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第九話「プールで騎馬戦」

七月です! 夏になるとパソコンが熱暴走しないか心配になってしまいます……。

「刃太郎さんいきますよ! それ!!」

「華燐!」

「はい!」


 ギラギラと輝く太陽の日差し、そして青い空の下で俺達は冷たく気持ちいいプールで遊んでいた。コトミちゃん達は、駿さんが見守ってくれているようだから俺は有奈達と。

 今日は、教育のことは考えずに楽しく遊んで欲しいとのことだ。


「サシャーナさん、いきます!」

「ほいきました! 刃太郎さんに弾丸スマッシュ!!!」

「ちょっ!?」


 ただトスをするだけでいいと言うのに、サシャーナさんはジャンピングスマッシュを俺目掛けて飛ばしてきた。周りには他の客はいない。

 プールひとつを貸切にしてくれたようだ。

 なので、遠慮なくサシャーナさんはスマッシュをしたのだと解釈した。

 マジで弾丸のように襲いかかってくるボールを俺は威力を殺そうと構える。


「あっちゃあ」


 しかし、中々難しくボールはいずこへと飛んでいってしまった。


「えへへ」

「えへへじゃないですよ。ちょっとボールを取ってくる」

「気をつけてくださいねー!」


 遠くへ飛んでいったボールを追いかけ、俺は皆から離れていく。サシャーナさんのスマッシュ。あれはただのスマッシュじゃなかった。

 魔力を纏っていたんだ。

 最近、コトミちゃんの魔力制御を隣で同じくやっていたからな。

 抑えきれず、試してしまったのか……まったく。


「えーっと、ボールボールっと」


 どこに行ったんだ? この辺りのはずなんだが。

 ん? この気配は。


「おい。探し物はこれか?」


 聞き覚えのある声に振り返ると、そこに居たのはスクール水着を着用したロッサだった。右手には俺が探しているボールがある。


「現れないと思ったら、すでに来ていたのか」


 いつものパターンならば、俺達が何かをする時や行く時には、必ずといって突然出現するロッサ。だが、今回に限って現れなかったので安心して遊べると思っていた。

 そのはずだったが。

 すでに、このプールへ遊びに来ていたようだ。


「そうだ。今日は、光太が休みでな。久しぶりに出かけないかと誘われたのだ。熱心に働いている部下の頼みだ。断る理由もない。それに、最近は暑いからなぁ。水辺で涼みたかったのだ」


 てことは一人じゃないってわけか。

 光太……会わないうちにさっさと離れないと。


「バルトロッサ様!! 焼きそばを買ってきましたぁ!!」

「おお、早かったではないか。こっちだ!!」


 しかし、これまたタイミングが悪い。

 丁度、ロッサのために焼きそばを買ってきた光太が笑顔で戻ってくる。そして、俺がいることに気づきあからさまに不機嫌になる。


「威田刃太郎。貴様、バルトロッサ様に何をするつもりだ!」


 パックの入った焼きそばを持ったまま俺とロッサの間に割り込む。こいつとの仲は全然変わらずだ。

 俺は別に仲良くしてもいいんだが、こいつが一方的に俺を敵視している。


「いや、別に何もしないって。ただ、遊びで使っていたボールを回収しに来ただけなんだ。ほら、そいつが持ってるやつ」

「おお、そうであった。返すぞ、刃太郎」


 俺の言葉にそうだったと思い出し、ボールを投げる。


「キャッチ!!」

「コトミちゃん!?」


 しかし、残念。コトミちゃんが横から割り込みボールを奪い取ってしまった。


「刃太郎お兄ちゃん。やっほー」

「向こうで遊んでいたんじゃないのか?」


 ついさっき、流れるプールで遊んでくると優夏ちゃんやそらちゃんを連れて駆け抜けていったのだ。


「えへへ。なんだかお腹空いちゃって」

「あー。そういえば、お昼近いもんな。それに特訓をしたばっかりだったし」


 納得、と思ったところでコトミちゃんは光太が持っている焼きそばにロックオン。とても食べたそうにじっと見詰めている。

 光太も、その視線に気づきどうしようかと眉を顰めた。

 ロッサのために買ってきた焼きそば。あげるわけにはいかない。しかし、餌を欲しがっている犬のようにじっと見詰められてしまっている。

 もしこのまま焼きそばをあげなければ落ち込んでしまうかもしれない。

 ロッサとコトミちゃんを交互に見て、頭を悩ませている。


「光太よ、よい。その焼きそばは、その小娘にやれ」

「い、いいのですか? バルトロッサ様」


 そんな光太に、ロッサが助け舟を出した。ふっと小さく笑みを零し、コトミちゃんに焼きそばをやるように命じる。


「心配するな。我はそこまで腹を空かせていない」


 いつも、普通の人の倍は食っている奴がよく言う。


「代わりに、そこの男に違うものを買ってもらう。交換条件というやつだ」

「そ、そうきたか。まあ、別にいいけど」

「……じゃあ、これを」

「いいの?」


 と、首を傾げるコトミちゃん。


「ああ。腹を空かせているんだろ。遠慮するな」

「ありがとう!!」


 おいしそうに焼きそばを食べるコトミちゃんを見て光太は笑った。俺に対しては、敵意丸出しなのに。まあ、これが本当の光太なのかもな。


「ちょっとコトミ! 一人で勝手に行動しないの!」

「迷子になっちゃうよ?」

「おや? せっかく買ってきましたのに、もう食べていたんですね」

「優夏ちゃん、そらちゃん。それに駿さん。その大量の食べ物ってまさか」

「ええ。コトミ様がお腹を空かせているだろうと買ってきたのですが」


 現れた駿さんは焼きそばからフランクフルトの食べ物類や缶ジュースなどが入った袋を両手に持っていた。

 そして、優夏ちゃんやそらちゃんも一緒だ。どうやら、コトミちゃんがまた一人で飛び出していってしまったらしい。


「いや、いいタイミングだ」

「どういうことですか?」


 ここであった出来事を知らない駿さんは首を傾げる。

 しかし、そんな駿さんなどお構いなしに袋に入っている焼きそばを取り出してしまう。


「実はですね」


 軽くさっきの出来事を伝えると、なるほどと頷き袋からフランクフルトを取り出してロッサに渡した。


「コトミ様がお世話になりました。これは、ほんの気持ちです」

「おお、気が利くではないか。いいだろう、もらっておくぞ執事よ」


 貰った焼きそばとフランクフルトを光太に渡し、ロッサは背中を向ける。


「ではな。今日は、フリーだ。貴様らも楽しんでいくのだな」

「言われなくても」

「焼きそばありがとう!!」


 悠々と去って行くロッサに、最後まで俺のことを睨みつけてくる光太。二人が差っていくのを見守った後、俺はボールを手に戻ろうとした。


「あ、おに……お兄ちゃん」

「有奈。どうしたんだ? もしかして、遅いから探しに来てくれたのか?」

「うん、それもあるけど。これ。サシャーナさんが是非参加してみないかって」


 そう言って、有奈が俺に渡した紙にはとても楽しげな絵で、とても迫力のある文字でとあるイベントのことが書かれていた。


「皆集まれ、プールで騎馬戦?」





・・・★・・・





『さあ! いよいよ始まります! 天宮サンシャインプールでは有名! 大人気イベント!! 皆集まれ、プールで騎馬戦!!!』

「サシャーナさんが司会をするのか」


 これから始まるのは、この天宮総合プールで毎年夏に行われているイベント。水中騎馬戦。子供の部から大人の部まであり、普通の水中騎馬戦とは違い三人一組でやるらしい。

 騎馬となる二人が騎手を支える。

 通常四人で支えるため、相当な実力者ではないときついものがある。しかし、このイベントの賞品がこれまた凄まじい。

 なんと大人の部で一位になったチームには賞金六十万と一年間のフリーパスが。

 二位でも賞金三十万が手に入るらしい。

 子供の部は賞金はなく一位の場合一年間のフリーパスと最新のゲームか玩具を贈呈するとか。

 騎馬戦のことは全然詳しくないが、普通に豪華な賞品だと思っている。

 さすがは天宮家だ。


「いや、それよりも」


 サシャーナさんが司会をやることはなんとなく察していたが。


「バルトロッサ様の命令ではなかったら、貴様などと……」

「まあまあ。いいではないですか」


 なぜか光太と組むことになった。

 駿さんは良いもののなぜか。

 まあ、人数的にもこうなることは必然。ちなみに、有奈とリリー、華燐がチームを組み。コトミちゃんと優夏ちゃん、そらちゃんがチームを組んだ。

 そして、ロッサなのだが。


「よいか!! 貴様らは我のために馬車馬のように働くのだ!!」

《はい! ロッサ様!!》


 いつの間にか、親衛隊のような子達がロッサの前で敬礼をしていた。あの子達は、いったいどこから連れてきたんだ?


「あぁ、あの子達ですか。あの子達は、サシャーナさんが作った分身体です」

「え? 分身体? そんなものを作れるんですか?」


 どうやら、ロッサに従っているあの子達はサシャーナさんが作った分身体らしい。そう言われると、なんとなく面影があるような。


「サシャーナさんは、自分の毛で分身体を作ることができるんです。最大……十体まで作れると言っていましたね。簡単な命令をすればそれを忠実に遂行するとか。おそらく、今回はロッサ様の指示に従うようにと命令されたのでしょう」


 まさか、そんな特技があったとは。

 それにしても、子供の部でいいのか? ロッサは。まあ見た目的に子供だけど。これは一波乱ありそうだ……。

 なぜって、あのロッサとコトミちゃんだぞ? 何もないなんてありえない。おそらく、子供の部はこの二人の一騎討ちになりそうだ。


 俺達のほうはまあ平和だろうな。

 俺は別に優勝を狙いにいかなくてもいい。俺は有奈の手助けに集中することにした。だが、ひとつだけ問題がある。


「手助け? ふん、誰が貴様の妹の手助けなんてするか」

「そう言うな、光太。協力してやれ。常々、あの時の罪滅ぼしをしたいと言っていたではないか」

「うっ、それは……わかりました。こ、今回だけだぞ!!」


 どうやら、問題はなくなった。


「頑張ろうね! 二人とも!!」

「おー! 賞金は山分け! 一人二十万なんてすごい大金だよ!!」

「それよりも、リリー。私達は騎馬なんだから足を滑らせないようにね?」

「わかってるって! 足腰には自信があるから! 有奈! 鉢巻一杯取るんだよ!」

「うん!」


 有奈達は、リリーと華燐が騎馬で有奈が騎手のようだ。

 そうなると、考えられる要素はあれだな。

 騎馬戦は鉢巻を取るが、水中騎馬戦となると水着が取れてしまうというハプニングがあるだろう。登録用紙にも、こう書かれていた。


 この騎馬戦において、起こりうるハプニングに対しての責任は一切取りません。


 それを承知の上で皆、参加しているようだ。

 だからこそ大人気。

 どう見ても、男の観客が多いからな。女子の参加者は……それなりにいる。ハプニングが起こらないように俺がなんとしても阻止してやる。


『お時間です!! まずは大人の部から始めます! 参加される選手の皆さんはプールにお入りくださーい!!』


 いざ出陣だ。

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