初めての街へ
「ここがシスの町だ。今いるこの島の中では
1番大きな街だな」
ヴァネッサが町の説明をしてくれる
行商がお礼を持ってきてくれようとしたが
ヴァネッサが断っていた
「依頼なら貰っていたが ついでだったからな」
「ヴァネッサちゃ〜ん ご飯食べるとこ無いの〜?」
ミカは説明をよそに 飯屋を探している
野盗退治をした後はずっと
食べ物の話しばかりしている
「まずは 私の家に行こう
荷物を 置いてそれから昼食にしようか
クヌギは昼食は食べたのか?」
「いや、まだだよ 俺昼食ないから」
昼食どころか村を 出てから何も食べていない
その答えを聞き ヴァネッサのミカを睨む
「何を食ったのか知らんが
ミカは1人でたべたのか?」
「一応聞いたんだけど
要らないって言うんだもん」
そうなのか?と見てくるヴァネッサに俺は頷く
「まぁ ミカは悪食だから 気持ちはわかるが
食べれる時に 食べないと いざという時に困るぞ」
「悪食って失礼しちゃうな〜
ただの素揚げだよ〜?」
……コオロギのな
ヴァネッサは軽くため息をつき
「何にしても まずは私の家が先だ
2ヶ月も家を離れている どうなっているか
楽しみなんだ」
妙な事を言う どうなっているか?
家を長期間放置したら 風化するぐらいで
楽しめる要素なんて無いと思うが……
賑わった町並みから少し離れた場所に
ポツンと ヴァネッサの家はあった
周りには何人かの男が 何か作業をしている
「誰か居るよ〜。ヴァネッサちゃんの知り合い?」
「知り合いと言うほどじゃないが
見たことある顔だな」
俺達が近付くと 男の1人がこちらに気付く
「おい!それ以上近づくんじゃねぇ
……ラウさん!? ヤバいぞ作業辞めろ 帰ってきたぞ」
男の呼びかけに男達が 斧や木材を置き
素早く集まってくる
「あ………あの 俺達怪しいですが
悪さをしてた訳では…」
男の1人が目を合わせないように
ヴァネッサに語りかける
「わかっているさ 家の修理をしていたんだろう?
顔を上げろ」ヴァネッサは男の肩を軽く叩く
「良かった 誤解されなくて
俺達は 辞めろって言ったんですが……」
「バネッサ どういうことなんだ?」
訳のわからない俺はヴァネッサに問いかける
「ん……大方私に恨みを持つ者が
私の居ないのを いい事に腹いせとして
家を壊したんだろうよ」
ヴァネッサの言葉に男達は頷く
「この男達は私に怒られては 敵わんとして
必死に修理してくれてたんだろう」
男達は必死に頷く
「良い人達なんだ」その言葉にヴァネッサは
「いや 悪い人達だな こいつらは野盗だ」
男達の緊張がピークに達する
ヴァネッサは笑みを浮かべつつ
「そんな顔をするな 私の家を
直してくれいているだろう?
仕事で会ったら手心は加えてやる
他にも仲間がいるなら連れてこい 顔を覚える」
「あと2人いるんで 急いで呼んできます!」
男の1人が急いで走ろうとすると
「2人なら面倒だからいい。そいつ等には
暫く2人で活動するなと言っておけ」
ヴァネッサは荷物をその場に置くと
「ミカとクヌギも荷物を置いて 飯を食いに行こう
お前達は引き続き修理を頑張ってくれ」
男達で笑顔で返事をする
俺は荷物を置き 3人で再び町へ赴く
「なぁ バネッサあの野盗達って
何のメリットがあるんだ?
結局バネッサに会ったら退治されるんだろう?」
俺は疑問を口にする
見逃してもらうならわかるが
彼女は手心を加えると言っていた
「あいつ等は仕事で会えば
多少痛い目をみる程度だな
私も会わないことを願いたい
奴等以外は手加減しない 壊滅させるまで追い込む」
不敵に笑うヴァネッサ
「でもせっかく 家を直してくれてるんだから
見逃して あげればいいんじゃないの〜?」
ミカの言うこともわかる 不正な気もするが
「奴等がそう頼むなら 一度くらいは見逃すが
2度目以降は……」言葉を区切る
「面倒臭いな〜 タダで修理してるだけじゃん?
もう真面目に働けば良いのに」
それもそうだ リスクを減らすために
無償で労働するなら リスクのない
仕事を胸を張ってするべきだ
「彼等も 真面目に働けるなら
そうしてるんじゃないかな?
他に生き延びる術を持たないんだ」
そう言ったヴァネッサの言葉は何処か
哀れみを感じさせた




