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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第5章
39/123

夢と記憶の境界

寝床から飛び起きる

額………いや体中からの大量の汗


夢ではない 所々覚えていないが


あれは俺に関係した何か………

何か、などと言う、曖昧な表現にしなくてはならない

それを認めてしまえば

俺は人間では無くなってしまう


無理矢理にでも、夢と思うようにする



「………精霊………魔物………」

言葉に出すと更に自分が恐ろしくなる



1週間前に出会ったあの娘………ジェシカという少女は

俺のことを、知っているようだった

彼女なら何か、知っているかもしれない


しかし探そうにも

彼女の情報など持っていない

地道に聴き込みをして会えることを

願うだけしか出来ない


俺は汗を拭き、呼吸を整え

ヴァネッサとミカの居る食卓へと足を運ぶ




テーブルに朝には重い

豪勢な料理が並んでいる


「え………これ何?誰かのお祝い?」

俺の間抜けな問いに


「何言ってるの!?クヌギ君

今日は闘技大会があるから、私が早起きして

元気が出る料理作ったんじゃない!」


ミカがテーブルをバンバン叩きながら

俺に詰め寄る


「………」


そうだった


ヴァネッサが出るから、応援に来てほしいと

言っていたんだった

それで参加賞として50ルドンが出る事を

知った俺も、出場したいと言った気がする



「ゴメン ちょっと寝ぼけてたよ」

ミカに謝りテーブルに座る


ヴァネッサは笑いながら

「緊張しないのはいい事だ

あまり食べ物を詰めすぎると動けないから

適当に食っておけ」


「む〜 ヴァネッサちゃん

私何時に起きて作ったと思ってるの?」


「3時ぐらいからだったか?

夜中にガサゴソうるさかったぞ」


「ひっど〜い!ヴァネッサちゃん酷いよ〜」



2人のじゃれ合いを聴きながら

皿の肉をつまむ 



ムム厶!美味!


ミカの意外な………意外すぎる才能

食べられれば何でも良いような事を言っていたが

こだわりを感じる味だ


こちらのサラダはどうだろうか?



いや、そうではない

闘技大会………一対一のトーナメントで

準決勝まで勝ち進めば賞金が貰える


俺は姑息にも参加賞狙いなので、そこまで

気負うつもりはなかったのだが………



正直そんな気分ではない

俺は自分の正体。

何かヒントだけでも早く探したい

少しでもこの不安から解放されたいんだ



そうだ


「話しの腰を折るようで悪いんだけどさ………

魔物と精霊について、何か知っている事ないかな?

何でも良いんだけど」



俺の話題にじゃれ合いを辞め、ミカが


「ん〜 精霊は大昔に神様達に反乱を起こして

その時に滅ぼされたって、聞いたことあるよ〜

何で反乱を起こしたのかは

神様も教えてくれなかったけどね〜」


ミカは自分の料理をパクパク食べながら答え



「魔物は稀に見かけるが

あれはただの浮遊物体だ 無害に近い

ただ多くの人は不快感をもたらすから

討伐されてはいるが

私としては放っておきたい存在だ」


ヴァネッサは軽く答えた後、白湯を口に含む



俺の知っている存在(こたえ)と違う

「じゃあ魔物が人を殺すって事は無いのか!?」



「それはお伽話(とぎはなし)だろう?

『知らない場所に行くと魔物に食い殺されるぞ〜』

ってな。少なくとも私は魔物に殺された

人間を聞いたことないな

大抵の魔物はクヌギでも楽に倒せるぞ」


ヴァネッサは冷やかすように言うが

俺にそんな余裕は無い。しかし



そうか………良かった

俺の勘違いだ 俺がホッとしようとすると


「しかし魔物は、年を重ねるごとに

上限無く力を増すから、討伐しておかないと

いずれは、誰の手にも負えなくなってしまう」




心臓が跳ね上がる


ミカが付け加えるように


「でも〜 そういった話しは聞いたことはあるけど

魔物が力をつけ出すのは

何百年と過ごしたあたりから、らしいよ〜」




心臓に手をやり、鼓動を沈める

「か………仮にさ、何千………

いや2千年近く生きた魔物がいたとしたら………」


その後の言葉が続かない

それを知ってか知らずか




「………ん〜………………」

ミカは唸りながら、黙り込んでしまい



ヴァネッサは白湯を飲み干し


「先に断っておく。ミカも知っていると思うが

はっきり言って、私は神への信仰は無い

しかし神を愚弄する

わけではない事を理解してくれ」


俺とミカは黙って頷く



「もし二千年も生きた魔物が存在するなら

人………生物の手に負える代物ではない

常にこの世に存在できる分

神よりも、影響力があるはずだ」



神よりも強い影響力………


ヴァネッサは続ける



  「その魔物はいずれ神と呼ばれ

    今いる神はその座から

   引きずり降ろされるかもな」



ヴァネッサは自分の言葉に苦笑し


「………自分で言って何だが、夜迷言だ

まぁ、もし私が神なら

そんな存在は力をつける前に消すよ」




力をつける前に………


その言葉に1つの仮説が浮かぶ



神が力をつけ始めた精霊を抹殺するために

願望を叶えるという、餌を用意したのだとしたら………



夢の中の精霊。

あの存在だけが、最高の餌に全く興味を持たなかった



精霊が最後まで気にかけた少女。

あれ程に幼い子が

森の奥深くまで、入り込めるのだろうか?

何らかの力が、働いたのだとしたら……


 

 神々が(おれ)だけの為に張った罠

   少女はその為の生贄(エサ)



少女はそんな、くだらない事の為に

短い命を散らさなければ、ならなかったのか………



認めよう………俺の中に夢で見た魔物がいる

いや、夢ではない。

俺の記憶と認める他ない



何故なら



俺の心臓に憤怒の炎が奔り、猛り狂っているから











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