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第五話「女子高生と異質なオーラ」

朝起きてびっくりしました。

だって、前日より二倍以上も評価されていて……嬉しい半分不安半分な気分です。

ですが、自分が思うままに書いていこうと思います。

「ごめん。こんなものを買ってもらって」

「いいのよ。これからの生活に絶対必要でしょ? それに、今の十代の子達はほとんど持っているし。これ以上時代に取り残されないように、よ」


 働き口を手に入れた俺は、情報収集をする最中、スマホを手に入れた。

 本当に、舞香さんには何から何まで……今後は、俺もちゃんと働いて稼いだ金で少しでも舞香さんを助けてやらないと。 

 ま、バイトではそこまで稼げないとは思うけど。


「さて、情報収集だけど。さっそくこのスマホで一通り調べるか」

「なら、落ち着いた場所に行きましょう。ほら、あっちにバーガーショップがあるわ」


 俺が昨日昼食を食べた場所だ。

 長居するには定番のところだな。

 後は、ファミリーレストランとか。お金がもったいないからという理由で、外食は控えていた俺だったが、まあハンバーガー程度ならまだ安い。

 さっそく、バーガーショップに入り、飲み物と簡単なポテトをひとつ購入して店の端っこに座る。


「それで、一番調べなくちゃならないことなんだけど」

「そうね……やっぱり常識からじゃないかしら。例えば総理大臣の名前とか、消費税のことについてとか。私がこの四年間で変わったことをひとつひとつ教えるから、それをネットで調べるってことで」

「了解。できるだけ頭に詰めるように努力するさ。パンクしない程度にな」


 それからは、舞香さんの協力もあり、俺はこの四年間の常識を少しずつだが頭に詰め込んでいった。

 大体、一時間半ぐらいが経った頃。

 ふと、窓側のほうに目を向けると……。


「あ、有奈……!」


 有奈が、昨日と同じメンバーと共に窓側の席に座るところを目撃した。


「あの子達は、別の高校だけどよく有奈と一緒にいる子達よ」


 声を潜め、舞香さんが俺に教えてくれる。


「まず、あの金髪めがねの子なんだけど。名前は凪森なぎもりリリーちゃん。父親が日本人で、母親がアメリカ人のハーフなの」

「ハーフだったのか……」


 かなり自然な金髪だと思っていたけど、まさか地毛だったとは。

 エメラルドグリーンの瞳に、赤渕メガネ、更にハーフだということでスタイルも抜群。腰まで流れる長い金髪がとても目立っている。


「それで、あの黒髪のお下げで目元に星のシールを張っている子の名前が鳳堂ほうどう華燐かりんちゃん。あの子に関してはよくわかってないの。ごめんね」

「いいよ。名前とかがわかればさ」


 華燐は、お下げを右肩に置くような形の髪型だ。あの三人の中では、言ったら失礼だけど一番胸が小さい。

 ちなみに、二人は同じ制服を身に纏っている。

 いったいどんな会話をしているんだろう。

 盗み聞きは、失礼だとは思えがここは……。


「……」

「何をしてるの? それはなに?」

「これは、拡聴機だ。耳に取り付けると遠くの会話までよく聞こえるんだ」


 支援系の魔法の中に、拡聴できるものがあるけど俺は使えないからな。

 なので、あっちの世界から持ってきた便利グッズを使うわけだ。

 とはいえ、あっちから持ってきたものはほとんどない。俺はいち早くこっちの世界に帰りたかったわけだからな。


「やっぱり気になるのね。盗み聞きは、本来駄目な行為だけど、今は見逃してあげるわ」


 ありがとうございます、舞香さん。

 丁度ここは壁やら植物やらで、あちら側からは良く見えない。そのためかなり好都合だ。


「えっと……」


 拡聴機を耳に取り付け、ごく自然な素振りで聞き耳を立てる。

 有奈達の会話だが。


「はあー。明日になれば学校かー、いやだなー」


 これはリリーという子の声だろうか。

 どうやら、学校に行くのが嫌な様子。まあ、好きで学校に通う人なんてそうはいないだろうし、気持ちはわかる。


「もうサボっちゃおうよ。サボってゲームをしていたほうが毎日楽しいじゃん」


 これは華燐という子の声だな。

 確かに、毎日ゲームをして過ごすのは楽しいだろう。俺だって、何度も考えたことか。


「ね? 有奈もサボっちゃわない」

「……」

「有奈ー? 聞いてるー? なんだか今日は心ここにあらずって感じだけど。大丈夫?」


 ここからでもわかる。

 有奈は、買ったポテトを一本だけくるくると回し何かを考えている素振りを見せていた。


「え? ……あ、あはは。大丈夫だよ、うん」

「そう? ならいいんだけど」

「あ、今思い出したんだけど! 美晴がついに先輩に告白したんだって!」

「美晴ってあの一年生の子?」

「そうそう! それで返事なんだけど……オッケーもらえたってさ!」

「おおー、よかったじゃない。これで、晴れて美晴はリア充かー」


 リア充か……俺は異世界でリア充だっただろうか。まあ、気の許せる仲間達はたくさんできたけど。恋人になりうる子はいなかったなぁ。

 普通、異世界召喚ものって言ったらさ? 召喚してくれた召喚師の人が美少女でその子がヒロインになったり。道中ですげぇイベントが起こってそこで出会った美少女がヒロインになったり、とかあるわけだけど……俺はそんなものなかったね。


 召喚してくれた召喚師の人達は全員男っていうかおっさんだったし。

 仲間になった美少女も、他に好きな人がいるとかなんとかって言っていたし。そこから、俺だけなんか違うくないか? とか思い始めていた。

 だが、俺には有奈と舞香さんがいたんだ。

 二人が地球で待っている。ただその一心で俺は帰ってきた。俺のリア充生活はこれからなんだ! とはいえ、妹を恋愛対象にはできないし、舞香さんは……美人だけど今では母親と思っている。 

 妹の場合、実は血が繋がっていませんでしたーなんてオチはないしな。というよりも、有奈は、すでに俺の家族だ。血が繋がった家族だ。

 それでいいじゃないかと。


「あたしらもさー、早く運命の人と出会わないとねー」

「リリーってば、白馬の王子様がいるって信じてる系だっけ?」

「どっちかなー。そういう華燐だってさ、恋愛ゲームとかいっぱいやってるじゃん? それって、やっぱり今後のためのシミュレーションってやつなのかにゃ?」

「ち、違うよ。ただ、美少女が大好きなだけだから……! し、シミュレーションしてるわけないから……」

「あはは、動揺してるしー! 可愛いなー!! もう!!」

「う、うるさい!」


 いやぁ、すごくきゃっきゃしてるなぁ。

 女子高生の会話って、男とは大違いだな。俺だったら、ゲームの話とかアニメの話とかがほとんどだったし。時々、友達に流されるがまま好きな女の子のタイプとかで盛り上がったことはあったけど。


「ねね。有奈はどうなん?」

「え? どうって?」

「恋愛。好きな人とかいないん?」


 それはすごく気になる。

 兄としてすごく。

 気持ち悪いぐらい気になっている。あぁ、聞き耳を立てる力がより増すってもんだ。目の前にいる舞香さんは俺の変わり様に、なにかを察したのかふふっと苦笑している。

 すみません、気持ち悪い兄で。


「私は……」


 わ、私は?


「……いないよ、そんな人。それに恋愛とかにも今は興味ないから」


 それを聞いてほっと一安心。

 兄としては、妹の幸せを願ってはいるのだが、うん。


「そうなんだ。でもさ? あたしらも高校二年生なわけじゃん。青春真っ盛り! やっぱこう、漫画のような恋愛してみたいなーって」

「そこをどうして漫画で例える」

「どんな例えでもいいの。って、あ! そろそろ時間だ。映画を観に行こうー!!」

「あ、待って! まだ食べ終えてないよ」

「まだ三十分もあるんだけど……」


 どうやらこれから三人で映画を観に行くらしい。

 先に行くリリーを追いかけて、有奈は急ぎ残りのポテトを食べ、華燐は有奈が来るのを待っていた。

 三人が出て行くのを見送り、俺はすっと立ち上がる。


「すみません。舞香さん、俺」

「いいのよ。行ってらっしゃい。でも、見つからないようにね?」

「ありがとうございます!」


 昨日に引き続き、有奈のことを尾行することにした。舞香さんを置いていく形になってしまったけど、やっぱり気になってしまう。

 少しでも、今の有奈を知っておきたいんだ。 

 自動ドアを潜り、右方向を向く。

 有奈達は三人仲良く並んで移動中だ。


「よし。尾行開始だ」


 と、思った刹那。


「おらおら!! 退けやぁ!! 轢かれても知らんぞー!!」


 男の声が響く。

 いや、それだけじゃない。この音は……バイクのエンジン音? おいおい、ここを通れるのはスクーターとか自転車ぐらいだぞ。

 この音から考えるに、相当大きいバイクだ。


「うわ!? あぶねぇじゃねぇか!!」

「へへ! 俺の道を阻むのが悪いんだよ!!」


 ノーヘルか。

 それに、すごいリーゼントだ。見た目からもうヤンキーだというのが滲み出ている。


「きゃっ!?」


 リーゼントの男がバイクで走り抜ける中、逃げ惑う人々にぶつかられリリーがその場に倒れこんでしまった。

 まずい、あのままじゃ……!


「リリーちゃん!」

「リリー!」

「おらおら!! 退けやぁ!! そこの女ぁ!!」

「ちっ!!」


 俺はぐっと足に力を入れて跳躍する。

 一瞬の内に、距離を詰めた俺はリリーを抱きかかえ跳び上がる。やべっ……跳び過ぎた。というか、この手に当たっている柔らかいものって。


「……」


 リリーの胸だった。

 咄嗟だったからそんなところに気を配る暇がなかったんだよ……。って、ん? あのリーゼント、なんか変なオーラが出ているような。

 無事に着地した俺は、リリーをその場に下ろし、リーゼントの男を見詰める。


「あ、あの」

「すまん。俺はこれで失礼する!」


 リリーから話しかけられたが、俺は妹から逃げるように……いや、あのリーゼントの男から発せられていたオーラが気になったので、その場から去って行く。

 あのオーラ……なにか嫌なものを感じた。

 でも、ここは地球。

 魔法もなく、魔物もいない世界だ。そんな世界であんなオーラがあるなんて。まさか、俺がいない四年間でそういうところも変わったのか? それを確かめるためにも、あのリーゼントの男を捕まえないとな。

 くそっ! 今日も有奈の動向をあまり探れなかった……。

ついに、なんかファンタジーの部分が出てきたような。次回はその辺りを書いていくと思います。

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[気になる点] え?兄キモくね? ローファンだから設定緩いかもしれんけど、主人公が何も考えずに生物を殺し回ったんかどうかだけはよだして
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