プロローグ
「はい異常無し!そっちはどーですかー?」
元気の良い女性の声で
静かだった森の木々達がざわつく
「んー…… こっちも異常は無いかな。
というか私の仕事は護衛なんだから
探索はミカの仕事だろうに
体格の良い女性の締まった声が響く
ミカと呼ばれた女性が近づくと
「ちゃんとお給料払うんだから
文句言わずに ね」
と満面の笑みを浮かべた
すると間髪入れずに体格の良い女性は
「ちゃんとってお前……1日50ルドンだぞ!
2日も森の中でウロウロして
たったの100ポッチだ
隣町までの護衛でも
半日で100ルドンは払ってくれるよ」
女性は乱暴な口調で詰め寄る
「ご、誤解だよ〜ヴァネッサちゃん
1日50じゃなくて、1回の護衛で50ルドンだから
ヴァネッサちゃんの日給は
今のところ25ルドンだよ
だからパパーっと終わらせちゃおーね」
彼女の笑みは変わらず満面だ
「いっかいごじゅうるどん……」
彼女は青ざめた顔をして
「帰る 1回50じゃ宿代も払えない
私も暇じゃないんでね」
そう言って踵を返し
ミカに背中を向けて歩いていく
すると慌てた様子で
「あ〜待って待って〜ストップ!
てか速いなヴァネッサちゃん
とりあえずストーップ」
大声を出しながら駆け寄ってくる
「……何?」
足を止め無愛想な態度でミカを睨む
「私も もっと払ってあげたいんだけど
村長に貰ったお金が50ルドンだったから……」
ミカは下を向きか細い声で言う
つまりミカはタダで働いていることになる
長い付き合いだ 彼女が足元をみてこの額に
したわけじゃないことは
性格を考えれば、わかることだったのに
ヴァネッサは苦虫を噛み潰した表情をし
「ヴァネッサちゃんには申し訳ないと思ったけど」
言葉はそこで
「わかった いーよ
昔染み料金ってことで今回はそれで」
彼女に遮られた
ミカの表情が明るくなり
「ありがとうー
足りない分はホッペにチューしてあげよう」
と抱きついてキスをしようとしてくる
それを片手で軽くあしらいながら顔を背ける
「あーちょっと待て 向こうで何か……人かな?
人が倒れてるぞ」