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プロローグ

第五章開幕!

「んー!! 今日もいい天気だなぁ」


 九月ももう後半。

 そろそろ十月に入る頃、俺は太陽の日差しを浴びて背伸びをした。ことも三ヶ月ちょっとか。なんだか早いなぁ。

 俺が帰って来てまだ数ヶ月。いや、もう数ヶ月か? この数ヶ月で色々あり過ぎて、地球に帰ってきた感覚がない。

 そりゃそうだ。ファンタジーとはまったく無縁だと思っていた地球で、ファンタジーなことがめちゃくちゃ起こっているわけだからな。


「刃くん。ココアなのです。温まりますよ」

「ああ、ありがとう」

「ニィ~。あたしにもココア~」

「お腹を出していると風邪を引いてしまうのですよ? 今の私達は、人間の体なのですから」


 ソファーでだらけているリフィルに、注意をしつつココアを渡すニィ。ちなみに、舞香さんは朝から友達と遊びに出かけている。

 ニィはこう見えて……いや、こう見えては余計か。まあなんていうか、結構家事ができる。

 そのため、舞香さんへの負担を無くすように進んで料理を作ったり、掃除をしたりと。おかげで、舞香さんも休みの日には気軽に友達と遊べたりできるようになっていた。

 これで、男じゃなければ俺も惚れていたんだろうな。


「どうしたのです? 刃くん」

「いや、なんでも」

「あっ! そうなのです」


 何かを思い出したように、ニィはエプロンを外し俺にこう告げた。


「実は、私一度ヴィスターラに戻らなければならないのです」

「おっさんが呼んでるのか?」

「はいなのです。あっちは平和とはいえ、いつまでも神々が自分の世界を空けているというのはいけないということで。一度戻り、仕事をしてからまた戻ってくるのです」


 戻ってくるんかい。

 あれ? そういえば。


「なあ、そいつは戻らなくていいのか?」


 と、ココアをちびちび飲んでいるリフィルを指差す。


「リフィルは大丈夫なのです。今のところは」


 今のところは、ね。ニィは、笑顔で次元ホールを発現させ小さく手を振る。


「それでは、すぐに戻ってくるのです。ちなみに、お昼はありっちが作ってくれると言っていたのです。ではでは~」


 ニィが去った後、俺は何をするでなくリフィルの隣に座りテレビを点けた。

 しばらく、テレビを眺めていると。


「ん」

「おう」


 リフィルがポッキーを一本俺に渡してくる。俺は、それを受け取りぽりぽりと食べ、ココアを一口。


「ねえ」

「なんだ?」

「実はさ、イベントが今日の十六時で終わっちゃうんだけど。まだ最後のミッションクリアしてないの。手伝ってくれる? 今日、アルバイト休みでしょ?」


 タブレットを取り出すリフィル。そういえば、俺もまだ終わっていなかったな。そっか、今日の十六時までだったなイベント。

 断る理由もないし。


「別にいいぞ。あっ、だけどちょっと待った。先にトイレに行かせてくれ」

「いってらー」


 さっさと用を足して、イベントを周回するとしよう。そう思い、トイレに入った瞬間だった。


「え?」


 体が突如として発光。

 そして。


「うわあああ!?」


 爆発した。ダメージを負わせるような爆発ではなく、ただ単純に光が広がっただけのようなもの。


「ちょっと、どうしたの?」


 さすがにリフィルも心配になったらしくトイレの前までやってきた。俺は、目を開け何が起こったのかと状況確認をする。

 ……視線が低い。

 俺は一瞬にして、状況を把握した。用を足し、静かにトイレから出るとリフィルは驚愕。


「ぷふっ! あはははは!! なによそれ!」


 からの大爆笑。

 その場にしゃがみ込み、俺の頭を乱暴に撫でるリフィルに俺は抵抗することなく苦笑するしかなかった。


「なんでこうなった」


 縮んでしまった。体が縮んでしまったのだ。俺の見立てでは、十代前半ぐらいだろう。おそらく、コトミちゃん達と同じぐらい。

 声も幼くなっており、異世界で鍛え上げた筋肉も大分なくなっている。


「ポッキー食べる? ねえ? 食べる、ぼく」

「おいジャージ神。これはどうなってるんだ? 原因とお前だったらわかるだろ」


 突き出すポッキーを齧り、俺はリフィルにどうしてこうなったのかを問いかけた。だが、リフィルはそうねぇっと少し考える素振りを見せた後。


「まったく検討もつかないわ!!」


 ドヤ顔である。


「お前って本当に駄目な神様だな。はあ……ニィが帰って来るのを待つしかないのかこれ」


 その間に、自然と戻ってくれれば良いんだけど。このままじゃ、アルバイトもできないし。外だって自由に動けない。

 子供だから、行く場所だって制限される。

 あまり夜遅く出ることなんてないけど、確実に警察に目をつけられるだろう。


「まあ、考えてもしょうがないわよ。そんなことよりも、体が小さくなっても記憶はそのままなんでしょ? さっさと手を洗ってイベントやるわよ!!」

「……おう」


 本当にどうしてこうなったのか。

 まさか、魔力暴走? いや、魔力暴走で体が縮むなんて聞いたことがない。だが、あの発光に爆発……俺の体に何かしらの原因が起こったのは確実。

 まあ、原因がなければこうはならないしな。


「ただいまぁ」


 有奈が帰ってきた。

 時計をふと見ると十二時ちょっと前だった。もうこんな時間か。大分周回できたし、これなら昼休憩を挟んでも余裕だな。

 イベントのほうは余裕だが、現実のほうは余裕じゃない。

 このことを有奈にどう説明すればいいか。


「お邪魔しまーす!!」

「お邪魔します」


 なんということだ。このタイミングでリリーと華燐まで来てしまった。


「あれ? リフィルさん。お兄ちゃんは……その子誰ですか?」


 さすがに後ろ姿では見分けがつかないか。隣でぷふっと笑っているリフィルを放っておき俺はよおっと振り向いた。


「え!? も、もしかしてお兄ちゃん?」

「さすが俺の妹。その通り、お前のお兄ちゃんです。縮んじゃってるけど」


 食材を買った袋を持ったまま有奈は驚きつつも、俺のことを一発でわかってくれた。小さい頃の俺を知っている有奈だからこその答えだ。


「あれ? 刃太郎さんは?」

「靴はあったみたいだけど。出かけてるの?」

「あ、いや。二人とも、ここ。ここだ」


 後からやってきた二人にも、俺は自分が刃太郎だと言うことを伝えた。最初は、言葉も出ないという状態だったが、すぐ有奈へと視線を向ける。


「ほ、本当なの!? 有奈!!」

「う、うん。なんだか縮んじゃってるけどお兄ちゃん、だよ」

「何があったんですか?」

「俺にもわからない。突然体が光だしたと思ったら、こうなってた」

「これは事件ですね!!」

「せめて玄関から入ってきてくださいよサシャーナさん。他の人に見つかったらどうするつもりですか」


 突如として、ベランダ方向から現れたサシャーナさん。今回はどうやら一人のようだ。

 丁寧に、靴を脱ぎゆっくりと俺に近づいてくる。

 じっと俺のことを見詰めた後、ぎゅっと抱き寄せた。


「これは事件です! 刃太郎様が可愛くなってしまいました!!」

「なぜ抱きしめるんですか」

「おっと、これは失礼しました! ですが、今まで色んなことに巻き込まれてきた刃太郎さんですが。まさか体が縮んでしまうとは……これまた奇怪ですね」


 正直、ヴィスターラで体が女になったことなら一度あったけど縮んだのは初体験だ。あの時は、敵の魔法により換えられたんだが。

 今回に限ってはそんなことはない。

 いきなりだ。いきなり、体が縮んだからなぁ。


「と、とりあえず私は昼食を作るね」

「あ、あたしも手伝うよ!」

「私も。そのために来たんだから。まずは、野菜を洗っておくね」

「では、私は刃太郎くんと遊んでます!!」

「くんって……」


 まあ、サシャーナさんは料理できないし。選択としては間違ってはいないけど。有奈達が料理をしている間、俺は料理できない二人とイベントの周回をしていたとさ。

見た目はなんちゃら! みたいな感じになりましたが、ご安心ください。ちゃんと戻ります。

いきなり推理もの路線にはいきませんので。

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