特務の せんりつ
会場から斡旋所へ行く途中、
ヴァネッサから、特級依頼について聞かされる
「特級は他の依頼と違い、拒否権がほぼ無い
今回だと、この放送を聴いてた冒険者は全員
役に立ちそうもない
重体、重傷、以外は参加させられるだろうな
拒否しても良いが、中級資格は剥奪される」
つまり………俺は
「ってことは私、拒否しても良いってこと〜?」
ミカが俺の言おうとした事を、言ってくれる
彼女も俺と同じ初級だからだ
「勿論構わんよ。だが初級の連中は
全員参加するだろう。何故かわかるか?」
ん………やっぱりこれしか無い
「支払いが凄く良いとか?」
「それはマチマチだが、中級に上がるための功績が
特級や上級には加えられる。
上手くやれば一発で、中級に上がれる事もある」
なるほど。実力がどれだけあっても初級では
大した稼ぎにならない
こういった所で実力を見せなければ
一生初級ってことか………
俺の考えを読んだのかヴァネッサは
「まぁやる気を、出させる為なんだろうが、
私はこの制度を、好きになれんな」
そう言って、斡旋所の扉を開ける
「あっ!?ヴァネッサ.ラウさん
ドグマ.マグナスさん来られました!」
いつもの受付さんが、
大量の書類を片手に、パタパタと動く
奥から以前、注意された事のある男が出てきて
「お二人はこちらに………
他の皆さんは待機でお願いします」
ヴァネッサとドグマさんは、奥へと行ってしまった
手持ち無沙汰になり、
「あの………よろしく」
外套の女性リルムに挨拶をする
しかし彼女は、こちらを向きペコリと
お辞儀を、しただけだった
「おぉ〜!ミシェルちゃんも来てたの〜?」
ミカの元気な声が響く
「うん。全員招集だから………」
彼女がミシェル………聞くところによると
弓矢の腕前がヤバイ!らしい
ミカとミシェルは2人で話し合っている
俺も他に知り合いを探そうとするが………
イーディスさん………
居ない………来ていないのか?
確か彼は、町の外に家がある、と言っていたので
此処に居なくても不思議ではない。
「みんな聞いてくれ!」
斡旋所内を凛とした声が響く
場は、一瞬で静まり返る
「怪物の群れが、
この町に迫って来ているそうだ
目的は不明、発生源も不明。しかしこの怪物達は
速やかに、殲滅しなくてはならない!」
怪物の群れ………
俺は辺りを見渡す。60人程集まっている
この人数が多いのか、少ないのかは解らない
「数は何匹なんだ!?」
一人の男が声をあげる
そうだ 数が解らなければ、どうしようもない
ヴァネッサは全員を見据え
「落ち着いて聞いてくれ………
およそ150匹が北と………東からそれぞれ来ている
と、報告があった」
計300………単純に一人、5匹と戦わなくてはならない
場内がザワ付き始める
「む、無理だ………そんな数…」
「俺ならやれる、引っ込んでな!」
「神よ我に力を………」
怯える者、勇む者、祈る者と様々だ
ヴァネッサがドグマさんを一瞥し
「この件は私、ヴァネッサ.ラウが一任された!
北へは40人送る!」
………東はどうするつもりだ?
皆の不安をヴァネッサは
「待機は10人、残りで東の怪物討伐へ行ってもらう!」
戦慄が走る………東側を見捨てた
「あの………バネッサとドグマさんが
東側へ行ってくれるのか?」
俺の質問に皆の期待がかかる
この2人が行くのなら、10人の数も納得だ
しかし
「私と師………ドグマ.マグナスはここから動けん
この町の入り口が、最終防衛ラインだ
北と、東、希望は聞く」
皆が、唖然とする
しかし
「北!北へ行くよ」
「俺も北だ!」
「お、俺は闘技大会の怪我があるから………
此処に残る………」
一人を皮切りに、皆が安全な北側を希望する
安全と言っても、東側と比べてだ
結局残ったのは、俺とミカを含めた11名
「中級は………ミシェル.アンカーソンだけか………
もう一人はつけたいのだが………」
ヴァネッサは周りを見るが皆目を逸らす
その苛立ちを、ドグマさんにぶつけるように
「私はやはり納得………」
「お前の師の私を信じてくれ!
東側は安全だ」
その言葉の続きを、飲み込む
「ドグマさん、何故東側は安全なんですか?」
「……………」
彼は無言で、地図を広げる
「東側のこの道………この辺りに、お嬢様の家がある
怪物達の進路はこう………らしいんだ」
彼は地図を指差し、ながら
「ちょうど、今からこの道を通るとまず、
怪物の群れと、ぶつかるだろう」
それはつまり
ジェシカ達が怪物の群れと、鉢合わせると言う事
「急いで行かないと!?
こんな所にいる場合じゃない!
あんな小さな子すぐに………」
熱くなった俺の肩を、後ろから掴まれる
ドグマさんでは無い。リルムだ
「貴方は…お嬢様を………勘違い…している…」
恐れと悲しみの籠った瞳………
彼女の目を逸らすことが出来ず
俺は頷いてしまう
「ミカちゃん!?」
ミシェルの声が響き
バンッ!扉が開け放たれ、
1人女性が飛び出す。
3月9日〜10日に
誤字報告してくれた方 ありがとうございます
ここで書くべき事では、無いのかも知れませんが
他に方法が わからなかったので
この場を借りて感謝をさせていただきます




