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第二話「やってきた神様」

「それで、この子はいったい?」

「簡単に説明すれば、俺が異世界で勇者をやっていた時に手助けをしてくれた……天神様だ」

「天神? そ、それって神様ってこと!?」

「そうなのですよ~。わたしは神様なのですー」


 ニィが突然現れてから、ニィのことを説明している。こいつは、俺があっちの世界に居た時に色々と手助けをしてくれた仲間の一人。

 ちなみに、頭の天辺にある光輪は、普通の人には見えないようになっている。なので、普通の人にはアホ毛のすごい奴に見えているだろう。


「こ、この子が神様。そう思うと後光が……!」

「ふっふっふ。崇め奉るのです」

「自分で光らせてるだけだから」

「あー! 刃くーん。ばらしちゃだめなのですよー」


 舞香さんが見ている後光は、こいつが光属性魔法でそう見せているだけ。その証拠に背中には、光の球体が浮いている。


「で、本題に入るけど。お前、どうしてこっちに来たんだ?」


 ちなみに、こいつはこんな風だが結構高位な神様なのだ。俺のいた異世界ヴィスターラには、三柱の神々が存在している。

 その中の一柱がこのニィだ。 

 ニィとは愛称。本名はニィーテスタだ。神様なのに、人間界に住んでいる変わり者だ。まあ、実際三柱の神々は全員が変わり者なんだけど。


「それはもちろん、刃くんに会いにぃ」

「いや、そういうのいいんで。真面目な話だ」

「ぶー、本当なのに~。ま、それが刃くんだからしょうがないっかー。じゃ、話すね」


 一呼吸入れると、周りの空気が変わる。

 それは、力のない有奈や舞香さんにでもわかるぐらいのものだった。こうしていれば、素直に崇める対象として見れるのにな。


「実はですね。近頃時空の歪みがひどいのですよ」

「時空の歪み?」

「はい。誰かさんがとんでもない力を解き放ったせいで少しずつですが、時空がかなり歪んできているのですよ」


 え? その誰かさんってもしかして……いや、まさかね。


「ふふ」

「俺のせい?」

「おそらくそうなのですー。アイオラスを抜きましたよね? 刃くん」

「ぬ、抜きました……」

「そっちのほうは?」

「うるさい」

「はうっ!?」


 こいつは、隙あらばとんでもないことを言いやがる。それにしても、これまで何も起こっていないと思っていたらそっちのほうで何かがあったのか。


「つまり、俺にその時空の歪みをどうにかしろってことなのか?」

「時空の歪みはどうにかできるのです。ただ、もうひとつのほうをどうにかしてほしいのです」

「もうひとつのほう?」


 こいつでも解決できないことなのか。

 となるとなんだかとてつもなく嫌な予感がする。大体こいつの頼みって、骨が折れるっていうか精神が磨り減るって言うか……。

 ま、仮にも神様の頼みだからな。楽じゃないって言うのは、当たり前なんだけど。


「はいなのです。実は、時空の歪みを利用してこっちの世界に来ているお馬鹿さんがいるのですよー」

「……あぁ、うん。なんとなく察した」

「どういうこと? そのお馬鹿さんっていうのは、刃太郎の知り合いなの?」

「うん、そう。かなり厄介で、かなりめんどくさい奴なんだ」


 今から、そいつをどうにかする作戦を考えるだけで頭が痛くなる。


「では、わたしがこっちに来たことを説明したので」


 さっそく行くのか? と思いきや有奈を見詰めてにっこり笑う。


「あなたが、刃くんの妹さんですねー」

「は、はい! 威田有奈と言います!」


 相手が神様ということでとても緊張している。そんな有奈もよしとして、こいつ有奈に何をしようって言うんだ?


「……ふむ、なるほど」

「おい、有奈に変なことするんじゃないぞ」

「しないのですよ。ただ、刃くんにとってすごくいいことになると思うのです。有奈ちゃん、ちょっとこっち来て」

「は、はい」


 ニィに言われて有奈が椅子から立ち上がり近づいてくる。俺はもしもの時のために、ニィをぶん殴る用意をする。


「まあまあ。そう構えないでほしいのです。ただこの子が求めているものを実現させるだけなのです」

「求めているもの?」

「そうなのです。そい!」

「あうっ!?」


 その求めるものが何なのか考えた一瞬の隙をつかれてしまった。人差し指に光を灯して、有奈の額に当てる。

 しまった!? と思ったが、有奈には何も起こっていない。

 ニィはそのまま、灯した人差し指で空中に何かを描いていく。


「こうして、こうして、ちょちょいっとこうなのです!」

「おお!」


 描かれたのは、有奈そっくりの分身だった。しかし、何か雰囲気が違う。有奈本人と見比べてみると、ニィが描いた有奈はなんだか目つきが悪い。

 しかし、よくできてるな。

 俺はぐいぐいニィが描いた有奈を見詰めていると。


「なにじろじろ見てるのよ、変態」

「あいた!?」


 俺は、分身有奈に罵られながら打たれる。まさか、動くとは思わなかった。ひりひりする右頬を押さえながら分身有奈を見詰める。


「はあ。変態な兄貴を持つと疲れるわね」


 はあっとため息を漏らして、ソファーに座り込み何かを取り出した。

 たばことライターだった。

 お、おいまさか。


「すう……」

「あらまあ」


 本物のたばこを吸い出す分身有奈。

 なんてことだ。

 これが有奈が求めていたものだというのか? そうか! 不良だ! 有奈が中途半端で出来ていなかったことをこの分身有奈は完全にやり遂げているんだ。

 しかし、マジの不良になった有奈はこんな感じなのか。


「こ、これが本物の不良……!」

「ちょっと兄貴」

「え? あ、うん」


 分身有奈に呼ばれて、俺は近くに移動する。


「灰皿」

「あ、はい。どうぞ」


 ここには灰皿などないので、俺は掌に魔力を纏わせ火傷しないようにガードし差し出す。分身有奈は、そのままたばこを擦りつけ立ち上がる。

 そのまま俺達の部屋に入っていき、再び出てくると。


「そんじゃ、ちょっとそこらに殴りこみ行って来るわね」


 有奈が買ったはいいが、そのまま使わずに放置していた木刀を片手に外へと出て行こうとする。

 しかし、ぽんっとポップな音を鳴らし光の粒子となって四散。

 木刀は床に落ちた。


「ここまでなのです。どうでした? 有奈ちゃん。今でも遅くないのです。さっきのようにすれば頭だって」

「やめんか。もう有奈を不良の道に進ませんぞ俺は」

「もう、冗談なのですよ刃くん。だから、その構えた腕を下ろして欲しいのです。暴力反対なのですよぉ」


 まったくこいつは。しかし、さっきの有奈はなんだか新鮮でよかった。

 そうか。

 有奈がマジで不良になっていれば、あんな風になっていた可能性があるのか。俺としては、もう不良の道には戻ってほしくないけど。

 なんだか姉貴! って呼びたくなる感じだったな。

 あれはあれで。


「いいかもって思ってたりしてる?」

「し、してない!」


 まるで俺の心の中を読んでいるかのようににやにやと笑う舞香さん。


「さ、さっきのが本当の不良……だけど、お兄ちゃんは戻ってきたからもう。でも」

「有奈! そっちの道はだめだぁ!!」


 俺が目を離している隙に、有奈が床に落ちている木刀を拾ってぶつぶつと何かを呟いていた。

 いかんいかん。

 なんてことを考えていたんだ俺は。あれから、有奈は俺のことをまたお兄ちゃんって呼んでくれて。更に雰囲気が昔に戻ってきたのにだめだだめだ。


「盛り上がったところで遊ぶのです。こっちの世界のゲームをやってみたいと、ずっと思っていたのですよ。さあ、刃くん。用意するのです」

「お前なぁ……」


 やっとこいつから解放されたと思っていたのに。はあ……更にあの馬鹿もこっちに来ているってことは、マジでコトミちゃんの時以上に大変なことになりそうな予感がする。

 あっちでも色々と大変だったからな。

 あぁ、胃がきりきりする。

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