悪魔と魔法
1ルドンは、50円程の価値です
「イ イシノギ君その腰の短剣を
見せてもらってもいいかい?」
イーディスに腰の短剣を渡すと、彼は目を輝かせ
「ほ 本物の鋼鉄だ。しっかり手入れされてるけど
随分古い代物のようだね
ひ 百年以上昔に造られた代物だよ」
「ちょっと遠くの 村長に借りてるんですけど
高価な物なんですか?」
野盗のリーダーも 似たような事を言っていた
「う うん最近 王国で確立された製造技術だから
この短剣だと多分………五千ルドンぐらいかな」
ヴァネッサに貰った100倍がこの短剣に………
「ひ 100年以上昔となると
古美術としての
価値もつくから もっと高いと思うよ」
イーディスは笑いながら俺に短剣を返す
「そんなに高価な物だと、俺は弱いから
狙われたら、ひとたまりもないですね」
俺の言葉の何に反応したのか
「イ イシノギ君。僕はこれから
村に帰るんだけど良かったら
街の出口まで 見送ってもらえないかな?」
特に断る理由もなく 俺はそれを了承する
街の出口付近になると、流石に人も居なくなる
イーディスは辺りを確認すると
「あ あーこの辺で良いよ。ありがとう
最後に1つ
もう一度、君の短剣を貸してくれないかな?」
何だか少し怪しいが拒む理由も無い
鞘ごとイーディスに短剣を預ける
「し 心配しないでいいよ。盗ったりしないから
君の力になりたいだけさ」
彼は刃で少しだけ指を切る
その出血で地面に 読めない文字を描き始め
「っつ〜 い 痛いなぁ………鼻血でもでてくれれば
楽なんだけどね」
何をしようとしているか 解らないが想像はつく
多分神術の1種なんだろう
「あの………それって血じゃないと駄目なんですか?」
俺は何をしているかより、痛みながらも
血で文字を描くことが気になったのだ
「ベ 別に自分の体液なら何でも良いんだけど
血以外は思いつかないからね」
俺が思いついたのは唾液だが、イーディスの文字量を
見ていると絶対に足りないと感じ
「で 出来たよイシノギ君
魔法陣って言うんだけど、見たことないよね?」
「多分ありますよ。神術ですよね?
それがどんな物か分かりませんが
俺の足を治してくれたり、痛みをなくしてくれたりと」
彼は少し笑い
「よ 良かった。君が魔法を知らなくて
僕はこれを誰にも知られたくないんだ
と 友達の君だからみせた。誰にも言わないでほしい」
俺が頷くと、短剣を文字の中心に置き
大地に両手をつくと
我は深淵にて契約を結ぶ者
我は深淵の汝を使役する者
我の言の葉を寄るべとし
我が魂を標とせよ
汝の力を刻め 汝が魂を刻れ
血文字が赤く光り 中心の短剣は
今にも溶けそうなほど赤みを帯びる
それをイーディスは掴み取り 鞘に納める
そして俺に差し出し
「は はいこれ………君が本当に危ない時
どうしようもない時に、鞘から抜いて願えば良いから
使わないに越した事は無いんだけどね」
「あ………ありがとうございます イーディスさん
神に祈るってやつですか………」
彼は首を横に振る
「祈るのは 神なんかじゃないよ
奴等は自分勝手だ。お気に入りしか助けないし
本当の願いは 決して叶えない」
「じゃあ………いったい」
俺はもう答えがわかっていながら 彼に問う
「悪魔だよ 君の領分だろう?」
彼はそれだけ言うと 背を向け歩き出した
君の領分………
俺は理解している
彼が書いた血文字が
何の文字かは解らないが 理解できている
彼は俺を理解していない
あの詠唱は間違いだ
少なくとも俺ならきっと………
「何考えてんだ………帰ろう」
何だかドッと疲れてしまった
ミカかヴァネッサが来るまで斡旋所にいよう




