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異世界無能者の観測記録  作者: ホムポム
最終章
103/123

悪人の対価 贖い

街へつくと野盗の男と別れる

俺とこの男はやるべき事が違う


「兄ちゃんのおかげで早く到着出来た。礼を言うぜ」


男はそのままヒョコヒョコと

街の奥へと消えて行った




「俺も早くイーディスさんを捜さないと」



斡旋所に走り、勢いよく扉を開ける

中を見渡すが……人がまばらだ。


イーディスさんは……居なかった


冒険者の一人が声をかけてくる

「お前は来ないかと心配したぜ。

お前の彼女と一緒に村につくとばかり思ってな」



「……うるさい」



静かに一声だけ。俺はそのまま受付へ行く

紙に文字を走らせ

「イーディスさんが来たらこの紙を渡してくれ」



受付譲が内容を確認する

《イーディスさん。クヌギ.イシノギです

昨日の件ですが、助けて下さい。

迷惑をかけますが、他に頼れる人がいません。

お願いします。助けて下さい》



「……わかりました。」

受付嬢場その紙をカウンターの奥へと置き


「…………後何枚か貰います」

俺は同じ文章を書き殴り斡旋所を出る



受付嬢の目……推測だが

イーディスさんに渡さない気がした

勘付かれている。冒険者の1人も

俺が、村側につく事を読んでいた。



「イーディスさんを待つか……」

昼には男は街へ来るだろう…………


そこで合流するのが確実だ。



…………時間が余るな。

行くか。話しを聞きに


街を少しだけ歩き1軒の家のドアを叩く


コンコンコン


「開いている。入って構わん」

女性の声が聞こえドアを開ける


女性と目が合う



「クヌギか!?どうした?」

殺意しか沸かない

お前はどんな気持ちで言っている?


俺が知らないとでも思っていたのか?

お前の声は何度も聴いている


『術士は殺った』だと?ミカはお前の友達だろう。




「バネッサ……話がある。

……何故ミカを殺すんだ?」


女性はキョトンとした顔をして

「私が……ミカを殺す?何を言っている?

有り得ない「有り得るから聞いているんだ!」」



女性の言葉に大声で被せる

何が有り得ないだ!


「俺はお前達冒険者が今日、

何をやるのか全部知っている。

お前達は明確な殺意でミカを殺す。

それは何故か聞いているんだ!

答えろ!バネッサ!!」



女性は頭をかきながら

「ミカはその妄想を知っているのか?」


「信じなかった。そして妄想では無く事実だ」


「……情報漏洩は恐ろしいな。」


「お前……認めたな?」

意図もあっさりと認めた。ミカを殺すと


「戻ってミカに伝えろ。

あの村から逃げた方が良い。

いや……この島から…………」


「何で……殺すんだよ?話し合いで済むだろ?

ミカを殺す必要はないじゃないか?」



ヴァネッサは少し考えながら

「クヌギ……君は全部知らないな?

これ以上は話す事は無い。」



ヴァネッサが立ち上がり俺の背後に立つと


ヒュッ 「ガッ…………」



首筋に手刀を当てられ

「クヌギ……お前はここで大人しくしていろ。

お前まで死ぬ事はないんだ。」



「バネッサ……次にあったら……もう容赦はしない」



…………


…………



「…………もういいか……」


ヴァネッサの力では俺の意識を刈り取るなんて

不可能だ。ヴァネッサの良心を知りたかったが

確実にミカを殺す殺意は確認出来た。



何か事情があるかはもうどうでもいい。

殺そう。全員俺の中にある力で……


両手、両足を金属で縛られている。


「…………」


ドロリと金属が溶け落ちる

「あ……あぁ……」

青年の悲観に暮れた声



両手足に大きな火傷を負いヴァネッサの家を出る

炭と化した自宅



私から貰った力……炎熱。

その力はクヌギ.イシノギでは……

人間では扱えきれる代物では無かった



使えば見境なく燃やし尽くす

好きな場所だけ燃やせるなどといった

都合の良い代物では無かった



あの精霊はどれだけ加減をしていた……?

俺が金属を溶かそうと少し力を込めただけで

ヴァネッサの自宅が一瞬で炭になり


その自宅は今はもう……灰すら残っていない

……加減が……出来無い。解らない



簡単に、この世界を滅ぼしかねない力は……

1人1人殺す事こそが尤も難しい力だった

そして1人の……最愛の女性を護る事には

全く適していない最悪の力だった



本気で使えば被害がどれだけ出るのか……

最悪ミカまでも巻き込みかねない


本気でなくても、この島ぐらいなら楽に沈められる。

 その加減が解らない。

試せる場所も……時間もない



…………


…………


街の一部が騒がしい

人だかりが出来ている。俺がそこに近づくと


野盗のボスが高台に登り叫んでいる


「皆聴いてくれ!俺がいる村が襲われるんだ

冒険者達に……

こんな事は辞めてもらえるように皆からも」


「犯罪者が一端の口を聞くんじゃねぇ!」



「お前達の存在がどれだけ

町民を苦しめたと思ってやがる!」


街の全ての人達に罵声を浴びせられる

しかし野盗……元野盗も怯まない



「そうだ!あんた達を苦しめたのは犯罪者だけだ!

村人は関係ないだろ!?

犯罪者だけにしてやってくれ」



「当たり前じゃねぇか!犯罪者はすぐに死ね!」


「お前らを受け入れた村人も同罪だろうが!?」



観衆の意見が割れる

どちらが正しいのか……どちらも正しいのか

どちらも間違っているのか?誰にも解らない



解る事は……皆自分が正しいと思っている



「…………」

見知った女性が居た。商人の娘だ。

俺に気付くと軽く会釈をし


「あの人は……殺されるべきなんですか?」


「…………」

娘は何も言わない。

ただ俯いて民衆の罵声を聞いている



1人の男が高台に登り

バシュリ 男の首を一刀で斬り伏せる



その間際……動かない筈の片腕が

……確かに動いた気がした



生首に民衆の歓声が上がる

ドス黒い。安全な場所から……

特等席の死を観戦する



「うぅ……こんなハズじゃ……なかったのに……」

商人の娘が両手で顔を覆い、涙を流す


この人達には何か秘密があったんだ

それを知っても俺には何もできない



俺はその場を後にした。

俺はあの男……も商人の娘も……助けられない


きっとミカも……俺の力では助けられない


      無力だ



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