第八話「お泊りしよう」
活動報告にも書きましたが、一応こっちにも。
この作品もそろそろ連載して二ヶ月が経とうとしています。それを記念して、何か新作かスピンオフを短編として投稿しようかと考えました。
書き上げ次第、投稿しようと思うので。その時は、よろしくお願いします。
「刃太郎お兄ちゃーん!!」
「うおっ!? はは、相変わらず元気だなコトミちゃん。コヨミも元気にしているか?」
「もちろんだよ」
アルバイトが終わり、俺はサシャーナさんと共に天宮家に訪れていた。先日、コトミちゃんが俺に会いたいと言っているので来ないかと電話があった。
明日は、アルバイトも休みだし、コトミちゃんも明日は学校が休みなのだ。
ならば、お泊りをしないかと。
もちろん。
「有奈お姉ちゃんも!」
「うん。今日は、よろしくね」
有奈もお呼ばれされていた。着替えなどを詰めた小さなバックを手に持ち、俺の後ろから姿を現す。
「それではさっそく!!」
「さっそく?」
現れたサシャーナさんが有奈の手を取った。そして、コトミちゃんとコヨミも何をするのかを知っているかのように隣へ。
「お着替えでーす!!」
「えええ!?」
「ゴー!」
「それじゃあね」
有奈をつれて部屋から出て行ってしまう。
取り残された俺は、隣に居る駿さんと他愛のない会話をして時間を潰すことに。
「その後、コトミちゃん達はどうですか?」
「ええ。仲良くしていますよ。学校に行く時は、時々意識を入れ替えて登校していたりすることも」
「ばれたりはしないんですか? あの二人だと性格が違いすぎると思うんですが」
コトミちゃんは、天真爛漫な元気っ子。それに対して、コヨミはちょっと大人っぽい雰囲気のある子だ。姿がコトミちゃんだとしても、周りの友達達はどういう反応をしているのだろうか?
「大丈夫ですよ。ああ見えて、コヨミ様はとても演技がお上手なので」
「そうなんですか。ところで、コトミちゃん達は何をしに行ったんですか? 着替えって言ってましたけど」
「さあ。それは私もお聞きしておりませんので。でも、とても素晴らしいことだと思いますよ」
そう言って、なぜかデジカメと映像用のカメラを用意する駿さん。
「なにしてるんすか?」
「撮影の準備です」
「なにをするか聞いていないんですよね?」
「聞いてはおりませんが。予想はできます。お? どうやら帰ってきたようですよ」
カメラの設置を終えると、それと同時に複数の足音が近づいてくる。
「ほら! 有奈お姉ちゃん早く!」
「で、でも」
「恥ずかしがることはないよ。すごく似合ってるよ」
どうやら、有奈は恥ずかしがってなかなかこっちに来てくれないようだ。恥ずかしがるほどの衣装を今、有奈が身に纏っているのか?
いったいどんなものを着ているというんだ。
期待に胸躍らせながら待つこと十五秒ほど。
「どもー! やっと有奈様が大人しくなってくれました!」
まず現れたのはサシャーナさん。
いったい何を着ているかと思ったら、いつも着ている白色が目立つ洋服が、今回は黒がメインなゴスロリになっている。
「黒ウサギです!! どうですか?」
「うん。すごく似合ってます。ですよね、駿さん」
「ええ。では、一枚」
「いえーす!!」
駿さんが笑顔で一枚記念にシャッターを切る。サシャーナさんはノリノリでカメラに向かって、ピースをした。
「次は、僕達三人だよ」
「どう? 似合ってるよね!」
「うぅ、恥ずかしい。なんでへそだしなの」
「水着となんら変わりませんよ!!」
次に出てきたのは、有奈とコトミちゃん、コヨミの三人だ。へそだしのメイド服と言ったところか。コトミちゃんが赤でコヨミが黄色。有奈が青が目立つ。
それに、コトミちゃん達は耳も尻尾も出しているということで、有奈は合わせるように猫耳と尻尾をつけていた。
「いやぁ、いいですねぇ」
「そうですね」
「しっかり撮影しませんと、卓哉様に叱られてしまいます」
「あぁ、やっぱりそういうことだったんですね」
どうしてここまで撮影機具が充実しているのかと思ったら、卓哉さんが関わっていたらしい。まあ、コトミちゃんやコヨミが着替えるんだ。
あの人が黙ってはいないだろう。
でも、何をするか聞かされていないのに、どうしてここまで用意できたのか。元々ここにあったってことなのか?
「もう涼しくなる時期です! 今の内に夏服などを着てしまおう! とそういうあれです」
「だからって、どうしていきなりへそだしなんですか!?」
「有奈様。その巨乳はとても貴重です。出していきましょう」
「嫌です! というか、今は胸のことじゃなくて。あいや胸も恥ずかしいんですけど!」
確かに、メイド服にあるまじき露出度。
これは、水着となんら変わらない。こんなものいったいどこに売っているというんだ。特注品か? それともネットで販売しているとか?
「それじゃ、次の衣装へゴー!」
「ほら、有奈。こっちだよ」
「つ、次は恥ずかしいのはだめだよ?」
恥ずかしい思いをしているというのに、それでも付き合ってくれる。さすが有奈だ。優しい子だ……それにしても、水着の時も思ったが。
我が妹ながら、すごい巨乳だ。
お兄ちゃんは思わず興奮してしまうところだった。だが、それは自重すべきところ。兄が妹で興奮するなどあってはならない。
「じゃーん!」
「次は、ワンピースで固めてみました! シンプルだからこそ良い! ノースリーブなので、脇や背中が男性に馬鹿受け!!」
「そう言われると恥ずかしくなるからやめてください!」
次は、皆ノースリーブのワンピースで統一してきた。
確かに、女性の脇と晒されている背中というのはエロさを感じる。しかも、生地が薄いから水とかに濡れたら……そう考えるとワンピースってすごくエロい服なのか?
「続いて! 小さいお友達から大きいお友達まで大人気スクール水着!!」
「学校のだよー!」
「僕は、白いスクール水着だね」
「ちょ、ちょっと胸がきつい……これ、小さくないですか?」
「いえいえ。私と同じサイズですよ。やっぱり、それできついということは、有奈さんのバストサイズは八十」
「なに言おうとしているんですかー!?」
「いやん。冗談ですよー」
スクール水着。これは、確かにいいものだ。先ほどのワンピース同様夏にはぴったりなもの。くっきりとわかる体の線。
股関節への食い込みや、胸を強調させる作り。
これを開発した人は、マジで天才だよな。
その後も、ファッションショーは続きようやく解放された有奈はどっと疲れが襲いウサギのぬいぐるみを抱きしめながらその場に倒れこむ。
「つ、疲れたぁ」
「お疲れ様。色んな有奈が見れて俺は大満足だったぞ」
「言わないで……思い出すとお兄ちゃんの顔見れなくなっちゃうから……」
気恥ずかしそうに、ウサギのぬいぐるみで顔を隠す有奈。
「特に暴走族の格好はお前もノリノリだったな! もしかして、この前のニィが造った分身の真似をしていたのか?」
「まあね。……とはいえ、もう不良とかそういうのやらなくてもいいかなって」
「そうだぞ。昔みたいに、仲良くやっていこうぜ? 試しに、俺に抱きついて来い!!」
「む、無理だよ。そんなの恥ずかしいから……」
やっぱりその辺りは、しっかり大人になっているようだな。でも、それでも有奈とはこれからも兄妹仲良くやっていきたい。
前の関係は無理でも、今の俺達でこれから。
「いやぁ、調子に乗って衣装を出しすぎましたね」
「そうだよサシャーナ。片付けないとお母さんに怒られちゃうよ」
「あ、それじゃ私も手伝います」
ざっと数えても二十着以上は出していたもんな。一人だったらともかく四人同時だから余計に衣装の量が増えてしまう。
駿さんは、さっそく映像の編集に取り掛かっているようだし。
大変そうだから俺も手伝うかな。
「刃太郎」
「ん? どうした、コヨミ」
有奈に続き、俺も衣装の片付けを手伝おうとするもコヨミが俺の隣に座り込む。上げかけた腰を下ろし、彼女の言葉に耳を傾けた。
「実はね。最近なんだけど、なんだか邪気が増えてきているように思えるんだ」
「邪気が?」
その言葉から、俺はあの悪鬼のことを思い出す。
「僕は、邪気とかそういう悪の力に敏感なんだ。だから、最近は尻尾がざわざわって毛だって仕方ないんだ。刃太郎。なにか知ってる?」
そう言ってなぜか俺の膝の上に座ってくるコヨミ。この子、こんなに甘えん坊だったかな。
が、あまり俺は気にせずに鳳堂家であったことを軽く説明した。
「だから、おそらくそいつらが関係あるのかもしれないな」
「なるほどね。悪鬼、か。あれから僕も何かと自分で動き回って情報を集めていたけど。そんな奴らが居たなんてね。でも、君から見てそいつらはコトミよりは弱いんだよね?」
「ああ」
「それなら、安心かな。もし襲われたとしても、今のコトミなら。それに僕もいるしね」
「それもそうか」
なぜか自然と頭を撫でてしまう。コヨミもコヨミで、嫌がることなく気持ちいいのか尻尾や耳を動かしている。
「あー! コヨミ! ずるいよ! サボって何をしてるかと思ったら!」
「ふふ。ごめんね。ほら、半分分けてあげる」
「いや、分けてあげるって」
俺の了承は?
「よいしょー!」
俺の了承はなくていいってことっすか。
「二人とも。お兄ちゃんが限界に来たらちゃんと退いてあげるんだよ?」
「「はーい」」
ごめんな、有奈。俺も手伝ってやりたいんだが。幼女二人に拘束されてしまった。下手に動いても、この子達は離してはくれないだろう。
しかし、あの悪鬼が倒れたことで他の悪鬼達も動き出したのか? そうだとしたら、華燐達にも知らせておかないとな。
華燐達のことだから、気づいてはいるだろうけど。
「嬉しいでしょ? 美少女二人に囲まれて」
「囲まれてるって言うよりも、座られているんだけどな」
「ねえ、刃太郎お兄ちゃん。今日は、なにして遊ぶ? 最近のお気に入りは、魔力玉合戦なんだ!」
また物騒な遊びがお気に入りになったものだな、この子は。




