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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第7章
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人形霊具

俺が家の奥に入るとベッドに腰掛けた男

義手を付けているのか

左腕は服で隠されていて、全ては見れない


「君は……同じ初級の……ノックぐらいしてくれよ

それにどうしてここが?」


「これが教えてくれましたよ」



俺は床に片腕だった物を置く


それは今も不気味に動き続けている

まるで何かを喋るように



「何だいこれ?気持ち悪い?傷がまだ痛むんだ

用がないなら、帰ってくれないか」


「見せてくれませんか?左腕」

男がピクリと反応した



間違っていて良い

俺はまだ、貴方がやったと思っていないんだ



「何故あんな事をやったんですか?

俺達……死ぬかもしれなかったんですよ」




男は項垂れるように

「……君1人で来たのかい?」


……


「……はい。依頼じゃないですから」



俺は依頼を受けてない

イーディスさんは少し離れている。今は1人だ




「……だったら死んでも問題無いなぁ!」



男が指を2本 中指と薬指を食いちぎる

指を吐き捨て、自分の血を……飲んでいる



「アンタ……何をやっているんだ?」

コイツは気が狂っている


俺は身構える事すらせずに男に質問をぶつける



「君は死にたかったんだろう!?

このリビングデッドに

食い殺されるのが望み何だろう!」



木製の床を突き破り、手が生えてくる

そのうち1つが俺の足を掴み

地面へと引きずり込む



俺は頭だけを、床から出した情けない姿を男に晒す

それでも俺は……


「何であんな事をやったんだ」


男は不気味に笑いながら


「君も初級なら解るだろう?

いや、解らないよね?


いくら力があろうと、中級は受けれない

中級の雑魚に連れて行って貰って 

やっと生活出来るかどうかの暮らし


俺1人で全て片付けても少ない報酬を渡される

だから一気に名を馳せようとしたんだよ


大量のリビングデッドに

仲間全てを喰われつつも勇敢に戦い

撃退した自分……悪く無いだろう?


……せっかく運良く新鮮な怪物の死体が

大量にあったのに、

帳尻合わせかな?魔物如きにやられるとは……」



…………


「……もういい」


なんて下らない話しだ。

自分の私利私欲の為に仲間を犠牲にする



俺みたいではないか……おれの醜い部分

見たくも無い。誰にも見せたく無い




俺の言葉に反応したのは

イーディスさんに渡された人形だった



懐から離れた人形

土の中でグチュグチュと音をたて


這い上がるように姿を現す

精巧な人形は泥に塗れ 腐臭を纏い

俺を片手で引き上げる



男に背を向けたまま、自分の首を飛ばし

男の腹部を突き破り、体内に侵入した




「あ……なんで……体……」

男は声を漏らすだけで


首から下をピクリとも動かさない





「はい。チェック。言い残す事はあるかい?

イシノギ君に免じて、聞くだけ聞こう」


部屋にイーディスさんが入って来る


「ゴメンよ。イシノギ君

服汚しちゃったね。後で弁償するから」



俺の服に付いた汚れを払いながら

俺の眼を見つめる



「イシノギ君……

運良く生け捕りに出来たけど、どうする?」




俺にとって致命となる

大事な選択肢を俺に委ねてきた


殺すか生かすか

俺が殺すか、誰かが殺すか



「…………ぁ」

声が出ない。


「……イシノギ君、時間はあるから

ゆっくり考えて良いよ。


どちらを選ぼうと僕は君の事を

軽蔑したりはしない。」




俺が殺す?俺はそんな事をする為に……


悪人だから殺して良いのか……


だったら悪である俺も魔物も殺される

それを殺した者は悪で無いと、誰が判断する

悪の怪物は俺が殺すのに


何だこの矛盾は…




「う……!オェェェーッ」


俺は床に吐瀉物を撒き散らした



イーディスさんは背中を擦りながら

「ゴメンよ無茶な事言って。大丈夫

君の判断が正しいんだ。君はマトモだ


でも君の判断でもし……もしも大事な人を失ったら

力が無いなら、欲するようになる

自分の無力さを嘆く。それが普通だ


力があるのに君の判断で死なせたのなら

それは君が殺した事になるんだ

そうなる前に……

経験しておくのは必要だと思ったんだ




君には……僕のようになって欲しくない」






イーディスさんは手を男に突き出し

空を握る


男は大量の血を口から出し

最後にはポロリと、人形の頭を吐き出す


「最後の言葉……聞くの忘れてた。まぁいいか

どうせ下らない事だ」





彼は眼鏡をかけ、男の死体を置き去りにして

この場所を後にする




「イーディスさん。俺……」

俺は……人間を殺せない



「そ そんな顔するなよイシノギ君

……そうだ!今回の君の取り分だ」



袋を丸ごと渡される。かなりの重量

中には大量の硬貨……硬貨


「これ……い いくらあるんですか?」


「き 君に200渡した残りだから1200ルドンかな

細かいのばかりでゴメンよ」



いくら何でも多すぎる

説明して歩いて話した、だけで

1400ルドン……



「失礼ですけど……イーディスさんは

どのくらいもらうんですか?」



イーディスさんは笑いながら


「い いくらにしようか。確か後金は1000ルドン

とか言ってたけど……元仲間の死体だ。

後金に口止めも足される筈だ、ボロ儲けだね」




「本当に貰って良いんですか!?」

現金な俺に対して



彼は優しく頷き

「も 勿論さ……服のお詫びもあるし

……でも1個だけ。いいかな」




嫌な予感しかしない。恐る恐る彼の言葉を聞く


「な……何ですか?」


「ま また一緒に仕事をしよう」

彼は手を差し出し


「こちらこそ……宜しくお願いします!」

手を握り返す


嫌な予感は当たらなかった

良かった



やはり彼の手は体温を感じなかった

しかしそんな事は俺には関係無い


彼は俺を理解してくれる……きっと



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