲まれた


「この村の人達は関係ないだろ!

俺達だけを連れて行けよ」


一人の男が怒鳴り声をあげる



それより

「……ミカっていう赤い髪の女の子は来てないか?」



「ちょ……ちょっと通して〜」

男達を押し退け、

俺の探していた女性が姿を現す



「クヌギ君!?来ちゃったの?」

ミカは驚いた表情をしていたが、

とても嬉しそうに微笑んだ



「イシノギ様!?皆さんこの人は味方です

……味方……ですよね?」



胡散臭い見た目の男が俺に同意を求める


「ユウゴさん?何で此処に?」


「私の知り合いが、この村にお世話になって

おりまして、確認をと思い……

今日は、個人的に休暇をいただきまして


それより……イシノギ様は仕事で此処に?」



仕事……とはこの村の対処の事だろう



勿論



「違います。仕事は今日限りで辞めます

俺に出来る事はありますか?」




仕事なんかよりミカの故郷を

護る事を選択した

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