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第二十二話「森で宝探し」

『それでは、ご参加されるお客様方はこちらの受付で契約書にサインしてくださーい!!』


 あれから時間は経ち、花火が上がる前。

 天宮家が主催するイベントが開催されようとしていた。参加者は、受付で登録し天宮家の敷地内にある森へと向かうのだ。

 当然俺達も参加することにしている。

 まだ俺達の順番まで回ってこないが、参加する人達は大盛り上がりだ。


「楽しみだな」

「ええ。しかも、あの天宮家の敷地に入れるなんて!」

「思い切ったことをするよな、天宮家」

「ああ。敷地内の森で宝探しとは驚いた」

「でも、その宝っていうのがマジで宝らしいからやる気が出るってもんだぜ!」


 そう、今回天宮家が開いたのは宝探し。

 敷地内にある森の中に、隠された宝を渡された地図を見ながら、そこに書かれている問題を解きつつ場所に向かう。

 そして、手に入れた宝には点数が書かれているようなのだ。

 その点数が一番多かった者が勝者となる。

 ちなみに、チーム戦とのこと。


 人チーム四人までなら誰とでも組んで大丈夫とされている。

 までなので、二人から三人でも大丈夫だ。

 でも、チームなので一人での参加は不可能。

 そして、今回のチームだが……。


「頑張ろうね、リリー! 華燐!」

「まっかせて! 豪華な宝はあたし達のものだー!」

「多少の灯りが灯されているとはいえ、薄暗い森の中だから気をつけないと迷子になるよ?」

「あたしは、そこまで子供じゃないもーん」


 有奈、リリー、華燐の仲良く三人組み。

 すでに登録を済ませて今か今かと森のほうを見詰め、はしゃいでいる。そして、次のチームはなんだか心配になるチームだ。


「さあ、小娘達よ! 我に続くのだ! 勝負というからには、負けることは許されん!!」

「あんただって、小娘でしょうが!」

「こ、子供だけで参加って大丈夫なのかな?」

「大丈夫だよ! もし迷っても、この森は私の庭だから! すぐ見つけ出してあげる!!」


 途中で出会ったロッサとコトミちゃん、優夏ちゃん、そらちゃんの子供チームだ。彼女達以外にも、子供のチームは参加している。

 だが、そのほとんどが保護者同伴だ。

 百パーセント子供だけの構成はここぐらいか? 

 んで、最後に俺のチームなんだが。


「なんでまたお前と組まなくちゃならないんだ」

「そう言わずに。いいではないですか、男同士友情を深め合いましょう」


 ロッサがいるということで、お供として光太も来ていた。俺のチームは、前回の天宮総合プールで組んだチームそのまま。

 俺、光太、駿さんの三人だ。


「なにが友情だよ。そいつとの友情なんてありえん!」

「では、私との友情はどうでしょうか? どうやら歳も近いようですし」


 確か、光太が二十八歳で。駿さんが……えっと、二十五歳だったけ? 確かに、俺よりは歳が近いな。

 ふふっと笑い、手を差し伸べる駿さんだったが、光太は頑なに友情を拒否。


「今回も、俺はバルトロッサ様のために参加しているんだ。二手に分かれて、宝を多く手に入れる。それが今回の目的だ。お前達と組んでいるのは仕方なく! なんだ。勘違いをするなよ」

「おやおや。忠誠心が強いのはよろしいですが、我々はチーム。少しぐらい仲良くしてもよろしいかと思うのですが」

「だったら、お前達で仲良くしていればいい」


 と、背中を向ける光太。相変わらず、俺は嫌われているようだ。どうしたものかと、俺達の順番に回ってきたので、ひとまず契約書にサインをして、列から離れた。


「ま、あんなこと言っているけど。始まればロッサのために真面目に宝探しをするはず。それが、自然と俺達と協力しているってことになると思いますよ」

「プールの時もそうでしたしね。それにしても、宝探しですか。子供の頃を思い出して、年甲斐もなくわくわくしています」

「どんな宝を隠しているのか、駿さんも知らないんですか?」

「はい。宝を選び、隠したのはサシャーナさんの部下達でしたので。サシャーナさんならば、知っていると思いますが」


 チラッと、受付にいるサシャーナさんを見る。

 聞いたとしても、教えてはくれないだろうな。ああ見えて、サシャーナさんは真面目だから。仕事に関しては、絶対やり遂げる人だ。


「ま、最初から知っていたら面白くないし。真面目に宝探しをしましょうか」

「ですね」

『はい! 受付終了です! いやぁ、思っていた以上に参加者が来てくれて、とても嬉しいです!』


 どうやら、参加登録の受付は終了のようだ。

 参加する人達も、今か今かと森の前でスタンバイしている。俺達も遅れまいと、有奈達の近くに移動する。


『それでは、スタート前に再度ルール説明です! 先にお伝えしたように、これから始まるのは宝探し! チームとなり参加が可能で、登録した際に配られた地図を見て、そこの書かれている問題を解き! 示した場所の宝をゲット! ゲットした宝には、ポイントがあります。より多くのポイントを制限時間内に集めたチームが優勝! ゲットした宝はそのままプレゼントとなりますが、優勝をすればさらに豪華な特典があります! 皆さん? 張り切って宝探しをしてください!!』


 サシャーナさんの言葉に、参加者達は一斉に叫ぶ。まだ、優勝した時の特典というものを知らされていない。プールの時は、毎年の恒例だったから明かされていたが。

 今回は、まだはてな状態。

 だが、主催が天宮家ということで、かなり豪華なものだろうと皆予想し、宝探しにも力が入っている。

 それは、表情を見れば一目瞭然。


『制限時間は十五分! 迷子になった際に、最速で救助できるように、しっかりとGPS搭載のブレスレットを外さないように!』


 そう、天宮家の敷地内とはいえ、挑むのは森の中。

 もし迷った場合のために、GPS搭載のブレスレットが参加者全員に配布されている。ウサギがモチーフというとても可愛いブレスレットだ。


『それでは、準備はよろしいですね? 言っちゃいますよ? 叫んじゃいますよ?! 第一回天宮家主催宝探し! ……スタートです!!!』


 開始のゴングと共に、俺達は森の中に一斉に駆け込んでいった。

 他のチームと離れ、俺達はさっそく明るいところで地図を確認。

 配られた地図は、小さなタブレットのようなもので、そこにある問題を解くことで宝が埋められている場所までのルートを示すらしい。


「えっと。まずは、どれから解こうかな」


 問題は五問あり、そのうち三問正解すれば宝までルートが示される。


「刃太郎様は、得意な科目はなんですか?」

「俺は、理数系が得意ですね。とはいえ、四年間も学問から離れていましたから、ちょっと自信がなかったり」


 ちょっとずつだが、参考書を元に勉強してはいるんだけど。だから、張り切っていたけど不安で一杯だったして。


「なんだよ、だらしないな。ちょっと貸してみろ」


 苦笑いをしていた俺から、光太は眉を顰めながらタブレットを奪い取る。そして、しばらく問題を見つめた後、操作し始めた。


「まずは、一問正解だ。次は……」


 と、二問目も正解させる。だが、三問目を解こうとしばらく沈黙してしまった。どうやら、最初の二問は解けたようだが、それ以降は難しいものだったらしい。

 大人でも悩む問題って……コトミちゃん達大丈夫かな?


「私が解きましょうか?」


 悩む光太を見て、提案する駿さんだったが。


「待て! もう少し考えさせろ! この問題は、確か、大学の時に……」


 邪魔をするな、ではなくもう少し考えさせろ、か。結局、協力してもいいみたいな感じになっているじゃないか、光太。

 ロッサのために必死なんだろうな。

 それから、一分ほど悩みくそっと頭を抱えて駿さんにタブレットを渡す。


「解けるものなら解いてみろ。執事さんよ」

「はい。では、少々お待ちを……ふむ、あっ。これなら」


 どうやら、駿さんは解ける問題を見つけたらしくタブレットを操作する。すると、何かの効果音がなる。タブレットを見ると、俺達の居る位置からどこかへ導くようにルートが示されていた。


「これで、一つ目の宝のありかに行けますね」

「よし、だったら早く行くぞ!」

「張り切ってるな」

「主に仕える者として、あの忠誠心には感服です。よほど、ロッサ様のことを信頼し、敬愛しているんですね」


 タブレットを持って、前を進む光太を見て駿さんは笑う。

 光太は、俺が勇者になる前に死んだと聞いている。

 だから、あっちの世界にいた頃はどんな姿をしていたのか、どんな生活をしていたのかはわからない。

 まあ……ロッサにご執心だから、容易に想像できてしまうんだけど。


「……」

「どうかなされましたか?」

「あ、いや。コトミちゃん達、大丈夫かなって」

「もしものために、サシャーナさんの分身体が見守っています。それに、ロッサ様もついていらっしゃいますし。天宮の者達もコトミ様の動向は常にチェックしていますから、ご心配せず……というのは無理のようですね」


 コトミちゃんのことに関しては、俺も聞いている。そして、ロッサがコトミちゃんのチームに参加すると聞いて俺から何かあった時は頼むと言っておいたんだ。

 ずっと、妙な胸騒ぎで集中できていない。

 何も起こらなければいいんだけど……。

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