かりしまい
次の俺の出番までは、時間があるので
俺はミカのいた場所まで、移動しようとする
「お兄ちゃんこっちよ。席は取らせてあるから」
ジェシカが俺の腕を引くが
「いや俺の知り合いが
応援してくれてたから挨拶しにいかないと」
ジェシカは少しむくれ
「………赤い髪の女がお兄ちゃんの事を
応援してたわね いいわ。あたしも行く!」
俺達は皆でミカの元へ向かい
「お〜!クヌギ君お疲れ様〜!
凄かったよ バッタンバッタン倒してたね」
「ありがとう ミカの朝食と応援のおかげたよ」
ピクリと少女が反応する
「何でお兄ちゃんはこの人の、朝食を食べてるの?」
「何でって作ってくれたからだよ
一緒に住んでるし」
それを聞くと、ジェシカはミカを睨みつける
視線に気づいたミカは
「クヌギ君この子は?」
「ああ前に少し話しただろ?
ジェシカって言うんだ」
ミカは思い出そうとし
「ああ〜 お菓子好きな子!
にしてしも………可愛い〜!お人形さんみたい」
ミカは少女を撫でながら
「私ミカ.レミナスって言うの
よろしくね!ジェシ」「ストップ!」
ジェシカはミカの口に手を当て
「あたしはお兄ちゃん以外に
名前を呼ばれたくないの!
これは他の皆にも、徹底させてるわ
別の呼び方にしなさい
名前以外なら何て呼ぼうと、あたしは気にしないから」
ミカは少女をマジマジと見つめ
「ん〜………まぁいいけど………じゃあ」
ニコリと微笑みながら
「チビっ子」
ミカはジェシカの事を全然知らない
そんな事をいえば怒るのでは………
俺は恐る恐るジェシカを見ると
震えながら
「あ………あなた中々、いい度胸してるのね
お兄ちゃんの知り合いだからって
何言っても良いと、思ってないかしら?」
ミカはキョトンとしながら
「だって気にしないって、言ったよ〜
ねぇねぇ、それよりさ
チビっ子って、お菓子好きなんでしょ?
一緒にお菓子買いに行こ〜よ〜」
「嫌よ!あなたとも歩きたくないし、気分じゃないわ」
ジェシカは即答する
「でもミカって毎日お菓子を
買ってくるだけあって
おいしいお菓子屋とか
知ってるんじゃないのか?」
「………えっ!?ほ本当なの?」
ジェシカが驚きながら質問する
「うん!多分この街のお菓子屋は制覇したよ
意外と隠れ家みたいな場所にあるから
中々苦労するんだよね」
ミカは自慢げに少女の頭を撫で続ける
「じゃ、じゃあ付き人を貸すから
買ってきてくれないかしら?
あたしお兄ちゃんと一緒にいたいし………」
その言葉にミカはピタリと………
撫でるのを辞め
呆れたように
「クヌギ君にお菓子が大好きな
女の子って聞いてたのに、ガッカリだね」
少女が反応する
「………何でよ!?」
ミカは大きく息を吸い込み
「いい?お菓子屋さんだよ!?お菓子屋さん!?
店内に入ればそこには 甘味と言う名の
夢と希望しか詰まってないの!
それを誰かに行かせるなんて
『私の変わりに遊園地に行って遊んで来て』って
言うのと変わらないよね!?
買ってきて貰ったの、なんてお土産だよ
チビっ子はお菓子を、全然楽しめてない!」
何だかメチャクチャな理論だ
お菓子屋なんだから、詰まってるのは砂糖だ
しかしジェシカはうなだれ
「悔しいけどあなたの言う通りね………
いいわ!一緒に行ってあげる
最高のお菓子屋へ連れていきなさい!」
「うん!じゃ一緒に行こ」
ミカは少女の手を取り
少女は後ろを振り返りながら
「今日はまだ大丈夫だから!
あなた達は来なくていいわよ
あたしはこの女と、キッチリ話し付けてくるわ」
そう言って2人は、早々と消えて行った
「いいんですか?」
俺はドグマに聞くと
「まぁ少なくても私と君は
この会場から出るのはマズイだろう
お嬢様も言っていたが、今日は付き添いが
無くても大丈夫な日なんだ」
大丈夫ではない日があるのか………
それを察した傷だらけの男が
「お嬢様の予定内容はきっとイシノギ様
だけには知られたくないと、思いますので
どうかご理解下さい」
頭を下げ………
それより
「あの………貴方って俺とあった事あります?」
「いえどうでしょうか?記憶にありませんが
申し遅れましたが、私はユウゴ.カタスと申します」
聞いた覚えがない………やはりすれ違った程度だろう
「勘違いみたいです。変な事聞いてスイマセン」
「では私はリルムさんを待たせてるので
あちらに行ってきます」
そう言ってユーゴも去って行く
リルム………あの外套の女性だろうか
残された俺とドグマ2人座っている
ドグマは一瞬で
試合を終わらせたなどといった
雑談をしつつ
俺は本題を切り出す
恐ろしいが今、聞いておこう
「ああの………ドグマさん………
次の試合で、俺の骨を粉砕するんですか?」
ドグマ少し呆れつつも
「バカな事を言うな
骨を粉砕して命に別状がないとすれば
四肢に限定されてくる
そんな面倒な事を狙うぐらいなら
まだ怪我を負わせずに、勝つことのほうがましだ
君が思っているより、人間は簡単に死ぬんだぞ」
最後は優しく。俺を諭してくれた
「あれ?俺も観てたんですけど
割と最近、バネッサは骨を折りまくって
『人間は簡単には死なん』とか言ってましたよ?」
あの光景は俺にとって、かなりのトラウマだ
ドグマは頭を抱えつつ
「彼女はまだ、そんな事をやっていたのか……
どうせ決勝で会うんだ。注意しておこう
それよりも!」
男は俺に向き直り
「君からお嬢様に、八百長無しを
進言してくれたらしいではないか?」
「ええ………ドグマさんに鍛えてもらって
少し自信がついたんで、また手合わせできたらと………」
そうだ 何と言うか彼は、教えるのが上手いんだ
言葉で語るのではなく拳………
足で語られたが、
それでもまだ彼から得るものは沢山ある
しかし、そんな機会は多くないと思う
だからこれはチャンスだ
ドグマを利用するみたいで悪いが
「そういう事か」
男は納得し
「実は私も同じだ!
君を鍛えてあげたいと思っていた
何度か喰らっただけで
あの足払い………名を《刈り終い》と言うんだが、
それをほぼ、自分の物にした!
それもただの3度………いや正確には4度目か
君みたいな男は初めてだ
利用できるなら全て利用しろ!
私を倒すつもりで来い!」
「ドグマさん………よろしくお願いします」
俺とドグマ………いやドグマさんと熱い握手を交わし
「何やってんの?クヌギ君達………」
「………あなたは………」
ミカとジェシカに誤解されていた
「お嬢様!?これは次戦を競う男同士の」
ドグマさんの弁明もむなしく
「言い訳は要らないわ
それよりも、お姉ちゃん!
早くお菓子食べましょ」
「うん!ジェシカちゃん。楽しみだね〜」
2人に何があったのかは
俺達にはわからない




