ミカ.レミナス出陣
「いや〜 術士がいてくれて良かったよ
俺達2人でも大丈夫なんだけどさ
保険として……ね」
男は腕に自身があるのか軽口を叩く
それもそうだ。受注全くの未経験者が
いきなり中級を始めるなどあり得ない
それでも彼女を誘ったのは
「ねぇ ミカ.レミナスさん
ヴァネッサさんとは どんな知り合いなんですか?」
肩に弓をかけた女性がミカに話しかける
「ミカでいいよ〜
ん〜、ヴァネッサちゃんは……何だろ?
むかし馴染み?友達だよ」
私がまだ小さい頃に知り合って
今でもたまに村に来てくれて
私と遊んでくれる。私にとって大切な女性
「……どうやって知り合ったんだっけ?」
ミカはポツリと呟く。確か8歳ぐらいの時に
初対面で思いっきり 引っ叩かれたのは覚えている
原因はたしか……
ヴァネッサちゃんを呼んだら そんな感じだった
昔過ぎて曖昧だ
「ヴァネッサさんと
知り合いなんて羨ましいなぁ〜」
中級者の女性はおかしな事を言う
「なんで?同じ仕事してるんでしょ?
話ししてれば仲良くなれるよ?」
そんな簡単なこともできないのかと
思っていたミカだが
女性は手を大きく振り
「いや いやいや そんな 恐れ多い
私なんかが話しかけても、迷惑なだけですよ
遠くから見てるだけで……充分なんです……」
女性は思いふける様に空を見上げる
するとミカは笑いながら
「アッハッハ ヴァネッサちゃんは
そんな大層な人じゃないよ〜
きっと貴女とも 仲良くなれるよ」
そうだ 私の知ってる ヴァネッサちゃんは
いつも周りを気にかけている きっと彼女のことも
知っているだろう
例え 仕事中だろうと それは変わらないはずだ
「ほ 本当でしょうか!?
私なんかが声をかけても迷惑ではないんでしょうか?」
女性は期待に 目を輝かせながら ミカを見つめる
「うん!でもね、怒ると怖いんだよ〜
私なんか 今日お腹にパンチ喰らっちゃったよ」
吐いたことは黙っておいた。これでも一応女の子だ
恥ずかしいものは 恥ずかしい
「あ〜あのさ……依頼人の場所にも
そろそろ到着するし君が
いくつ神術を使えるか、知っておきたいんだけど?」
話しに置いてかれた男性が割って入る
せっかく楽しかったのに
話しの腰を折られてしまった
「ん〜……ちょっと待ってね〜」
太っちょおじさんに 癒やしの女神様の助けを借りて
クヌギ君に大地の大神様……
大神様はまた助けてくれるかな?
風神様は飽きたって言ってたから
暫くは辞めとこう
最近雨も降ってないし この辺りはどうなんだろうか?
天気もいいから……
「う〜ん……」
唸るミカに 女性が心配するように
「あ あのミカちゃん 大丈夫?」
「多分……6……かな……」今思いつくのが
6つの神様なのだから、しょうがない
その場所や神様のご機嫌次第だし
全部の神様の助けを借りれる条件なんて
今まで生きてきて一度もない
「あと!」
ミカは男性に指を指し
「神様の力は 使うんじゃなくて
力を少しだけ貸してもらってるの!
使役してるみたいに聞こえたら神様も
気分悪いでしょ!」
「あ ああ……悪かった 気を付けるよ」
男は納得いかなそうに謝る
男は中級者になってもう2年だ
ベテランだと自負している
それが未経験者に指図されると 癇に障る
こんな事ならいつも通り
2人で仕事をすれば良かった
しかし流石 ヴァネッサ.ラウの友人と言うべきか
「6ですか!?私も術士の方と
一緒に仕事したことありましたが
その方は4つと言ってました。凄いんですね!」
女性はミカの術の数に驚く
しかしミカは
「どうなんだろ?お婆ちゃんが言ってたけど
多ければ 良いってもんじゃないよ」
そう
どれだけ その神様のことを知れるか
どれだけ自分のことを知ってもらえるか
大切なのは お互いを知ることだと
死んだ祖母は 毎日のように言っていた
毎日祈った。幸か不幸か私の村には
私と歳の近い人は居なかった
友達はたまに来てくれる ヴァネッサちゃんだけ……
寝る間も惜しんで祈り続けた
時間さえあれば、神様とお話ししてた
神様とのお話しは 毎日楽しくて
辛いことも忘れられて
私はきっと友達が欲しくて……
神様と友達になりたくて
神様に祈っていたのかもしれない
きっと神様と友達なんて
おこがましいと言われるだろう
「こんな事聞かれたら神様達、呆れちゃうかな……」
それは誰にも聴こえないほどの独り言
しかしそれは……たしかに届いていた会話
僕達もミカ.レミナスが大切な友達だと思っているよ
「……アハッ!よーしパパッと
依頼を終わらせて 帰ろー!」
足取りが軽くなる
まるで羽でも生えたかのように
男を抜き去り 先頭に出る
それを快く思わない
男だがそんな事 私は気にしない
「ところで依頼ってな〜に?」
私は 当たり前の事を聞き忘れていた
男は不機嫌に依頼書を確認して
「怪物〈モンスター〉退治だよ」




