表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第5章
44/123

かりしまい2

「凄く美味し〜!やっぱりこれが正解だったわ!」


「ジェシカちゃん!これ一口と1個交換しよ!」


「嫌よ!………でもお姉ちゃんが

食べさせてくれるなら、考えてもいいわ」


2人はじゃれ合いながら、仲良くお菓子を食べている




「何があったんですかね?」


「わからんが、

お嬢様が名前を呼ばせるとは、余程の事だろう」



俺とドグマさんは、立たされている

席が2つしかなかったので、女性陣に譲ってあげた



「お兄ちゃんにも、1個あげるから食べてみて!」

ジェシカが俺に小さなシュークリームを差し出し



「ありがとう。いただくよ」

俺は一口でそれを食べ



「うん………そろそろバネッサの出番かな?」



「………………」

「………………」


なんだ?2人が俺を見つめている


「やっぱりね………」とミカは呆れ

「お兄ちゃんは損してるわよ」

ジェシカも謎の賛同をする




『間もなく2回戦を開始します

選手の方々は、控室に戻るよう、お願いします』


歓声が一気に上がる



「ドグマさん。俺達はそろそろ戻りますか?」


「いや………この試合だけ観ていこう

すぐに終わる筈だ」


2回戦からはシード選手………ヴァネッサが一番手だ

それを観てからでも遅くは無い



ドグマさんは腕を組みながら

「君が使った ()(しま)い………その

本来の使い方を、彼女が実演してくれる」



「何故使うってわかるんですか?」


俺の当然の疑問に男は


「私が1回戦、それで決めたからだ

まぁ………多少手加減すると思うが

観るだけでも、損は無いはずだ」




歓声が一際高くなり

ヴァネッサと知らない男がリングに上がる



ヴァネッサは素手………何も持っていない


相手は少し短い木刀を持ち



「開始!!」



ヴァネッサが相手に礼をすると

男はそのスキに彼女の頭めがけて………



男は場外へ吹っ飛ばされていた



「勝者!ヴァネッサ.ラウ!」


歓声は起きない。場内は唖然としている




「………申し訳無い。イシノギ殿

あれは流石に、見えなかっただろう」


ドグマは頭をかきながら俺に謝る



「そう………ですね

当たる瞬間 懐に飛び込んだ、と思ったら

風車みたいに物凄く回転させてた

ぐらいしか………」


速すぎてよく解らなかった

これが俺の素直な感想



しかしドグマさんは感心したように

「そこまで解れば大した物だ

まぁそんな感じだ。詳細は彼女に聞いてやれ」


ヴァネッサの試合も終わったし

「俺達そろそろ戻るよ」



「次も頑張ってね!クヌギ君!

そちらの………ドグマ………さん?も」


「わかってるわよね?骨よ!骨」

ジェシカは枝を折るような仕草をしつつ




俺達は控室に戻る


「次の試合からは間隔が短くなるから

私は戻れない事を

お嬢様に、伝えておいてくれないか?」



自分が勝つのは当然と思っている

当たり前だ



なので俺は


「じゃあドグマさんはミカに

同じ内容を、伝言お願いしますね」


自分から負けると思ってはいけない

勝つ気でやらなければ、俺は何も学べない



2人でニヤリと笑い

やはり硬い、熱い握手をする


呼ばれるまでドグマさんと話しをしていた



相手の情報を、兎に角知る事

その情報は相手の罠である事を、常に考慮する事

他にも色々、教えてほしかったが



「あまり詰め込み過ぎると、役に立たなくなる

自分で考えるのも大事な事だ」


「クヌギ.イシノギ選手 ドグマ.マグナス選手

次の試合ですので、準備をお願いします」



係員の呼び掛けに

2人揃って控え室を出る



通路を歩く もう話す事は無いと

後はリングで語ろうと言わんばかりに

ドグマさんも集中に入る



俺達がリングに上がると

1回戦とは打って変わって、場内は歓声に包まれる



ミカとジェシカの声が聴こえる

ミカが口についたクリームを、拭いてあげている


まるで仲の良い姉妹みたいだ………



ん……?ヴァネッサが客席にいる

険しい顔付きで俺………いやドグマさんを見つめている

2人はどんな関係なのだろうか



自分を確認する

集中できているのか………


杖は右手で握っている



周りの声を全て消す

声援も雑談も………この男の音だけを捉える


周りの風景を全て消す

ミカやジェシカ、ヴァネッサと

観客全て………この男の一挙手一投足に注目する



ドグマさんに注目する

彼は何かに、驚きながらも左手の木刀を握り直し

不敵に微笑む



「開始!!」


その声は俺には聴こえない



男が動いた瞬間こそ、俺の開始の合図だ





ヒュンッと鼻先を木刀がかすめる



「………やはり見えているな

次は当てるぞ」


男は右手に構え直し今度こそ………





右即頭部に剣が迫ってくる

俺は引きつけて躱………


速すぎる!俺は状態を後ろにそらし

紙一重で躱す事に成功した



この速さを引きつけるのは難しい

何とか突破口を………


ニ撃目が来る

またも右即頭部 先程と同じ速度

だったら、もう回避しないと間に合わない!



またも紙一重………


ドグマさんは表情を崩さず

更に一撃


右腕………か 先程より少し遅い!

俺は咄嗟(とっさ)に腕を上げ

今度は余裕をもって躱す



男は距離をとり

「その程度では無いだろう?」

木刀を左手に持ち替え



俺に呼吸のチャンスをくれる

「ふぅーーー」

大きく息を吐き 考える



男の一撃は速すぎる 

剣筋を読んだ瞬間躱して、ギリギリ

反撃するチャンスが無い



スゥーーー

大きく鼻から息を吸う



もっと速く剣筋を読むしかない

浮いた時間で、攻撃と回避を同時に行う



そんな事が可能なのか?

今でさえ、やっと回避できる程度なのに………




難しく考えてはいけない

きっと単純な事だ


息を留める



「ドグマさん………お待たせしました」


俺の言葉を聞くと

今度は左即頭部へと、迫りくる一撃を放つ


………ここだ!

男の一撃が当たる前に

最短距離をもって、男の左腕を狙い撃つ




手応えは無い………寸前で男は動きを止め

俺の一撃を回避する



ドグマさんはニヤリと口元をあげる





回避する必要はない

防御する理由(わけ)もない


当たる前に全て迎撃(うちおと)してやる




   被弾の代償は敗退

一撃も喰らうことが許されない




本当の試合開始がようやく幕を開ける




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ