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第十七話「いざ観光」

「……いい朝だな」

「……あぁ、そうだな」


 温泉旅行二日目。

 一日目は、温泉に入って旅館料理を食べて、明日に備えてゆっくり休もう! てことになったんだが。現実はそんなに甘くなかった。

 珍しく光太は、俺の言葉に同意している。窓から差し込む太陽の日差しが、とても眩しい。


 俺達はチラッと部屋を見渡す。

 ここは、本当ならば俺達男子の部屋となっている。だが、そこには一緒に旅行に来ていた有奈を初めとした女子達が全員寝転がっている。

 ある者は服乱れ、ある者は満足気に眠っている。

 部屋は、お菓子や飲み物の空などが転がっており、用意した布団や枕が散乱していた。


「今は普通の人間なのによく生き残ったな、お前」

「なめるな。俺はバルトロッサ様の部下だ。……お前こそ、一人でよくあれだけの女子の相手をして生き残ったな。さすが勇者だって褒めてやるよ。今はな」

「おう」


 何があったのか。説明すると、元気が有り余っていたロリ組みが俺達男子の部屋にまず枕を両手に突撃してきた。

 どこで吹き込まれたのか。旅館で泊まるのなら枕投げはしておかないと。そんなことを言いながら、先制とばかりに光太の顔面目掛けシュート。

 それから仕方なく相手をしていた俺達。

 そこへ止めに来てくれたはずの有奈達もなんだかんだで加わって。もう満足しただろうと思っていたのだが、今日は騒ぐわよー! と誰が飲ませたのか酔っ払った舞香さんがサシャーナさんとリフィルを連れて参加。

 あぁ、これは収集がつかないってことで、今に至る。なので、俺はほとんど寝ていない。いや、全然と言ったほうがいいか。


「これが、こっちの世界のパーティーなのですね。とても楽しかったのです」

「お前も悪乗りしてないで止めてくれよ……」


 浴衣が肌蹴た状態でむくりと起き上がったニィに俺は切実に告げた。それと、あっちのパーティーと比べたら今回のなんてそこまででもないだろ。

 あっちでは酔っ払った魔法使いが魔法をぶっ放したり、普通に剣を振り回したりとかあったからな。


「刃太郎様、光太様。朝食までまだしばらく時間があります。少しでもお休みになられては如何ですか?」


 と、一足先に朝食の準備の手伝いに行っていた駿さんが俺達に優しい言葉をかけてくれる。現在の時刻は六時ちょっと過ぎ。

 朝食の時間は確か八時辺りだったかな。

 確かに二時間ぐらいは時間がある。


「俺は、大丈夫ですよ。寝ずに戦っていたことなんて結構ありましたから。一日寝ない程度なんてことありませんよ」

「俺もだ。っと、言いたいところだが仕事明けであれだけ騒いだんだ。さすがに眠い。もうちょっと寝かせて貰うぞ」

「はい。それでは、朝食時にまた」


 駿さんも結構相手をしていたのに、余裕そうだな。さて、朝食時になる前にここで眠っている女子達を起こすとするか。

 着替えとかそういうのもあるだろうし。男子と比べて女子の準備は時間がかかるからな。


「というわけで、ニィ。お前も皆を起こすのを手伝ってくれよ」

「了解なのです」






・・・★・・・






 そして、朝食を食べ終えて、俺達は観光へと赴いていた。

 空は快晴。

 太陽はぎらぎらと輝いており、心地いい風が吹いている。これは、絶好の観光日和だ! と言いたいところだが。


「うーん。なんだか、休むはずがドッと疲れた感じがする……」

「あ、あたしも。やっぱり、昨日のあれがだめだったのかなぁ」

「だから、無茶しちゃだめだって言ったのに」

「あたたたっ。なんだか頭が痛いわね……二日酔いかしら」


 ご覧の通り、昨日の騒ぎで若干疲労が残っている人達が多数。

 まあ、全然平気そうな子達がいるんだけど。


「うむ。最初はこれを食べるとしようか」

「私はこれがいいなぁ」

「僕はこれかな」

「私は、これ」


 情報雑誌やパンフレットなどを食いつくように眺め、どこへ行こうか考えていた。特に騒いでいたロッサとコトミちゃんにコヨミ。

 この三人の体力は底なしなのか。まあ、この三人は普通じゃないからな。コヨミに限っては、コトミちゃんの分身体という生み出された体。

 コトミちゃん本人が疲れていなければ、いつでも新しい体を得られる。寝ている時も、コトミちゃんの中で寝ていたようだし。


「ほい」


 すでに、温泉饅頭を買って歩きながら食べていたニィは指先に光を灯し、舞香さんの頭目掛け円を描いた。


「あっ、痛くない」


 すると、見事に頭痛はなくなってしまった。


「これで、思う存分観光ができるのですよ」

「ありがとうね、ニィちゃん」

「良いのです。いつもお世話になっているお礼なのです。更に!」


 続いて、有奈とリリーへにも円を描いた。ちなみに神力は、力のある者でもそう簡単には見えない代物だ。

 周りからは、美少女が可愛らしい行動をとっている、ぐらいにしか見えていないだろうな。


「す、すごい。体が軽くなった!」

「これで、思いっきり観光できるー!」


 これで、疲労が溜まっていた者達は全員。……全員? 俺は、少し離れたところに居た光太を見る。明らかにニィを避けている。

 昨日あれだけのことをされたらそりゃそうだろうな。


「光太くんもどうです?」

「い、いらん! 俺はこれぐらい大丈夫だ!!」

「我慢は毒なのですよー。いつでも私に言えば疲労を吹き飛ばしてあげるのです」


 さすがに、あいつのことが可哀想に思えてきたのでニィにはほどほどにしておけと注意しておくか。さて、どこへ行こうかな。


「店主よ! この羊羹を二つ買うぞ!!」

「じゃあ、私は三つ!」


 ロッサ達は、すでに色々と買っているようだ。あいつらの場合、ほとんどが食べ物になるそうだな。俺達は、食べ物以外にも買いたいところだな。

 でも、やっぱり土産って言ったら食べ物のほうが喜ばれるんだろうか。

 じいちゃんとばあちゃんは、なんでも喜びそうだけど。土産は、慎重に選ばなければならない。まあ、そこは観光をしながらにしようかな。


「うーん! いい眺めね」

「ああ。綺麗な海だ」

「ここから船であっちの島にいけるらしいよ。後で行ってみようよ!!」


 綺麗な海を眺めていると、長い髪の毛の男が近づいてきた。その男は、スーツを着込んでおり華燐へと話しかける。


「久しぶりだな、華燐」

「あ、秋明さん。お久しぶりです」


 どうやら、華燐も彼のことを知っているようだ。


「お友達か?」

「はい。あ、この人は同じ霊能力者仲間の」

「秋明だ。……ん?」


 秋明と名乗った男は、俺とニィ、珍しくついて来たリフィルを見て驚愕した表情になる。


「どうかしたのですか?」

「なにじろじろ見てんのよ」


 なんてガラの悪い神様だ。


「い、いや失礼した。あ、そうだ。華燐。隆造さん達とは会ったか? 今は、休憩中で三人とも観光しているはずだ」

「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」

「ああ。では、俺はこれで」


 なんだったんだろうかさっきの反応は。同じ霊能力者で、当主なわけだから俺達が只者ではないということを見抜いた反応、と考えるのが普通だが。

 秋明が去った後、俺は華燐に質問をしてみた。


「なあ、華燐。さっきの人って、どんな人なんだ?」

「そうですね。フリーの霊能力者で、鳳堂家で一年半修行をしていた人、でしょうか。とても優秀な人で、一ヶ月も先に入った門下生達をあっという間に追い抜いたんです」

「そんな人がここで、なにをしているの?」

「お父さんやお姉ちゃん達と、ここで広まっている邪気を祓っているんだよ。秋明さんが、ここにいることを知ったお父さんが彼を誘ったって聞いてる」


 なるほどな。鳳堂で修行をして、今はフリーの霊能力者。確かに、かなりの力があるのは俺達を見た時にわかった。

 あの驚きようは普通じゃなかったからな。


「そういえば、さっき華燐ちゃんのお父さん達が観光しているって言ってたわね。ご挨拶も兼ねて探してみない?」

「え? でも、それじゃ観光が」

「探しながら観光すればいいんじゃない?」

「あっちも観光しているみたいだしね」


 こっちも観光していれば、いずれどこかでばったりってことか。俺は、華燐の肩に手を置きうんっと首を縦に降る。


「それじゃ、観光再開だ。おーい!! お前達!! あんまり離れるなよ!!」

「心配するな! 我がついているのだ! 迷子になどいらぬわ!」


 俺達が話している間も、土産屋を転々としていたロッサ、コトミちゃん、コヨミ、クロの四人。心配するなって、お前が一番心配なんだよ。何を仕出かすかわからないからな。

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