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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第5章
49/123

英雄対英雄2(裏)

男の無機質な瞳が、ヴァネッサを貫く



「………フゥッ!」


そんな筈は無い

その思いを否定するように

地を蹴り男の足元を、鋭く薙ぎ払う



片足を上げるだけで軽く躱し

胴への払い抜け………


精一杯身をよじり、紙一重で回避するが



後ろに回り込まれている!

体制が悪過ぎる!


………攻撃が来ない?



「………ガッ…ハッ!?」


背を軽く触れられた瞬間

内蔵に衝撃が走る



男はため息をつく

「なぜ本気でやらない?」


男の呆れた一言



「私は十二分に本気です

まだ貴方に届いて、居ないだけ」



ドグマ.マグナス…師匠に

最後に会ったのは8年前。あの時より差は

埋まっていると思っていたのだが………

この差は、埋められない




男は苛立ちを込めた、言葉を放ち

「自分の本気も出せんのか………

ヴァネッサ.ロー 今の君を観たら

父親が悲しむぞ」



感情がザワつく。

師匠はワザと、私を怒らせようとしている

挑発には乗らない



「今の私はヴァネッサ.ロー ではありません

それに」私の言葉を男が続ける


「それに父上は悲しまない………か?

そうだったな。君はロー(law)では無く

ロウ(low)を与えられていたな

悲しむ者など居なかった」


男は失笑する

 


………………




男は笑う事を辞め

初めてまともに構える


「いい眼だ。出し惜しみなどせず

最初から本気でこい」




男はリング中央、ヴァネッサはリングの端に行き

腰を深く………深く落とす

殺気を込めた棍を、男に向け


姿を消す



それは音速には届かない一撃

体ごと男にぶつけ、男は吹き飛ばされる


尚もヴァネッサは加速を辞めない

………音速近づく、吹き飛ばされた男を抜き去り

リングの端で更なる一撃を、叩き込もうと身構える


棍を石畳に深く突き刺し

片足で棍を強く蹴り、反動で男を自ら迎え撃つ


棍は根本から、木片と化す

(つい)には音速となった一撃



  音速撃(ソニックドライブ)



防御ごと貫く男への一撃…

その攻撃を受け男は場外へ………



私は中央付近で、動きを止める

2撃目手応えが、まるで無かった




男はリングの端で膝を付き

何事も無いように、悠然と立ち上がる



「場外敗けがなければ、喰らってやっても良かったが

いや、中々に良い技だったぞ」

男が近付いて来る



勝てない………いや勝てるとは、思っていなかったが

まるで届かない 何をやろうとも




「諦めるのか?イシノギ殿は

全く諦めなかったぞ?君の一番弱い部分だ」



クヌギ………そうだ。せめて少しでも力になってほしいと、

彼らに応援してほしいと、頼んだんだ



応援席を見る

二人共必死に応援してくれている

私の為に………



私は………まだやれる!


男は私の眼を確認し

「まだ楽しめそうだな」ニヤリと笑い



「ドグマ!!」



一際大きな声 男が無防備になり

その声の主を見る



「何時まで遊んでるの!?

早く終わらせなさい!」



クヌギとミカの間に、挟まれた小さな女の子

男はこちらを完全に無視して

少女に対して頭を下げる



そして、こちらを向き直り


「すまないなヴァネッサ………

私の主が、終わらせろと、言っている

次で決めようか」




男は小さく跳ね、地に足を

「君の望み通り、使ってやろう………」





男が消える



それは人間には見る事は、叶わない速度

しかし、その技は動いた物を、標的にする技



ならば、動かなければいい?

違う!そんな事をすれば、私の頭蓋は砕かれる



一点を見定める………

石畳の一点のみを注視する



微かに埃が舞い


そこだ!

渾身の拳を突き出す



男の木刀は砕け、しかし男の姿はそこには無かった

「強くなったな………中々楽しかったよ」



男は背後に立ち


首に手刀を当てられ………

まだ私は………やれ…る


ゆっくりと倒れる


「勝者!ドグマ.マグナス!」


ワァァァァ!



鳴り止まない歓声に包まれて


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