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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第4章
35/123

記憶の残滓2

「うん ここよここ!

あなた中々やるじゃないの」


店に入ると先程までの不機嫌が嘘のように

無邪気に店内を歩き回る



「ハハ………それは良かったよ」


俺もせっかくだから何か買って帰ろうか

しかし今買うと荷物になるから

などと考えていると



「いいわよ 遠慮はいらないから

好きな物を買いなさい」


ひとしきり店内を見て回った少女は

とてもご機嫌で両手に沢山のお菓子を持っていた




流石にこんな小さな少女に奢って貰うのは

気が引ける しかし断るのも悪いので


「お言葉に甘えて………これを」

木の実をチョコレートで包んだ菓子を

単体で1つだけ



「それだけでいいの?まぁいいけど」


少女はそう言うと沢山の菓子をカウンターに置き


「じゃあ店の前で待っててあげるから

早く済ませなさいよね」



信じられない事に会計をすることなく

少女は店を出た




………何か詐欺にあった気分だ

まぁ所詮は菓子だ。そこまで値は張らないだろう



貼らないでくれ



結果俺は40ルドンを支払い店を出る

「………」


さよなら………まだ見ぬ俺の荷造り賃金

今朝ヴァネッサに貰ったお金が

無かったらと思うとゾッとする




店から出ると少女は菓子の入った袋をふんだくり

中身をその場で食べ始める


幸い店先に椅子があったので並んで2人



「あなた 見かけによらず中々良い人ね」



これで『見かけ通り悪い人ね』なんて言われたら

流石に泣くぞ 



俺は一口でチョコを食べ終えると

「帰りは大丈夫かな?

俺そろそろ仕事探しに

行かないと行けないんだけど………」


赤字を埋めなければいけない 薄給は辛いのだ



それを聞き少女はポケットをガサゴソと漁り

「仕事探しか………んっと これあげるわ」


表面に500と刻印されている

他とは違い かなり立派な硬化


まさか


「………これって500ルドン?」



「そうなんじゃない?

これで今日は仕事探さなくていいでしょ」


少女は金の価値についてはどうでも良さそうに言う

良いとこのお嬢様なのだろうか?



しかしこれは



「いや、受け取れないよ。こんな大金

せめてお菓子代の40ルドンだけとか………」


「これしか無いんだから良いのよ!

もう受け取ったんだから、今日はもう少し

仕事と思って、あたしに付き合いなさいよね!」



そうだ仕事。これは仕事なんだ

少女を菓子屋まで連れて行き

少しだけ付き合うことで、その対価として大金を得る



決して立派とは言えない仕事だが

こちらも貧乏生活

ヴァネッサにも迷惑をかけっぱなしだ

背に腹は変えられない



俺はコインを握りしめ

「ありがとうございます

何なりとお申し付け下さい。全力でお答えしますので」


金の魔力に負けてしまう



少女はひとしきり菓子を食べ終え

俺に残りの菓子の入った袋を渡すと


「知ってる所だけでいいから案内して頂戴

暇潰しだから面白そうな場所がいいわね」



街案内だけで良いのか!

それなら俺でも卒なくこなせるはずだ


「じゃあ出来るだけわかり易く

教えられるように努力するよ」



しかし少女は

「どうせ覚えないから………適当でいいわよ

言ったでしょ?だだの暇潰しよ」



そんな事を言われても大金を受け取ってしまっている

俺にとっては 生半可な案内等はできない


面白そうな場所か………


「………お菓子屋巡りとかどうかな?

俺が知ってるだけでも後2つはあるし」



せっかくだから興味がありそうな場所が良い

と思い提案したのだが


「………別に何処でも良いわよ

早く行きましょ?………ほら早く!」


少女は椅子から立ち上がり俺を急かす

喜んでくれてるならいいのだが………


俺が立ち上がると、少し遠くの二人組と目が合う

顔が傷だらけ、手足は包帯まみれの男


最近、何処かで見た気がするが

多分街ですれ違っただけだろう



もう一人は鎧を着けた騎士の様な中年

俺には戦闘なんてものは、まるでわからないが

遠目からでも強そうに感じるには十分な風格



「遅いわよ!早くお菓子屋さんに行かないと………

なくなっちゃったら どうするのよ!」


俺は少女の食べきれなかった菓子類を

持っている。まだ食べる気なのか………


「はいはい お嬢さん とっとと行きますか」

目が会った二人組に軽く会釈をして

少女と菓子屋巡り と言う名の街散策を堪能した





菓子屋を回るついでに多目的広場や飯屋なども

案内したのだが、あまり興味を示さず

退屈そうにしていたので不安だったが

目的の場所に着いた途端、目を輝かせ



「へぇー 美味しそうなのがいっぱい!」

店内をクルクル回り2つの菓子を手に取り


「これがいいわ!お願いね」

そう言うと、俺に菓子2つを渡し店内を出る



500ルドン貰っているので絶対に赤字にはならない

お安い御用だ。ついでに少女に貰った金は

本物の500ルドン硬化だった事も判明した


俺は4ルドン払い少女の元へ行くと




またあの二人組がいた

傷だらけの男と鎧の中年

この少女の知り合いかな?


「ねぇ あの2人って知り合いじゃないの?」


少女は少し目を凝らし

「………あなたまだ私の仕事してるのよね?」


質問の意図はわからないが俺は頷く

「あの2人からあたしを守ってくれる?」



先程までの強気な少女とはまるで別人のような

か細い声で頼まれる



「ああ 俺弱いから、あまり役にはたたないけど

仮に仕事じゃ無くても君を守るよ」



その言葉を聞くと 少女は嬉しそうに

「じゃあ一緒に逃げて!」



俺は少女に手を引かれ走り始めた



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