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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第3章
29/123

長い1日

男の剣士を宿屋に送り

ミカとミシェルは斡旋所へ向かっている



「ごめんねミカちゃん

初めての仕事だったのに失敗で………」


今はすっかり

歩けるようになっている ミシェルだが

男の方は 完治に数ヶ月かかるだろう


依頼はダースモールの全駆除

更に農夫3人も発見出来ずに 帰還したからだ


本来なら後日 もう一度向かうのだが

あの怪我なら それも難しい



「私こそ役にたてなくて ごめんね」

私は自分でもっとやれる。と思っていた

でも結局何もできなかった


それどころか、私が居なければ

男は怪我をせずに無事に

依頼を達成できていたのでは、ないだろうか?


嫌な考えが頭をよぎる




斡旋所へ入る


「ミカちゃん私報告と引き継ぎを

お願いしてくるから」

パタパタと受付へ行くミシェル



私はボーっとした思考で斡旋所内を見渡す


中は賑わっているが

静かな人もいるし

短剣を見つめて今にも

自殺しそうな顔をした冒険者もいる




ミシェルが戻ってくる


「終わったよ 私………

今日ミカちゃんに出会えて、本当に良かった

迷惑じゃなかったらだけど………

また誘ってもいいかな?」



その言葉に救われた気がして元気が出てくる


「うん。また誘ってね

今度はバシッと、やっちゃうからね〜」


「フフ じゃあまたね ミカちゃん」

彼女(ミシェル)が手を振り斡旋所を後にする



すると先程の自殺しそうな人が

こちらに近づいてくる


こ 怖い その人の顔は腫れ上がり

腕は青黒く変色している


って クヌギ君か………紛らわしいなぁ

「ミカ。仕事はどうだった?

行くときより1人、少なかったから………」


「ちょっと怪我しちゃってね

失敗しちゃったんだよ。クヌギ君は何してたの?」



聞けば彼は、この顔で仕事が受けれないので

私達を待っていたみたいだ


「ん〜………もうヴァネッサちゃん()帰ろっか?

疲れちゃったし、汗も凄くかいちゃったよ〜」




彼は頷き2人ヴァネッサの家へ向かう

日は沈みかけていた




ヴァネッサちゃんの家へ行くと

野盗達がいなくなっており、中へ入ると


「お疲れ様!風呂の準備はしてある

まずは疲れと汚れを、落としてこい」



仕事を終えた私に対する(ねぎら)いだろうか

そのまま風呂場に案内され


「汚れを落としてから 湯船に浸かれよ

私達も後で 入るんだからな」



「も〜 わかってるよ 

子どもじゃないんだから」


ヴァネッサちゃんは私を 子ども扱いしすぎる

2つしか離れてないのに

いつも私の心配をしてくれる




「ヴァネッサちゃん……」


「なんだ?」




「ううん 何でもない」


私は素早く服を脱ぎ、ササッと汚れを落とし

そのまま湯船に入る


1番風呂を存分に堪能してやる



「ふ〜 最高 気持ちいい〜」


私は自分の平坦な身体(むね)を見る

「…………」


まだ成長期だから、これから。これから。

沢山食べて大きくなってやるんだから




お風呂からあがると、私が持ってきた

替えの服と下着が既に用意してあり


「………おじいちゃんみたい」

などど言いつつ 素直にそれを着る




「ミカ。初仕事はどうだった?それ程貰えないことは

わかっているから 気持ちでいいぞ」


ああ………お昼ご飯代か………私報酬貰ってないから

気持ちでいいと言ってくれるなら



バッグをガサゴソと漁り、ヴァネッサに手渡す


「………何だ?これは?」


黒く柔らかいものを慎重に触りながら

「キクラゲだよ?野盗追っかけてる時に

生えてたから取ってきたの」



ヴァネッサちゃん期待してたし

多分怒るんだろうなぁ



しかし

「まぁ、しょうがないな

今回はそれで良しとしようか」

そう言って、ヴァネッサはキクラゲを皿に移す




ヴァネッサちゃん、何だか機嫌が凄く良さそう

私が怪物(モンスター)退治に行ってる時何してたんだろう?


「ヴァネッサちゃんご機嫌だね

良い事でもあったの?」



「ん?ああ………まぁな

ほら次はクヌギが風呂に入れ

最後に私が入るから湯を使いすぎるなよ

ミカは祈りは良いのか?」



軽く流された 藪を突いて蛇を出しかねないから

大人しく引き下がろう




ヴァネッサが使っていいと言われた

部屋に通され、蝋燭に火を灯す


ドアがないので覗かれる心配があるが


覗かれて困る事は

着替えと神への祈りぐらいなので

私はそれ程、気にせず祈りへ入る




「………前もって言えば 神様もわかってくれるでしょ」


対話を覗かれるのを嫌う神様もいる


圧倒的にそんな事は気にしない

神様が多いのだが、いる以上は配慮しなくてはいけない




ミカは日課………いや、それはもはや

生活の一部となった祈りという行為


瞳を閉じる事だけで、神々との対話を可能にする

それがどれほど凄いことなのかは

ミカ自身は知らない





………

誰かが部屋に入ってくる

私を優しく抱きかかえ

ベッドまで運び 布団をかけてくれた

蝋燭の火を消し「………おやすみ ミカ.レミナス」

そう言うと その誰かは消えてしまった




おやすみなさい




     依頼報酬   出陣 完







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