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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第8章
76/123

頂点に昇るもの

「……ジェシカちゃん?」


驚きはミカも同じだった。

辺りを見渡し少女の名を呼ぶ


しかし闇に溶け込むように

彼女の声に対する返事は無い



「な……何が起こったんだ?」


「……お嬢様は、少し 用があり

時間も無く、あのような方法をとったのだと思う」



用事?それなら言ってくれれば良かったのに

そもそも、あの音と閃光はなんだったんだ?

ジェシカがやったのが!?



ジェシカを探さないと


俺の動揺を諌めるように

「少し待ってみよう。

用が済めば戻って来てくれる筈だ」


「クヌギ君。私も心配だけどちょっとだけ待とうよ」



「……あぁ……そうだな。」


確かに暗い森の奥

俺達が移動したらそれこそ

二度と会えないかも知れない



俺1人探しに行っても元の場所に

戻れる自信がない




…………



…………




10分が過ぎた。流石にミカも慌てはじめる

ドグマさんはまだ冷静だ。


少女が姿を消した時から

こうなる事を予想してたかのように



「探しに行きましょう

魔物をこの場に置いていきます。

ジェシカが戻って来たら

空へ昇り、爆発して合図させますので」


空は見えなくても、音で気付くと思います



2人は頷きジェシカを捜索する事になった。

ジェシカが指を指した方向に向かいながら




俺は知っておかないと いけない


「ドグマさん。ジェシカの用事って何なんですか?

もしかして、家に帰らなければならないとか……」



ドグマさんは暗闇を見渡しながらも

「家では無く……お嬢様自身の用事……

誰でも……ある用事……上手く言えんな」



頭をかきながら呼びかけるのではなく

暗闇から何かを探そうとしている




ミカは地面に両手を置き

「……どんどん離れていってる

……こっち!急がなきゃ」




ミカが1人暗い森を駆け出す

それに俺が続き、ドグマさんも並走する


……速い。足場の悪い森とは

思えないほどのスピードで疾走していく




ドグマさんが竜爪ではない剣を抜き


カッ

木に傷を付ける 


「イシノギ殿。君の目線の木に印を付ける

それを追って来てくれ」



「す……スイマセン。俺も急ぎますんで」



俺の言葉を聞くとドグマさんは頷きながら

ミカを追ってかけて行き……


あっという間に、2人は見えなくなっていた



暗闇の森で1人

いや、1人なのはジェシカも一緒だ




しかし、いい加減俺は、気付かなければいけない



ドグマさんは、ジェシカの心配をしていない

迷子になった事に対する心配はしても

まるで少女は、危険な目に合う事が無いと

言わんばかりに




少女と俺達とは、危険の認識レベルが違う



……それでも今は少女は1人きりだ。

早く捜し出して、こんな森からは抜け出そう



杖は別に無くても生きていける

(ジェシカを優先しろ)


…………



いい加減、こいつとも向き合うべきなんだ

正体は想像がつく。何の力も無い抜け殻。

その残滓、残りカス。私の最後の被害者



いつの間にか暗闇の森を抜けて

広い草原に出た



道を間違えたかとも思ったが

ミカとドグマさんが見える


ジェシカの姿は無い


俺が近づくと、二人とも上空を見上げていた



俺も釣られて空を見上げる




バサバサと巨大な翼をはためかせ

地上を見下ろす生物……



赤黒い鱗に覆われ、眉間に禍々しい角

一薙で山を削り兼ねない爪

砕けない物など無い事を容易に想像させる牙




体長100メートルをゆうに超えるその正体


(ドラゴン)に他ならない



竜はゆっくりと……

ズドンと 音を鳴らし俺達の前に降り立つ


地面が揺れる



『……人間が何をしに来タ?』



喋った?聴き取りづらいが確かに


ミカが恐れる素振りもなく、一歩前に出る



「あの、貴方のお家だったら勝手に入って

ごめんなさい。

私達、金髪の女の子を探してるんですが

見ませんでしたか?」



『少しばかり前ニ

少女が来て、森へと戻って行っタ』



竜の言葉にミカは笑顔で

「ありがとうございます!

じゃあ私達はこれで……」


俺達を促し踵を返そうとするが



『……娘。お前は神の手札(てふだ)だナ?』


ミカは振り返り

「神様の手札?何の事か判らないけど……」



竜は口元を吊り上げ

『我が人間の住処ニ

姿を現したのも無駄では無かったナ』



人間の住処?

竜を撃退したって言っていたのは……



俺はドグマさんを見る

それに気づきあくまで、こちらは見ない


竜のスキを探しているのだろうか?



「あの竜は北から進行してきた龍種と同じ

推定だが500年を超えた龍種だ」



『我は機嫌が良い。特別に人間を喰らってやろウ!

その少女も喰らってやル


神の手札が手中にあらバ……

其処の娘だけは殺しはセン。

一月程、此処に居てもらウ』



俺は竜の前に ミカより更に、一歩前に出る



人差し指を食い千切り

地面を俺の血液で赤く染める




そんな事はさせない

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