表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/214

第四話「ニィという存在」

「たのもーなのです」

「道場破りにきたわけじゃないぞ」


 長い階段を上がり、俺達は門の前に立っている。複数の人の気配がこの奥にある。なにやら忙しそうにあっちへこっちへと動いているな。

 まあ、予想はついているんだけど。


「二人は普段どうやってこの家に?」

「普通にです。そこにインターホンがありますので。それを押したら華燐か、門下生の人が出迎えてくれるんですよ」


 確かに、インターホンがある。俺は、試しにぽちっと一回だけ押した。それから三十秒ほど待つがこちらに誰かがくる気配はない。

 念のためもう一回押して、今度は一分ほど待つ。

 しかし、誰も来ない。


「よし、強行突破しよう」

「え!?」


 鍵がかかっているが、どうってことはない。


「ニィ」

「はいなのです」


 俺の一言に、ニィは人差し指に魔力を込めて鍵穴へと潜り込ませた。そして、見事開錠。門を開けていざ鳳堂家へ。

 中に入ると石造りの道が続いた。中は思っていた以上に広いが、俺は驚くことはなかった。異世界ではこれ以上に広いところを見てきたし、天宮家の敷地内を堪能してしまったからな。


「だ、大丈夫なのかな?」

「刃太郎さんが強行突破するほど大変だってことだよ! あたし達も行こう! 有奈!!」

「うん!」


 俺達の後に続き二人も駆け出す。が、敵意を感じ俺は二人を護るように攻撃してきたそいつを蹴り飛ばした。


「ってぇ! マジで蹴るなよ!!」

「響か?」


 蹴り飛ばしたのは、華燐の弟で響だった。

 蹴られた腹部を抑えながら、ゆっくりと立ち上がり睨みつける。


「そうだよ! たく、侵入者ってのはお前達だったのか。何しに来た! と言いたいところだが。そうも言ってられない状況なんだよな……今は」

「大丈夫だ。言わなくてもわかってる。ここに、厄介な奴がいるだろ?」

「なんでそれを……! って、ん?」


 驚く響だったが、すぐに視線がニィへと行く。まるで時が止まったかのようにニィを見詰め続けている。それに気づいたニィはにっこりと笑顔を作った。

 刹那。

 赤面する響。俺は、いや有奈やリリーも察した。

 あぁ、一目惚れしたなと。

 有奈とリリーは、なにやら盛り上がっている感じだが、俺は響のことを哀れんでいる。

 なぜって? そりゃだってこいつは。


「あ、あの!」

「はい。どうかしたのですか?」

「お、俺! 鳳堂響って言うっす! あ、あのよろしければお名前を……その」

「ニィなのです。よろしくお願いしますね、響くん」

「よろしくお願いしましゅ……!」


 しかし、これは言っていいことか? いや、言わないと後々になって膨張してかなり厄介なことになるかもしれない。

 というよりも、ニィの虜になった男達を俺は何十人、いや何百人? いやそれ以上か? まあ、兎に角たくさん見てきている。

 俺もあっちでは少々女の子に飢えていたけど、なぜかこいつにだけは反応を示さなかった。なんでだと自分でも考えたよ。

 そしてたら、ニィ自ら話してくれて納得した。俺は、真剣な表情で、緊張のあまり棒のようになっている響の肩に手を置いた。


「な、なんだよ?」

「響。よく聞くんだ。お前が、一目惚れしたニィなんだが」

「ひ、一目惚れなんて……!」


 猛講義しようとするが、俺が先に残酷な事実を告げる。そう、この言葉でニィに惚れた奴らは全員撃沈していったのだ。


「女子じゃないんだ」

「…………は?」


 見慣れた顔だ。こいつ何を言っているんだ? というこの表情。そりゃわかる。わかるぞ。俺だって、この見た目で女じゃないとか言われても絶対嘘だって思うからな。


「違うんですか!?」

「ど、どういうことなの。お兄ちゃん!」


 有奈もリリーも困惑している。いや、一番困惑しているのは響だ。ニィは、全てをわかっているためただただにっこりと笑顔で俺のことを見ている。

 こんなことを恋した男に言うのはもう数え切れない。

 その度、同じ男として心が痛くなる。


「いいか、よく聞くんだ。こいつはな……男なんだ」

「な、なに言ってんだお前。どう見ても女の子だろ!」

「ああ、見た目だけはな。そしてな。こいつ神様なんだ」

「神様!?」

「神様なのですよー。ちなみに」


 証拠というものを見せるべくパンツを脱ごうとしたので俺は後頭部を叩き止める。


「まあなんていうか。俺も、何度この言葉を言ったことか……その。元気、だせ」

「えへへ。可愛いって罪なのですぅ。ねぇ、刃くん」

「うん、そうだな。とりあえず、くっ付くの止めろ」


 俺の腕に纏わり着いてくるニィ。衝撃の事実を聞いて言葉も出ないという状態の有奈、リリー、そしてニィに恋した響。

 俺がこいつに何の反応を示さなかったのは、こいつが男だと本能で理解していたのかもしれない。

 いくら女に飢えていたとしても、いや飢えていたからこそ敏感になっていたのだろう。


「こ、こんなに可愛いのに」

「男の子だったんだね……」

「正直反則的な可愛さだろ? どう考えてもこいつが男だって言っても誰も信じない。普通に考えてこんな見た目の男なんていない。神様だからこその奇跡ってやつだな」

「わたしは、ずっとこの見た目なのです。創造神様がわたしをこんなに可愛く創造してくれたのですよ」


 創造神とは、三柱を創造した最初の神。

 創造神オージオ。

 まずこのオージオがニィを初めとした三柱を創造し、世界を創造した。俺もオージオとは何度か対面したが、なんていうか普通のおっさんみたいな感じだった。


「響。大丈夫か?」

「……そうか、男だったのか。そんで神様、と」


 天を仰ぎ、響はふっと小さく笑う。その瞳からは……涙が流れていた。

 こうして、またこいつの見た目に騙され一目惚れした男の恋が儚く散ったのだ。

 本当に、ごめん。

 勘違いを正す度に俺は、心が痛くなる。同じ男として、共感しているんだ。






・・・★・・・






「それで? 鳳堂は今どんな状況なんだ?」

「ああ。鳳堂は今、窮地に立たされている。他の地域からも霊能力者や陰陽師を呼んで対処しているんだ」


 しばらくしてちょっと立ち直った響に案内されて鳳堂家へと入っていく。確かに、響の言う通り大忙しのようだ。


「大変! もう貯蔵していた食材がなくなりそうよ!」

「もう!? 誰か! 買出しに行ってきて!!」

「おい! 早く次の相手を!!」

「くそ!! また一人倒れたぞ!!」


 門下生達や、お手伝いさん達、そして他のところから来た霊能力者達などがばたばたと大慌てで廊下を走っている。


「き、響様! 侵入者は撃退できたのですか!?」


 そこへお手伝いの一人が現れる。


「いや、撃退はしていない。そもそも侵入者じゃない」

「え? ……そちらの方々が?」

「ああ。この人達は、今の状況を打破してくれる人達だ」

「そ、それはまことですか!?」


 その言葉は、走っていた他の人達にも聞こえ一斉に立ち止まる。まるで、有名人に群がる記者達のように俺達を囲み、視線を集中させる。


「聞いて驚け。ここの御方は、神様だ!」

「神様?」

「でも、神様って……」


 とても信じられない。いや、なにか不安な表情が多い。

 まあこの反応は、納得だ。

 響から大体の事情を歩きながら聞いた。だからこそ、ニィが神様だと聞いて不安がっているのだろう。


「安心してください。俺達は、あなた達を今の苦しみから解放すべく来たんです。な? ニィ」

「はいなのです。皆さん。今は、ゆっくりとお休みになってください。後のことは、わたし達にお任せなのです」


 その言葉が、鳳堂の人達に効果抜群。

 緊張の糸が切れたようにその場に座り込む。俺達は、有奈やリリーに座り込んだ人達のことを頼み、響にこんな状況を作った奴のいる場所へと向かった。

 そこは、大切なお客様を迎える大広間。

 襖越しでも、どうなっているのかわかるほど声が聞こえる。


「ほらほら! どうしたの! あたしはまだまだ元気なんですけどー? もうギブアップ? ねえ?」

「……はあ。今、ここにいるのは?」

「ねえちゃんとその他の霊能力者達だ」

「了解。じゃあ……馬鹿に制裁を下してやるか」


 準備はいいか? とニィに視線を送り、俺は襖を豪快に開ける。

 スパーン! と大広間に音は鳴り響き、中に居た人達は自然と俺達に視線を集中させた。

 広い。かなり広い。

 まるで旅館の大広間のようだ。その中に、豪華な料理や、飲み物、お菓子。さらには疲労で倒れている霊能力者達にお手伝いさん達。

 その奥にいるのは……馬鹿に付き合っている華燐の姿。

 必死に、コントローラーを握って巨大なディスプレイに向かっている。


「どっかで見た光景だな」

「今回は、ゲーム機というわたしをも堕とした代物がありますから。あの時の比ではないのですよ。おーい、リフィルー」


 ニィの呼びかけに、リフィルはびくっと体を振るわせた。振り向きたくない。だけど、振り向かなければどうなるか。

 そんな葛藤があったような間が空き、ゆっくりと振り向く。

 燃える炎のように真っ赤な髪の毛、翡翠色の瞳。豊満なバストは、真っ赤なジャージ越しからもわかるほど。

 俺と視線が合ったリフィルは、親に怒られる時の子供のように震え始めた。


「よう。俺の生まれ故郷でよくもまあ、好き勝手やってくれているようだな」

「ぴぎゃあああああっ!?」

「うるさいのです」

「はい! すみませんでした!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ