表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第7章
61/123

死後服従

ある一点でイーディスさんは足を止め

「イ イシノギ君。これ持ってみてくれるかい?」


見せられたのは、一角獣の角

リビングデッドに抗って、最後には

大地に呑まれた怪物の残し物




「これで……良いんですか?」

特に気にせずにヒョイと持ち上げる




「…………き 気のせいだったよ。」



彼は角を取り上げ


「じ 実はリビングデッドの大群を

葬ったのは君じゃないかと

睨んでたんだけど、違うようだね」



彼は地面に穴を彫り始める




「それと俺がその角を持つ事に

関係があったんですか?」


俺が魔物を召喚した事は気付いていない

安心した。この人は全て知っている訳ではない



「い 一角獣の角は、有名な使い方が有るんだけど

もう一つは、あまり知られてなくてね


自身が認めた者に死後、服従するんだよ

一度だけ……器と魂と肉体を、現世に戻すんだ

本来の姿でね


あまりに稀だから、僕も見た事無いけど


まぁ……君ではなかったから

認めなかった だけかもしれないけど」




有名な方の使い方も俺は知らないのだが

そんな事は露知らず

彼は角を穴に埋め、何かに気付く



「…………」


手元の資料を漁り




「イ イシノギ君。

やっぱり来ない方が良いかもしれない」



「危険……なんですか?」


彼の表情を見るとただ事では無いと察する




「き 君に危険は無いよ。僕が守るから

ただ、事実を知るのが良い事ばかりでは無いからね」



「どうする?」と聞かれ

「行きます。足手まといにはなりません」



「き 君は明日に備えて怪我させられないからね

今から行くかい?場所は解るから

別に今からでも、後日でも良いよ」




明日?俺に予定なんて物は無い

それにいつ行くか……それは


「……今からお願いします」



今から死霊術者(ネクロマンサー)を殺しに行く

いや、同じ人間だ。殺すまでしなくても




イーディスさんは眼鏡を外し

バッグから人形を取り出し、人形の片腕を引き千切る


そして先程見つけた何かを

千切れた腕に無理矢理はめ込み



「起きろ!こいつの元まで案内しろ」

人形に命令していた



人形はひとりでに動き出し

無理矢理、はめ込んだ何かに引っ張られるように

カチャカチャと、音をたて歩いて行く



良く出来た人形だ。サイズこそ小さいが

人間大だったら区別が付かない

それほど精巧な人形



「イシノギ君はどうする?

リビングデッドを使わせると思うけど、

君は戦闘したいかい?」



俺は首を横に振る

「いや、出来れば穏便に済ませたいとは

思いますが、イーディスさんに任せます」



彼は頷くと

「……道中で作戦を考えるよ

直ぐに殺しても良いけど、

多分、君は話しを聞かないと……納得しない相手だ」




まさか……



「俺の……知り合い……ですか?」


「どうだろう?君の交友関係を知らないけど

顔ぐらいは見てる筈だよ?」



誰だ?全く想像が付かない



「出来れば、僕も君の友人は殺したく無い

見た事ある、程度の関係を願うよ」



「その……絶対殺さないと駄目なんですか?」


何故、頑なに殺そうとするのか

彼は楽しんでいるのでは、ないのか



彼は考えながら


「別に殺さなくてもいいよ

殺した方が楽だから殺すんだ。

運良く、生け捕りに出来た人も、沢山いるよ


結局その後、殺されるんだけどね



でも今回は駄目だね

生け捕りにして連れ帰ったら、信用に関わる

……誰の信用だと思う?」





ああ……何となく理解した

彼は少しずつ、教えてくれていたんだ



俺が混乱しないように

今のうちに覚悟出来るように



今人形にはめ込まれている物

あの場所は確か…………



それでも


「イーディスさん。証拠ってあるんですか?

間違いの可能性も……」



「間違いは勿論あるよ。

でも、間違いなら別に良いじゃないか

それに使わせてやるよ……証拠(リビングデッド)



今回は……これが証拠みたいな物だけどね」

彼は人形を指差す



人形片腕……グチャグチャで原形が分からない何か

その禍々しさは、あの時の様な……



「解りました。」

俺は覚悟を決める。

他人の可能性を捨て切れない、甘い考えのまま






街から離れた集落。役目を果たしたかのように

そこで人形が事切れる。



「イシノギ君が行ってくれ

君の方が、油断してくれる可能性がある」



イーディスさんはバッグから、別の人形を手渡し


人形(コイツ)を懐に入れておいてくれ

彼が殺る。本当はエリスを付けたいんだけど

彼女は気難しいからね」




人形を大事にしていると、心が宿ると言われている

ましてやイーディスさんだ

人形に人格があっても不思議では無い



その人形は人間を10センチ程に、縮めた男性

目と口は閉じており、触れても体温は感じない

やはり人形だ




彼は足を止め、200メートル先の建物を指差し

「あの家だよ。君は何もしなくて良いよ

何なら死霊術者と喋ってても良いし」




彼は地面に手を置き

「あまり数は居ないな……」

そう言って俺に人形に、はめ込んだ何かを渡す



俺は頷き、受け取ったそれを見ないように

家の扉を開ける






俺が最初に感じた違和感

リビングデッド発動直前に

聴き取れない声がした方向、

この潰れた何かが落ちていた場所……


同じ方向だ




イーディスさんは信頼と言っていた

仮に……この人為的災害が、こちらに非があるとしたら


斡旋所が派遣した者が起こしたと、したら




リルムの術が突然解けたのも……他ならぬ

彼女自身が解き、囲いの外へ逃げた後に

再発動させたとしたら、辻褄が合う




この潰れた何か……原形も無いが腐っている

これは……腕だ。一角獣にヤラれた男の……


この腕であった物は

今も変形して別の何かに変わりつつある




まだ……確定では無い



「誰だ?」

男の声がした……


俺は返事をせずに、家の中へと入る











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ