就寝準備
「罪滅ぼしというわけではないが
火の番は私がやるよ
二人はゆっくり朝まで 休んでいてくれ」
そう言うとヴァネッサは 火を起こし
テントを張り一人で セッセッと働いていた
俺とミカは腰をおろし 干し柿を食べながら
ヴァネッサの仕事振りを 眺めている
干し柿はヴァネッサの保存食だ
ヴァネッサの許可を貰い、食べている
「やっぱり何か手伝おうか?
バネッサに悪い気がする」
俺は居たたまれなくなり 腰をあげようとすると
「大丈夫大丈夫〜 ヴァネッサちゃんは慣れてるから
1人でやった方が速いんだから」
ミカは笑いながら干し柿を食べ終え
乾パンに手をのばす
乾パンはヴァネッサの携帯食だ
ヴァネッサの許可を貰わずに食べようとしている
「ミカの言うとおりだ 1人でやった方が速い
昨日と同じ場所だから勝手もわかっているし
もうすぐテントも組上がる」
ヴァネッサはこちらを向かずに答える
確かにこの手際の良さを 観ていたら
かえって邪魔をするだけだ
乾パンも食べ終えたミカが
自分のカバンを ガサゴソと探り
ドングリ……しいの実を取り出し
1つを小石で割り 口へ放り込んだ
「ん〜〜 うん」と1人頷き こちらを向きながら
「そういえば 君 しいの実投げちゃったよね
まだあるから あとは全部食べていいよー」
こちらに片手で収まらないほどの
しいの実を手渡した
しいの実はミカが拾ったと 言っていたものだ
俺はそれをどうしたものかと 持て余していると
「お〜できたー おっ先〜」
ミカが立ち上がり一目散に
テントの中に駆け込むと
「覗いちゃダメだよー」
テントの中から呼びかけそのまま静かになった
「ふぅ」
一息つきながらヴァネッサが隣へ腰をおろす
俺は「お疲れ様でした」
と頭を下げる
「君も身体が暖まったら休め……
と今はダメだな小一時間ほどは」
ヴァネッサは白湯を 口にしながら言った
多分ミカが何かしているからだろう
「中で何してるの?全然物音しないんだけど……」
少し気になったので ヴァネッサに問いかける
ヴァネッサは少し考え
「神への祈り……対話……かな?私も詳しくないが
毎日しなくちゃいけないことらしい」
「へー」神に仕える仕事も 大変なんだな〜
などど呑気に 焚火を眺めていたら
「残念だったな……」
彼女は悲しそうな表情で
「……何が?」
俺はなんのことかわからず 素直に聞き返すと
「着替え中じゃなくて」
とんでもないことを ヴァネッサが口走る
「え ちがッ 」
俺は持っていた しいの実を落とし狼狽した
するとヴァネッサは笑いながら
「フフッ……冗談だ」
などと言いながら白湯を飲む
勘弁してくれと思い
落としてしまったしいの実を拾うと
「しいの実か!そのままでもいいが炒めると
中々に美味いからな 貸してみろ」
言われるままに しいの実を全て彼女に手渡す
ヴァネッサは片手で
しいの実を持ちもう片方の手で1つを摘まむ
パキッと音をさせて中身を綺麗に取り出すと
白いピーナッツのような物が出てきた
それを飲み干した 鉄のカップの中に入れていた
時折割らずに 捨てているのが気になっていると
それを察したのか
「捨てているのは虫食いのやつだな 食べるか?」
などと冗談混じりに彼女が言う
「ミカなら気付かす食べるんじゃないかな?
拾い直してこようか?」
俺も冗談めかして言う
「違いない」
彼女は笑いながら しいの実をカップの中に入れ終えた