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プロローグ

第四章かいまくー。

「ありがとうございましたー!」

「いやぁ、やっぱり獣耳っ娘は大人気だな!」

「まったくね! これも刃太郎くんが天宮家と仲良くなったおかげでね!!」


 八月も終わり九月。

 学生達は、夏休みがもっと続けばいいのに! と思いながら学校へと通っている中、俺は山下書店でいつものように働いていた。

 いつもと変わらずに。

 まあ、変わっているところもあるんだけど。


「サシャーナちゃん! 最高にいい働きだわ!」

「はい! ありがとうございます!!」


 天宮家の一人娘であるコトミちゃんの教育係を勤めたおかげで、天宮家との繋がりが出来た。俺が困ったことがあれば、全力でサポートしてくれると。

 その結果、サシャーナさんを初めとした獣っ娘さん達が毎日ではないが、働きに来てくれる。

 彼女達のファンも出来たらしく、山下書店の宣伝などをしてくれているらしい。


「とはいえ、二人もちゃんと働いてくださいよ?」

「もちろん働くさ。でもねぇ、彼女達が大人気過ぎて」

「そうなのよねぇ。もうあの子達の写真集を出しちゃいましょうか?」

「お、それはナイス提案だ!」

「何言ってるんですか。彼女達は、天宮の人達ですよ。金に目が眩みましたか?」


 冗談だよ! 冗談! と笑う二人だがなんだか目がすごく本気だった気がした。

 俺は、ため息を漏らしつつ働いているサシャーナさんへと告げた。


「そろそろ時間です。お手伝いお疲れ様です」

「あ、もう時間ですか! いやぁ、真面目に働くと時間が経つのが早いですねー」


 それは普段真面目に働いていないように聞こえるんですが。その後、サシャーナさんが帰った後、俺も終業時間になって山下書店を後にする。

 正直なところ、結構な大金があるので真面目に働なくていいんだけど。こういうのが、平凡って感じがして良いんだよな。


 アルバイトをして、ちょっとコンビニとかに寄って、家に帰る。その帰り道で、学生達が他愛の会話をしていたり、社会人が同僚と何かを愚痴っていたり。

 母親と娘が仲良く今日の夕飯なににする? という会話を聞いたり。

 こういう日常的な会話を聞いていると、あぁ俺って平凡な空間にいるなぁって思えるんだ。


「ん?」


 しかし、運命さんは俺を平凡から引き離したいのか。

 ただこうして帰っているだけで、イベントに遭遇してしまう。


「んだ中坊が! なんか文句あんのか、あぁん!?」


 一人の中学生と思わしき少年が、大量のヤンキーに絡まれていた。周りの通行人達は、視線をやるが通り過ぎたり、見てみぬふりしたりしている。

 あれだけのヤンキーだ。

 普通は助けように助けられないよな。

 俺がやるか。

 このままにしていたら絡まれている中学生が危ない。そう思い助けに行こうと近づいたところ。


「大有りだ!! この野郎!! 中学生だからって舐めんなよぉ!!」

「おぐっ!?」


 殴った。絡まれている中学生のほうがだ。

 黄金に輝く髪の毛、サングラスが頭にある。

 服装は黒のガクランに黄色いシャツ。身長は百六十センチメートルにいくかいかないかぐらいか。

 ちょっと小柄かな?

 そいつの動きはとても俊敏かつ豪快だった。


「この!!」

「おせぇよ!!」

「げはっ!?

「ごっ!?」


 一人がやられ他のヤンキー達は一斉に襲い掛かる。しかし、中学生は拳を回避し豪快な回し蹴り。そのまま回転したまま着地し、もう一人を足払い。

 倒れたヤンキーは他のヤンキー達を巻き込む。

 なんだ強いじゃないか。俺が助ける必要なんてどこにもなかった。だけど、これ以上長引くと警察のお世話になりそうだからそろそろ。


「穿て」


 中学生が何かを唱えると拳に風が纏う。

 これはやばい。

 そう思った俺は、最後のヤンキーに当たる寸前で腕を掴み止めた。 


「ストップ。それはやり過ぎだ」

「なっ、なんだよあんた!」

「何があったかは知らないが、さっきの当たったら怪我じゃすまないぞ」

「ちっ。おい!」


 中学生は舌打ちをして、近くにいたヤンキー達に叫ぶ。

 気絶はしていないようだが、明らかに戦意を喪失している。


「今回は見逃してやる。さっさと行け!!」

「ひぃ!?」

「お、覚えてやがれぇ!!」


 逃げていくヤンキー達の姿が見えなくなったら、中学生は近くにいたおばあさんへと近づいていく。

 

「大丈夫だったか? ばあちゃん。もう安心だ。いちゃもんつけてきた奴らはぶっ倒したからな」

「ありがとうねぇ。でも、喧嘩はだめだよ?」

「ああ、ほどほどにするぜ」


 そうか、おばあさんを助けるために。

 それでも最後のはさすがにやりすぎだったな。おばあさんが去って行った後、キッと俺のことを睨みつけて近づいてくる。


「おい、あんた。何者だ? さっきの。普通の奴じゃぜってぇ止められねぇやつだぞ」

「あー、俺か。俺はな」


 どう説明したものかと思ったところに、疾風のように何者かが現れ中学生の頭を強打する。


「こら、響。刃太郎さんに失礼でしょ」

「ってなぁ。なにすんだよ、ねえちゃん!!」


 華燐だった。響と言う名前の中学生は、華燐をねえちゃんと言っていた。そういえば、華燐には二つ下の弟がいるって話だったな。

 てことは、この中学生が?

 ……はっきり言って全然似ていない。


「すみません。弟が失礼を。それと弟を止めてくださりありがとうございます」

「いや、別にいいよ。それにしても華燐の弟だったんだな、びっくりした」

「んだあんた。ねえちゃんの知り合いか?」


 頭を擦り、再び俺を睨みながら問いかけてくる。


「そうだ。俺は威田刃太郎。華燐とは妹が友達だったから知り合えたんだ」

「へぇ、そうだったのか。それで? 何者なんだあんた。普通の人間じゃねぇだろ。隠したって無駄だぜ」


 やっぱり、俺が何者かが気になるか。

 そりゃ、さっきのを素手で止めればな。


「すみません。口が悪い弟で」

「気にしてないって。それよりも俺が何者かってことだよな。……よし、立ち話もなんだから喫茶店に行こうか」


 周りの視線も大分集まってきたし。場所を移動したほうがいいだろう。


「は、はい。わかりました。ほら、響。こっちに来て」

「わーったよ」


 そんなこんなで、舞香さんにはちょっと遅くなると連絡を入れて俺は喫茶店へと向かった。

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