第十五話「今日も平和だ」
祝連載二ヶ月! まあ、長く書いている方々にとってはまだ二ヶ月だろ! ですけど。
そして! なんとかスピンオフを書き上げ同時に投稿することができました……。
なんていうか、短編でありスピンオフなので色々端折っていたり、ノリで書いた部分が多いと思いますが楽しんで読んで頂けると嬉しいです!
あ、それとスタイリッシュ警備員。人生初めてのレビューをいただきました! いやぁ、まさかこんな日が来るとは。これで、より一層執筆に力が入るというものです!
温泉地としてはかなり有名なところへと到着した俺達。
海も近くて、海水浴もできるいい場所だ。
そんなところにある旅館。そこは天宮家が経営しているところで、俺達は今日からそこに三日間泊まることになる。
部屋分けは、俺と駿さん、光太、ついでにニィの男子組みで一部屋。後は、有奈、リリー、華燐、舞香さんで一部屋。残りは、ロッサ、コトミちゃん、クロ、コヨミにサシャーナさんで一部屋だ。
え? なんか一人足りなくないかって? あぁ、あいつね。ジャージ神ね。
あいつは、自ら聖域への扉を作ってそこで眠るってよ。本来だったら有奈達のいる部屋だったのだが、本人曰く。
「あたしは一人がいいのよ!!」
とのことで。天宮が経営しているとはいえ、リフィル一人のために部屋を空けるのは他のお客様にも失礼だと思い、聖域で寝てろと言ったらその手があったか! とこうなったわけだ。
一応、リフィルもこの宿に泊まっていることにはなっているから問題はない。
「それじゃ、荷物を置いたらさっそく温泉にでも行くか」
「刃くんと温泉なのです~」
「おいちょっと待て。もう一回聞くが、そいつは本当に男! なんだろうな?」
荷物を置き、着替えとタオルを用意したところで光太が問いかけてくる。これは、宿に入った時も何度か聞かれたことだ。
その時から、何度も言っているのだが、やはり簡単には信用してくれないようで。
「ああ、マジで男だ」
「証拠でも見ますか?」
とスカートを捲るのでやめいっと頭を軽く叩く。
「くっ! マジで男だと理解しようとしても、女だと思っちまう! 見た目も、声もまるっきり女じゃねぇか!!」」
「仕方ないことなんだ。そう見えるように、創造神のおっさんが創造したんだからな」
「可愛いって罪なのです……」
そうだね、その可愛さであっちの世界でもこっちの世界でも大暴れしてますね、あなたは。
「お、俺は後で入る。お前達が先に入れ」
「初心なのですねぇ、光太くんって」
「う、うっせぇ!!」
「まあまあ。光太様がそう仰るのなら、私どもだけでも先に失礼致しましょう。丁度、今は、誰も入っていないそうなので、広々と温泉に浸かれるはずですよ」
おぉ、それはいいことを聞いた。
それに、正直こいつが一緒だと本当に色々と大変だからな。俺達の他に人がいないのは、嬉しい限りだ。
「おい! 刃太郎! 何をしている! 早く温泉に行くぞ!!」
そんな時だった。スパーン! と勢いよく襖を開けて姿を現したのはロッサだった。
「いや、お前は女風呂だから、俺とは違うだろ。大人しくコトミちゃん達と行け」
「む? ……おぉ、そうであったな」
こいつ、自分が女だってこと忘れていたんじゃないだろうな。このまま指摘していなければ、確実に男風呂に来ていただろう。
しかし、こいつの見た目的に小学生低学年と間違われてもおかしくはないので一応は大丈夫だろうけど。いや、ぎりぎりアウトか?
「ば、バルトロッサ様大丈夫ですか? 女子と一緒だなんて……」
「心配はいらぬ。生前は、女と共によく風呂に入っていたものよ。女の裸などすでに見慣れておるわ!」
それに、自分の体も今ではその女子だからな。こいつ、普段どうやって風呂に入って、体を洗っているんだ?
「ロッサー!! 早く行こうよー!!」
「うむ! 今行く!! ではな。光太も、今の内に英気を養っておくがいい」
さすがは魔帝様。部下への配慮を忘れない。
俺達と入る気満々だったロッサは、コトミちゃんに呼ばれてそのまま駆けていく。俺達も、追うように部屋から出るが。
「結局お前もついてくるんだな」
「ふん。勘違いするな。俺は、バルトロッサ様の命に従っているだけだ」
先ほどまで、後で入ると言っていた光太はなぜか着替えやタオルを用意してついてきている。
それでも、ニィからは距離を取っていた。
男湯に到着し脱衣所で、服を脱いでいる時もすごくそわそわしている。
「ふんふんふふ~ん」
「見せ付けるように脱がないでくれますかね」
「あ、ばれちゃったのです」
脱衣所では、俺とニィが隣同士で駿さんと光太がその背後で服を脱いでいる。俺も極力ニィのほうは見ないで脱いでいる。
そして、俺は全てを脱ぎ捨てタオルを手に取ったところでニィを見る。
「準備完了なのです」
そこには、胸元から股までタオルで隠しているニィの姿あった。こうして見ると、マジで男なのか? と首を傾げてしまうが残念ながら男なんだ。
「興奮しました?」
「しねぇよ。たく、わざとだろその隠し方」
「日ごろの習慣というものなのです。も、もし刃くんが見たいと言うのなら見せても……」
「いいです」
と、恥らっているニィを放っておいて俺は温泉へと真っ直ぐ向かっていく。
「あーん。置いていかないで欲しいのですー!」
「ニィ様。走ると転びますよ」
その後を必死に追ってくるニィ。すでに先へと行っていた光太は、一瞬こっちを見たがすぐに視線を戻し体を洗い始める。
「おー。本当に誰もいないな」
「広々として爽快なのです」
「貸しきり状態ですね」
どうやら露天風呂もあるらしい。体を洗って、さっそく行ってみるとするか。早く温泉に入りたい気持ちで、体を早々に、それでいて丁寧に洗い、最後に頭を豪快に洗っていく。
もちろんニィのことは見ないようにして。
男だとわかっていても、体つきが明らかに女子なのだ。本当になんだよ、あの腰つきは。男子なら男子でもうちょっと筋肉質な体つきをだな……と思うだろうが仕方ない。
あの創造神のおっさんがそう創造したのだから。
「ふいぃ……」
星空を見上げながらの露天風呂。
なかなかいいじゃないか。
あっちの世界では、旅の途中だと水浴びとかが多かったからなぁ。それに、魔物が襲ってくる恐れもあったからこんなに外でのびのびとはできなかった。
いつも襲われてもいいように、警戒しながらだったもんなぁ。
「夜空が綺麗なのです」
「そうですねぇ」
駿さんもニィも露天風呂へとやってきたようだ。右側が駿さんで、左側がニィだ。光太は……女子風呂付近で少し距離がある。
そういえば、あの竹で出来た壁の向こうは女子風呂だったな。
今頃、有奈達も温泉にゆっくり浸かっている頃なんだろう。
「光太様。そんなところにいないでこっちに来ては如何ですか?」
「い、いいんだよ。俺はここで!」
やはり、ニィがいるからだろうか。それとも俺がいるからだろうか。光太はその場からこっちに来る気配がない。
と、そんな光太へニィはからかうように。
「もしかして、光太さん。後ろにある女子風呂の会話を聞こうとしているのですか?」
「なっ!?」
光太の背後には女子風呂がある。ちょっと距離はあるとはいえ、耳のいい奴が耳を澄ませば、聞こえるんじゃないか?
意地でもこっちに来ようとしないのでニィは、いつもの悪い癖で光太をからかっている。
「やっぱり光太くんも男の子なのはわかっているのです。でも、女子風呂に聞き耳を立てるのはいけないことなのですよ?」
「ち、ちげぇよ! 俺は、そんなことしねぇ!!」
「おお!! なかなか爽快ではないか!!」
「ハッ!?」
そんな時だった。ロッサの馬鹿でかい声が響く。先ほどまで、否定していた光太であったがロッサの声が聞こえたと思いきや女子風呂へと思わず視線を向けてしまう。
おいおい、それじゃニィが調子付くぞ。
チラッとニィを見ると案の定にっこりと満面の笑みを浮かべていた。
「やっぱり」
「こ、これは違うぞ! お、俺はバルトロッサ様が心配でだな!」
気づいた時にはもう遅かった。温泉に浸かったまま光太へとにじり寄るニィ。まるで、泳いでいるようにスーっと。
「よ、寄るな! こっちに寄るなあああッ!?」
……今日も平和だなぁ。
次回は、女子風呂回です。




