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第十話「神々に囲まれて」

あらすじを若干変えてみました。

「えーっと、ここはどこなんだ? ニィ」

「楽園なのです」

「端的に言えば、神々が住まうところね」


 ナナミ、アデル、リリアの三人がこっちの世界に来た日の夜。三人は、どこに寝泊りするつもりなのか? と心配していたが、どうやらニィがすでに用意していた。

 ニィは、聖域という空間だったら簡単に作れる。

 空間を操れることができる神様なので、そういうのに関しては苦ではないのだ。それで、舞香さんや有奈が帰って来てから三人のことを紹介して、一緒に夕飯を食べて、ゲームで遊んだりして、風呂に浸かり、さあ寝よう! てことになって自室に入ったのだが。


 入ってみれば、花園だったり。

 なんだか見覚えのあるような風景だが……まさかな。

 両サイドには、いつの間にかヴィスターラの神様達が立っており、正面には小生意気そうな見た目の少年が白いテーブル白い椅子に座り。

 そして、メイドさんに紅茶を入れてもらっていた。

 しかし、ここが神々が住まう場所ということは、彼も神様なのだろう。


「来たようだな」

「はいなのです。約束通り、威田刃太郎をお連れしたのです」


 紅茶が入っているカップを置き、少年はこちらに近づいてきた。身長は今の俺よりも少し大きいぐらいだろうか。

 まるで王族のような衣服を身に纏い、耳にはピアスをしている。


「初めまして、だな。僕が誰か、わかるか?」

「……地球の神様、ですか?」


 俺の答えに、ふっと小さく笑いそうだ! と叫ぶ。


「僕は、創造神。つまり、地球を創造した神だ」

「名前は、なんていうんですか?」

「名前? そんなもの僕にはない。言っておくが、この姿も本当じゃないんだ。僕は、創造の神。なんでも創造できるし、なんにでもなれる。名前だって、自由に決められる」


 そういうものなんだろうか。俺は神話には詳しくないが、大体の神様って名前があるものだと思い込んでいた。


「それに、こうして人間と対話を試みようって言う物好きな神様なんて僕ぐらいなものだ。周りを見てみろ。僕以外誰もいないだろう? どうしてだかわかるか?」


 花園を見渡しつつ俺は考えた。

 神々が、ここにいない理由ねぇ。単純に考えれば、警戒している。それか、人間と話すようなことなんてないと思っている、かな。

 さっき、創造神も言っていたけどわざわざ俺と対話をしようっていう神様なんて……まあ、別世界だけどいるか。


「やっぱり、俺が人間だから、でしょうか?」

「それもあるが。お前、こっちに来て結構問題を起こしているだろ?」


 おっと、やっぱりその話をしてくるか。だが、これは俺にも言い分ってものがある。


「言っておきますけど、俺が起こしたんじゃなくて。起きたところに俺が遭遇しただけですから」

「でも、あんた結構厄介ごとに首突っ込むじゃん」

「それが性分ってやつなのですよ」

「お前らな……」


 せっかく人がいい具合に逸らそうとしていたのに。


「はあ……。そろそろ種明かしをしていいのではないですか?」


 突然だった。さっきまで黙っていたメイドさんがため息混じりに発言をする。

 どういうことだ?

 俺が傾げていると、メイドさんがパチンと指を擦る。

 すると、体が光に包まれ次に姿を現した時には……。


「久しぶりですね。威田刃太郎」

「グリッド!?」


 ヴィスターラの神々が一柱。グリッドだった。てことは、この創造神は……。

 ギロッと、睨み付けると創造神は、不適に笑み同じく指を擦る。


「よう。久しぶりだな、勇者」

「やっぱり、おっさんかよ。なんで、こんなまどろっこしい真似を……て、わかりきったことか」


 どうせ、退屈だったからとか言い出すに決まってる。

 それにしても、ニィ達の反応を見る限り、こいつらもグルだったようだな。はあ、まさか神様達から集団で騙されるとは。

 こんな体験は、普通じゃできないだろうけど、疲れるなぁもう。


「退屈だったからな。それに、俺の力が衰えていないか。確かめたかったんだ」

「平和になってから、お酒を飲んでぐーたらしていましたからね」


 やっぱり、そうだったか。

 予想していたとはいえ、これで世界を創造した神様だからなぁ。まともな神様は、グリッドしかいないっていうな。

 まあ、神様だから普通じゃないほうが、いいのだろうか……。


「で?」

「ん?」

「本題。早く話してくれないか?」


 オージオがいるってことは、ここはヴィスターラの聖域か。一時的にとはいえヴィスターラに戻ってきちまったな。


「そうよ。あたし眠いんだからねー」

「あなたは、寝ている場合ではないでしょうに。まったく、相変わらず自堕落な毎日を送っているようですね、リフィル」

「良いじゃない。オージオ様は許してくれているんだし」


 とはいえ、グリッドの言葉もわかる。

 いや、グリッドだからこそ言ってもいいことだろう。ニィ、リフィルの二柱が地球で、神々としてではなく普通に満喫している。

 その間、グリッドはヴィスターラでいまだ神々の仕事をしているのだ。


「本来ならば、こんなことは許されないのですが……今は止しましょう。オージオ様。本題へ」

「おうよ。それじゃ、説明するぜ。お前たちにやってもらうのは、異世界交流バトル! 地球とヴィスターラのチームに分かれ数々の試練で勝負をしてもらう。それで、先に三勝したほうの勝ちってわけだ。簡単だろ?」


 確かに、簡単だ。

 でも、それはルールが、簡単なだけだ。


「その試練っていうのは、なにをやるんだよ」


 そう。問題は、試練の内容だ。その試練の内容次第では、どちらかのチームが不利になるかもしれない。

 更に、もうひとつ。


「それに、チーム分けは?」


 ヴィスターラチームは、あの三人は確実だろう。だが、最大何人のチームなのかは話していない。

 地球側のチームは、俺が確実に入るはずだから……最低でも後三人ぐらいとかか?


「あー……その辺に関しては、なんというかな」

「……グリッド」


 苦笑いをするオージオに、俺はジト目で補佐役のグリッドを見る。


「僕を見ないでください。オージオ様の計画性のなさはあなたも理解しているでしょ? 大丈夫です。その辺りは、僕も共に考え早急に準備をしますので」


 メガネの位置を直し、眉を顰めながら答えてくれるグリッド。本当に、大変だなこんな思いつきな神様に仕えて。


「まあいいさ。決まり次第また連絡してくれ。今度は、俺だけじゃなくて参加する皆を呼んでな」

「おうよ。楽しみに待ってろ!」

「期待せずに待ってるよ」


 憎まれ口を叩き、俺はニィの次元ホールで地球へと帰っていく。そこは、誰もいない薄暗いリビング。月明かりで照らされているそこで、俺は思った。


「なあ、あれだけなら別に俺を呼ばなくてもよかったんじゃないか?」


 あれだけのことなら、またニィにでも伝えれば良いだけのこと。その分、ニィが働くことになって大変になるのだが。

 なんていうか、騙されていた時間のほうが長く、肝心な本題はそれほど長くなかった。

 ただ、おっさんに弄ばれていただけのように思えてなんだかなぁって。


「ああ言っていましたが、オージオ様も。それにグリッドも、刃くんに会いたかったのですよ」

「そうなのか?」


 おっさんはともかくとして、グリッドがねぇ。会った時から、いつもポーカーフェイスを絶やさず、一定の距離を取って俺と接していたグリッドが俺にね……。

 それが本当だったとしたら、少しは嬉しいかな。


「わからないわよ? 本当に退屈だったから、あんたをからかうために呼んだのかも……あ、すみません。なんでもないです。だから、その光の縄をこっちに向けるのはやめてください!!」

「まったくもう。……オージオ様もグリッドも、刃くんのことは認めていますし、感謝をしているのです。もちろん、私達も。なにせ、世界を救ってくれた勇者様なのですから!」


 世界を救った勇者様、ね。

 世界を守護する神様からそう言われるなんて、素直に嬉しい気持ちが込み上げてくるな。


「そういうことにしておくさ。それじゃ、もう遅いしさっさと寝るぞ」

「はーい、なのです」

「ふわあ……そんじゃ、おやすみー」


 異世界交流バトルか……もしかすると、今まで一番騒がしくなるかもしれないな。

 色んな意味で。

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