簡単な2択
「つまり自身のことは、何も覚えてないと……
何らかのショックによる記憶喪失か……」
ヴァネッサは考え込むようにつぶやいた
「ああ 覚えているのは知らない爺さんが
『ここに居ればとりあえずは助かる
ワシはどちらでも良いが』って言葉だけだ
そして気づいたら あなた達に助けられていた」
俺は唯一覚えていることを 彼女達に話した
「何なんだろうねぇー?
ん〜ヴァネッサちゃんどうしょうかー?」
ミカは相方に今後のことを相談した
「ヴァネッサちゃ〜ん きいてるー?」
と顔の前で手をブンブンとふる
ヴァネッサは自分に振られたとわかると
考え事をやめたようにして
「私は今回はミカの護衛だから、決めるのはミカだ
しかし意見だけは、言わせてもらうと
彼を連れて歩くのなら
当たり前だが今回の探索は終わりだ
もうじき日も落ちる、水場に戻り一晩明かして
それから村まで 一直線に戻る」
「彼をその場で見捨てるなら
もう少し奥まで、探索を続けてもいいだろう
戻りながら探索してもいい付き合うよ」
彼女は簡単で当たり前の
2択を用意してくれた
助けるか 助けないか それだけの話だと
ミカはその言葉を聞くと 考える間もなく
「んじゃ帰ろっか!君もそれでいいかな?」
と笑顔でこちらを向く
「俺もそのほうが嬉しいけどいいのかな?
その探索ってやつは できなくなるんだろ?」
俺は自分が彼女達に
迷惑をかけていると思い聞き返す
「君を見つけたのが探索結果だよ〜
だから困った顔しないの
村までしっかり送るから任せといて」
彼女は立ち上がり
その小さな胸をドンと叩いた
「ヴァネッサちゃんも それで良かったかな?」
「そうだな それがいい」
ヴァネッサはそう呟くとスッと立ち上がり
「一時間ほどで水場に着くが歩けそうか?
無理ならおぶってやるが」
嫌味などは感じさせず
ただ心配してくれているというのは
彼女の表情でわかる
「大丈夫 ちょっと腹は減ったけど
喉も潤ったし歩くぶんには問題無いよ」
本当は少し不安だが、お荷物になりたくない
という思いからそう口走った