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第六話「悪鬼粉砕」

「いかん! あの封印を解いてはいかん!!」

「あのね、おばあちゃん。だからさっきから言ってるけど。その封印が後五十分ぐらいで解けそうなの」


 悪鬼が封じられているという場所へと移動途中に、華燐のおばあさんに遭遇した。俺達が、封印の間へと行くのを阻止しているのだ。


「ならんぞ! それにそこの二人は何者だ! なぜリフィル様をそのような恥ずかしい縛り方で拘束している! よもや、悪鬼を解き放ちこの世界を滅ぼそうとしている一味ではなかろうな!」

「おばあちゃん。この人達は違うの。ほら、この前話した刃太郎さんだよ。それに、その隣にいるのはリフィル様と同じ神様なの」

「なに?」


 華燐のおばあさんは、視線を俺達に向ける。

 そして、目を見開いた。

 おそらく、ニィの頭にある光輪を見てのことだろう。これが見えるってことは、この人もやっぱり結構の力の持ち主ということ。


「おぉ……なんという奇跡! 神が二柱も!!」

「このお馬鹿さんがこちらで迷惑をかけた分、わたし達がお詫びをしようと思っているのです。鳳堂家を苦しめてきたきた悪鬼。それをこの刃くんが倒してくれるのですよ」

「なに? その小僧が?」


 どうにも信じてもらえていないようだ。まあ、いきなり出てきてなにを言っているんだって思っているのかもしれないが。

 俺も、その悪鬼という奴がどんな奴でどんな力を持っているのかまだわかっていない。

 だから、絶対倒せるって保障はない。


「この馬鹿の知り合いとして、お詫びをさせてください。俺に倒せる相手かは、会ってみないことにはわかりませんが」

「刃くんなら大丈夫なのです。だって、仮にも世界を救った勇者、なのですから」

「勇者ですか?」

「そうよ。ムカつくけど。こいつは、あたし達の世界を救ってくれた勇者。その強さはあたし達が保障するわ。ねえ、というか早く解いてよ! 周りの視線が痛くて死んじゃいそうなんですけど!! このままだと変態趣味のある神様だって思われちゃうんですけど!!」


 仕方ないのですねぇ、と必死に訴えてくるリフィルに応じて縄を解いていく。やっと解放されたリフィルは一息つく。

 そもそも、普通の人には神様だって思われないだろうな。

 ジャージを来た神様とか普通はいないだろうし。


「神々がそこまで言う小僧なのか……わかった。刃太郎と言ったな? お主の実力。この目でしかと確かめさせてもらうぞ」

「ご期待には副えるように頑張りはします」


 俺も、伊達に異世界で死線を潜り抜けてきたわけじゃない。やるからには、きっちりとやる。期待されてるからには、それに応える。

 それが勇者だ。

 華燐のおばあさんは、横にずれて通してくれる。

 その先には、禍々しいオーラが漏れ出している大きな扉がある。俺は、焦ることなく扉に手を伸ばして開けた。


「おー、これは凄まじい邪気なのです」

「手抜き作業おつだな」


 俺でも、わかってしまう手抜き作業の後。

 まだ残り時間が五十分近くあるのに、これだけの邪気が漏れ出しているとは。隙間がありすぎじゃないか。


「だ、だって! こんな奴ならこれぐらいで十分だって思ったのよ!」

「その結果がこれである」

「反省するのです」

「すみませんした!!」


 神様の謝罪も聞いたことだし、さっそく悪鬼とやらに会いに行くか。封印の間は、結構な広さだ。広さ的に、人間五十人は余裕で入るだろう。

 そんな空間の中心に次元ホールのような黒い渦があり、それが光の鎖で封じられている。 

 地面には、鳳堂家の当時の当主が封印に使った時のであろう札が千切れて落ちていた。


「で、ですがこの結界はかなり強力ですよ?」


 と、華燐が問いかける。

 それを聞いて、ニィは笑顔で答えた。


「ああ、大丈夫なのですよ。刃くんなら」

「リフィル。遠慮なく破壊するぞ」

「いいわよ。どうせ、手抜きで作った結界ですしー」


 あーあ、いじけちゃったよ。後で、フォローしておくとして。結界を張った本人からの許しも得たことだし、遠慮なく。


「ハッ!!」


 一番脆い場所を見極めて、そこを砕く。すると、結界は一瞬にして全てが砕けた。それを見ていた華燐や響、華燐のおばあさんが驚いている。


「あ、あの結界を砕きおった!?」

「す、すげぇ」


 しかし、驚いているのもつかの間。

 結界を破壊したことで、漏れ出していた邪気が一気に溢れ出る。それは、俺達の目の前で集束して巨大な何かに形を成した。

 隆々として筋肉に紫の皮膚。鋭き爪に牙。そして、頭に生える二本の尖った角。

 見た目は、なんだかよくありそうな普通の鬼だ。

 しかし、こうして直に感じると肌がビリビリするな。さすがは、封印されるほどの力を持った悪鬼と言ったところか。


「ほう、まさか人間が結界を破壊するとはな。よもや、これ以上封印できまいと降伏でもするつもりか?」

「そんなわけないのです」

「そんなわけないな」

「そんなわけないでしょ!! アホなの?!」

「……貴様ら、ワシを怒らせたいのか?」


 別に怒らせたいわけじゃないんだが。とりあえず、話は通じるようだな。これで、話が通じない化け物だったらそのまま倒していたところなんだが。

 話せるのなら、少し交渉みたいなのをやってみるか。


「降伏と言ったが。お前はしてくれないのか?」

「するわけがなかろう。ワシは悪鬼。悪しき鬼だ。貴様ら人間とは格が違うのだ。我ら悪鬼族は、この世から全ての人間を消し去り、闇へと落とす!! 子供であろうと老人であろうと容赦はせん。皆殺しだ!!」


 根っからの悪ってことか。

 チラッとニィを見ると、首を縦に振る。


「話し合いは無駄ってことか」

「無駄だ。人間と共存? そんなことはありえぬ! 我らは闇に生きる者!! 光と交わることなど、転地がひっくり返ってもありえぬことだ!!」

「そっか、じゃあ倒す」

「倒すだと? このワシをか! 笑わせてくれるわ!!」


 爆発した闇を二本の棍棒へと形を成した。

 豪快に吼える悪鬼は、まさに野獣だ。

 獲物を喰らい殺そうとする。


「刃太郎さん!」

「小僧!! くるぞ!!」


 焦る華燐達の声。

 だが、俺は一歩も動かなかった。ニィ、リフィルも。それもそのはずだ。正直……この程度の相手だったら、どうということはない。


「死ぬがいい!!」

「えい」


 緊迫した空気の中、とても軽い声が響く。

 刹那。

 虚空より光の鎖が出現し、悪鬼を拘束した。


「なに!?」

「それじゃ、さようならだ」


 いくつもの魔方陣が俺の腕に纏わりつく。

 それは、所謂ブースターのようなものだ。


「ぐああああああっ!?」

「お前よりだったら、コトミちゃんのほうがまだ強い」


 あの時に比べたら悪鬼は弱い。

 確かに、肌で感じるものは凄まじい。だけど、コトミちゃんと戦った後だとどうも……。


「この、ワシが……人間の、小僧ごときに……!」

「人間も進化しているのです。それに、この人は普通の人間とは違うのですよ」

「なにせ、あたし達神様が認めた人間だからね。あんた如きじゃ、勝てないわよ」


 更に言えば、俺以外にも強い人はたくさんいるというな。

 卓哉さんやイズミさん、サシャーナさんも。

 悪鬼も知らないだけで、時代の中で強い者達は増えていた。


「安らかに逝け。お前達に地球は渡さない。もちろん、残りの悪鬼達にもな」

「我ら悪鬼は、やられん! この世に、悪しき力がある限り……!!」


 最後の言葉を叫び、悪鬼は滅んでいく。悪しき力がある限り、か。そういえばいつかの不死身なあいつもそんなことを言っていたな。

 いくら敵を倒そうとも、人間には善と悪がある。

 その悪の力が、奴らを生んでいるってことなのか?


「やったのです。さすが、刃くんなのです!」

「はいはい。わかったから、抱きつくな」

「こ、小僧! お主、本当に何者だ!? あの悪鬼を一撃で倒すとは……」


 近くで見ていた鳳堂の人達はもちろんのこと、他の人達も拍手喝采。

 華燐のおばあさんは小刻みに震えながら、俺に何者かと問いかける。

 なので。


「あなた達と同じ人間ですよ」


 ニィを引き剥がしながら言った。

しかし、これはまだ序章にすぎなかった……。

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