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第七話「異界から来訪者達」

「ふははは!! どうだ! 刃太郎よ!! 以前の我とは違うというのがこれでわかったであろう!!」

「確かに、やるようになったじゃねぇか! どんだけやりこんだんだお前は!!」


 ニィが帰って来てからはや三日。

 俺にとっての嬉しい再会というのは、なかなか起こらない。だが、俺にとって嬉しい再会か。考える限り、もしかするとあいつら、だろうけど。


 こっちではもうすぐ四ヶ月が経とうとしているが、あっちでは一ヶ月ぐらいだろうか。だって、こっちでの四年があっちでは一年。

 つまり単純計算であっちでの一ヶ月は、こっちでの四ヶ月になるわけだ。

 俺にとっては久しぶりの再会になるが、あいつらの場合はそれほどでもない。まあ、再会する相手って言うのがあいつらだったらの場合だが。

 いや、一ヶ月も会わなければ久しぶりになるのか?


 いつその再会があるのか。

 わからないまま、ニィはまた姿を消してしまった。ちょっと出かけてくると言ってまた次元ホールを通ってな。それとすれ違うように、別の次元ホールが出現しそこからロッサが現れた。

 毎度のことながら、俺との勝負を申し込んでくる。

 そこで、やっているのが格ゲー。

 以前は、こいつが初心者であったことと結構俺もやりこんでいた事からボコボコにしてやったのだが。今回は、なかなか苦戦している。

 明らかに、コマンド入力の速度や判断力などが桁違いに上がっている。


「テニスの時も言ったであろう! 我は中途半端は嫌いだと!! 貴様に勝つため、コトミの家で特訓を繰り返していたのだ!!」


 そこは、自分の家じゃないのかよ。

 コトミちゃんの家には、色々と揃っているからなぁ。使用人も数え切れないほどいるし、特訓するならうってつけの場所だろう。


「そうか。努力したわけか……だが! 俺も負けられない! 見よ! ガード崩しからの超必殺技!!」

「なっ!?」


 相手の背後に回りこむと同時にガードを一度崩し、隙を与えずの超必殺技。残り少ないロッサのキャラクターはKOとなった。

 まさか、苦戦する時が来るとは。

 こいつもこっちの娯楽にかなり慣れてきているようだ。俺も気を引き閉めなおさないといけないかもしれないな。

 コントローラーを置き、俺はいつものようにドヤっと勝ち誇る。


「今日も俺の勝ちだな」

「くっ! 途中まで我が押していたというのに……!」

「まあ、いい線行ってたわよ。もうちょっと特訓すれば刃太郎を倒せるんじゃない」

「お前は、どっちの味方なんだよ」

「どっちでしょうねー。ねえ、それよりも協力バトルしましょうよ。顔合わせボーナスがリセットされたからさ」


 俺とロッサが格ゲーでバトルをしている間、リフィルは後ろのソファーでまったりとタブレットでアプリゲームをしていた。

 ここまでぐーたらしているのに、よく太らないものだ。

 俺は、わかったよと言いテーブルに置いてあったスマホを手にする。


「しかし、神も暇なものよ。別世界でこんなにぐーたらしているとは」

「うるさいわね。今までは忙しかったのよ。主に、あんたのせいでね」

「我は我の成すべきことをやったまでだ。はむっ」


 ロッサは休憩とばかりに、どら焼きを……どら焼きを?


「おい、お前なに食ってんだ?」

「どら焼きだ。そこの棚に置いてあった」

「待て。それは俺のだぞ。なに勝手に食ってんだよ」


 しかも、ここから一歩も動いていないということは、次元ホールを使って取ってきたってことか。やっぱりこいつ、どこに何があるのか把握している。


「そうだったか。それはすまないことをしたな」

「とか言いつつ、食べるのを止めないのはなんででしょうね?」

「もう我が食ってしまった。止められぬ」

「まだ半分も残ってる。いいから食うのを止めろ!!」


 いくらでも止められるだろう、と俺は平然とどら焼きを食べているロッサに襲い掛かった。


「うお!? 貴様! 我から奪う気か!?」

「それは俺のだ!!」


 今思えば、どら焼き如きでなに熱くなっているんだと。後に、思うのだが今の俺は大事のとって置き、勝手に食われたことに多少お冠だった。

 小さくなったことで、思考までが幼くなってしまったのか。

 いや、食べ物の恨みは恐ろしいという。

 誰だって怒るだろ? 大事にとって置いたものを、平然と目の前で食べられれば。


「あっ」


 俺がロッサを押し倒した刹那。リフィルが何かに気づいたが、もう遅かった。


「ただいまー! なのです!! 刃くん。お客さんを連れてきたの……おや? お取り込み中だったようですね」


 出かけていたはずのニィが戻ってきた。

 それだけじゃない。

 数人、連れてきている。

 そいつらに、俺は見覚えがある。いや、忘れるはずがない。なにせ、俺がヴィスターラで一緒に旅をした仲間達なのだから。


「じ、刃太郎くん……? なんだか小さくなった?」


 まず、俺の姿に驚いているのは俺と最初に旅に出た魔法使いの少女。

 名前は、ナナミ・フィステル。

 空色の瞳に、薄い紅色のセミロングヘアー。後頭部には、可愛らしく黄色いリボンをつけている。

 彼女は、魔法学院に通う二年生で。中でも大魔法使いにもっとも近いと言われるほどの実力の持ち主。実践、筆記ともに成績優秀。

 容姿も性格もよしと。更に、胸も大きい。俺も最初出会った時、ここまで完璧な存在が本当にいたんだなぁっと思っていた。

 その実力を買われ、学生ながらも俺と一緒に旅をする共として選ばれたのだ。今は、旅も終わって、いつものように学生生活を送っているだろう。

 彼女が羽織っている衣は、俺との旅で手に入れたもので、あらゆる魔法の耐性をもっており見た目のわりに結構防御力がある。


「もしかすると弟さん、という可能性も。いやだけど、感じられる魔力は刃太郎先輩のもの。それに、弟はいなく妹さんがいると話していたから……」


 そして、次にぶつぶつと呟く金髪の貴公子は、アデルト・ラインコード。俺はアデルと呼んでいる。

 貴族のように見えるが、彼は田舎町の生まれなんだ。

 とはいえ、親に大事に育てられ容姿もさることながら貴族とよく間違われる。そんで、なぜ俺のことを先輩と呼んでいるのか。

 それは、アデルが勇者に憧れているから。旅の中でも、ずっと俺の真似事をしたり、勇者の魅力などを語っていたな。年齢は、俺よりも二つ下で十五歳になる。

 男であるが、まだ幼さが残り中世的な顔立ちなので、女装をすれば完璧に女子と間違われることがしばしばあったり。


「そんなことはどうでもいいのです。問題は、刃太郎さんが少女を押し倒し、尚且つ食べ物を奪い取ろうとしている事実です。これは、いけません。エッチです!! 犯罪です!! ロリコンです!! 鬼畜です!!!」


 最後に、俺のことをエッチだの鬼畜だのと罵倒しているシスターの名前は、リリア・フォンティーナ。

 藍色のシスター服を身に纏い、エッチだのなんだのと言っているわりに、ミニスカートでおみ足を晒している少女。

 年齢は、俺よりもひとつ上で十八歳。シスターというとおしとやかで、包容力のある女性を想像するが、こいつは違う。

 なんでもなくバイオレンスなシスターなのだ。ちなみに、貧乳である。

 神々を敬愛しており、特にニィのことが大好きなのだ。


「まあ落ち着けお前達。俺は確かに、刃太郎だ。そして、勘違いしないでくれ。俺はただ俺のどら焼きを返して貰おうとしているだけだ。ちなみにこいつは」

「問答無用です! ニィーテスタ様。このエッチ極まりない罪人に裁きを!!」

「うん。オッケーなのです」


 おい、なぜオッケーを出した!? しかして、リリアはニィーテスタの命令ならば必ず実行する。そう、それはつまり。


「さあ、久しぶりに受けなさい。我がフォンティーナ家が代々受け継いできた!!」

「待ってください! リリアさん!! 刃太郎先輩は無実です! 先ほど言っていたじゃないですか!!」


 オーラを纏い俺に襲い掛かってこようとするリリアだったが、さすが後輩。見事、リリアを止めてくれた。


「くっ! なぜ止めるのです、アデルトさん! この鬼畜ロリコンに天罰をくださないと!!」

「ま、まあまあ。リリアさんも、刃太郎くんに会えて嬉しいんだよね? わかったから、落ち着こうよ」

「騒がしい連中だな。貴様の仲間は」

「そうだな。……とりあえず、どら焼き返せ」


 これ以上騒ぎが起きないように、俺はロッサからどら焼きを奪い返し、離れる。あーあ、半分も食いやがって。

 それにしても、こうも早くこいつらと再会するとはな。

 こんな姿でなければ、もっと嬉しかったんだが。つーか、俺の今の現状をニィは話さずに連れてきたようだな。絶対、面白がってるだろ、ニィめ。

ついに、刃太郎と旅をした仲間達が登場! 次回から、忙しくなりそうです……。

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