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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第5章
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英雄対英雄3

ヴァネッサが倒れ、俺とミカは言葉を失う


「………………」

ジェシカも黙り込んでしまう


「ヴァネッサちゃん大丈夫かな?

医務室に行ってみようよ!」


ミカが立ち上がり俺も後に続く



「………あたしは行く所があるから、先に行ってて

リルム!ユウゴ!来なさい」


ジェシカはそう言うと、2人を引き連れ移動する





「ヴァネッサちゃん!」

「バネッサ!」


俺達が医務室へ行くと、

「クヌギ………ミカ………

格好悪い所を、見せてしまったな」



彼女はベッドに腰掛け目を逸らす



「そんな事無いよ!

ヴァネッサちゃんは格好良かったよ」

ミカがヴァネッサの、手を取り励ます



「あの人は、ちょっと強すぎるよな

でも次は勝ってくれるだろ?」

俺は何と、声をかけて良いか、わからず



「そうだな………思ったより何倍も強くて、困ったよ

まだ敵わないが、次こそは………」

ヴァネッサが乾いた笑みをこぼす





廊下から声が聴こえてくる

「お嬢様!?あの………敗者に言葉をかけるのは………」


「うるさいわね!速く来なさい

あなたワザとゆっくり、戦ってたでしょう!?」




扉が無遠慮に開かれる


ジェシカが、ヴァネッサを睨むと

「あなた、中々頑張ったわよ。褒美をあげるわ」


そう言ってドグマさんを前に差し出し



「さあ!今ならドグマは無抵抗よ!

何発でも殴ってあげなさい


大丈夫。動いたら、あたしが罰をくれてやるわ」

ニッコリ微笑むジェシカ



何という権力乱用………しかし

ドグマさんは、勿論それに従う



ヴァネッサが立ち上がり

「未熟な私を、鍛えていただき

ありがとうございました。師匠」


頭を下げる


………………師匠?



「そう言えばバネッサとドグマさんって

どんな関係なんだ?」


俺は堪らず質問をする



「私の古い教え子だな………もう何年…

何年前だ?ヴァネッサ?」


「………8年になります。」


「………そうか。時が経つ早いな

強くなっていてくれて、私は嬉しいぞ!」


「私も師匠にまた会えて、嬉しいです!」

笑顔で会話をしだす


2人は昔話のように、当時を懐かしみつつ



「あの………そろそろ閉会式を行いたいので………

動けそうなら、ヴァネッサ.ラウ選手も

参加していただけると、助かるのですが」



係員に促され医務室を後にする





閉会式が執り行われる

ベスト4の4人が表彰される



いつの間にかミカは

ジェシカを抱っこしてあげている


「寝ちゃったよ〜。見て見て?可愛い〜」

ミカはそっと少女の頭を撫で



俺はその光景を微笑ましく眺める


そのまま閉会式が終わり


会場を出る為に、

観客が帰宅の準備を始めようと席を立つ





『緊急放送!緊急放送!

冒険者の方々、及び、斡旋所登録がある方

直ちに斡旋所まで起こしください!


また住民の皆様は、町の外へ出ないようお願いします


繰り返します………』


 


俺とミカは顔を見合わせる

「何かあったのかな〜?」


「わからないけど、兎に角

バネッサと合流して、行ってみよう」



慌てたように、顔に包帯を巻いた男………

ユウゴが少し咳き込みながら、ミカに声をかける


「も…申し訳…ゴボッ…ありませんが一度

お嬢様をゴボッ…起こしていただけませんか?」



ミカはそれに素直に従い

「ジェシカちゃん起きて〜?」


優しく揺すり

ジェシカは目を擦りながら


「………何よ〜、せっかく人が、気持ちよく寝てたのに

タダで済むと………お姉ちゃん!」



起された相手がミカとわかると

ギュッと抱きしめ


「ごめんね〜。ユウゴさんがお話しがあるんだって」



ジェシカはミカに抱きついたまま

不機嫌を、隠そうともせずに


「………何?」


「申し訳ありませんお嬢様。

お二人は今からお仕事に、向かわれる様なので」

最後まで喋らせずに


「そう………じゃあ、あたしも行くわ!」



え!?俺とミカ2人で顔を見合わせる



「勿論、私も賛成ですが 

せっかくこのような、素晴らしい日は

何かに残されては?もう日が暮れておりますので………」



ユウゴの言っている意味は、解らないが

「んー、それもそうね………」


ジェシカは納得してくれる



「それに、どうやら全員招集の

命令がかかってあるので、ドグマさんがおります

心配には及びません」



ドグマさんも冒険者なのか……

ヴァネッサとドグマさんが居れば

大体の仕事は片付くんじゃないのか?



「今日のドグマはちょっと、信用ならないのよねぇ………

お兄ちゃんを危険な目に、合わせそうな気がするわ」


少女はそう言って考え込む



「ユウゴじゃ居ない方が、まし………


リルム!」


呼ばれて

外套の女性が近付いて来る


「あなたが

お兄ちゃんと、お姉ちゃんを守るのよ!」

リルムは返事をせずにコクリと頷く




「いい!?あたしの命令よ

あなたしか、頼める人が居ないわ

命をかけなさい!頼んだわよ!」

その言葉に


「………はい!」リルムは小さな声で、力強く頷く




命をかける………俺はその言葉を安易に考えていた




その言葉を聞きジェシカは

「じゃあね!お兄ちゃん、お姉ちゃん!

あたしは用事があるから帰るわ!」


手を振りながら、会場を後にする


会場から2人が消える直前

ユウゴは顔の包帯を、外していた





俺達が会場を出るとヴァネッサと、ドグマさん

それに見知った冒険者が何人もいた。


「クヌギ、ミカ。来たか。

心の準備だけはしておいてくれ」



その言葉に俺だけでは無く、周り全てに緊張が走る


「私も内容は知らないが

この緊急放送……街全体に流されている

かなり急を要する



恐らく………特級依頼だ。それも大規模の」




日が暮れ始め 人間の時間が終わろうとしていた



雨雲が空に舞い 始まるのは………






   第5章 限界の精神 対英雄 完


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