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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
第2章
17/123

畏怖の象徴

まさに台風一過だ

さきほどまでの暴風は鳴りを潜め

今は心地良い風を届けてくれている



地面を見ると 野盗達の地獄絵図が

広がっているが 見てみぬふりをしよう



しかし


「あの家は無傷なんだな」


木造の古びた民家真っ先に

崩壊しても おかしくなさそうな建物は

その姿を変わらずに保っている




俺はその民家に近づき

ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開けようとした



ギギギ


と不快な音を鳴らしながら開かれる扉




(俺は壊れている)

警戒しながら中を覗き込む


(野盗達の一人が

娘はボスに取られたと言っていた)

中は薄暗く

扉の隙間からやっと光が入る程度だ



(ミカは危ないから

ここで待っていろと言っていた)

中には服を着ずに

縛られた女性の姿があった



(その2つを覚えていながら

今民家に侵入しようとしている)

俺は慌てて上着を脱ぎ腰に着けたの短剣で

縛られた手足のロープを切ろうと駆け寄った



(扉は不快な音を出している

光が遮られていく)

「大丈夫ですか!?助けにきました」



(危険な目に合うとわかっていながら)



「……グッ!?」不意に後頭部を殴られる


痛みは全くなく殴られた衝撃で地面に倒れる

渾身の一撃で意識を失っていない俺を見て

舌打ちをしてツバを吐き捨てる



その男は片手に棍棒を

握ったまま力任せに振り下ろし


俺は身をよじり何とかその一撃を回避したが

持っていた短剣を蹴っ飛ばされ


男に馬乗りになられてしまっていた




「鋼鉄製の短剣……か?

随分良いもん持ってんじゃねぇか」


男はチラリと短剣の行き先を確認すると

一撃 また一撃と棍棒を振り下ろす



「うぅ……ぐっ!」

俺はただ必死に頭を守るように

両手で庇うことしかできなかった



何十発も殴られ続けたが、痛みはない

ただ鼻血のせいで口の中に血がたまる


目は開けれないほどに、腫れ上がり男が3人に見え

まともに呼吸もできず時折

咳き込みながらも殴られる



「ハァ……ハァ……めんどくせぇ……」

何十発と殴り続けても

気を失わない俺に 男も流石に疲れたのか



「……殺すか」冷酷な表情で俺を見つめた





……眩しい

日の光が入ってくる

扉からの光だが、不快な音をたてずに開けられ

また音も無く閉められた


光が消えた代わりに声がする



「すまないがそいつは連れなんだ

気がすんだら辞めてもらっていいか?」



俺には簿焼(ぼや)けていて

その人物が誰なのか わからない



俺はその凛とした声

その口調を知っている



男が慌てて声のした方向を見る 




しかしその姿はそこには無く

縛られた女性の前に片膝をつき

手足のロープを切る



「辛い思いをしたな 申し訳ないが

先に私用を済ませる

もう少しだけ待っててもらえるか?」


その人物は優しく 俺の上着を着せる


女性は涙ながらにコクンと頷くと

「ありがとう できるだけ早く済ませる」

そう言い立ち上がる



「おい!何勝手なことしてんだテメェ!」

男は立ち上がりその人物を睨みつける 



その人物は後ろ姿のまま

「立ったな………もう気がすんだと、私はとらえたぞ」



ゆっくりと振り向く


ボヤけていてもわかる。間違いようがない




「ヴァ……ヴァネッサ.ラウ……」

まるで恐怖そのものを 声に出すかのように

男は彼女の名を口した



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