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第三話「魔力の制御」

「ここなら大丈夫! 燃えるものも壊れるものもないから!」

「おぉ。まるでシェルターみたいなところだな」


 コトミちゃんに案内されて、辿り着いたのは家の地下に造られた空間。灰色の壁と床で囲まれており、何もない広い空間。

 確かに、ここならば燃えるものもなく壊れるものもない。

 思いっきり魔法を使っても大丈夫な場所だ。


「ここは、コトミ様のため特別に造られた場所なんです! この空間は、私達で構成させた結界が張られておりまして、ちょっとやそっとじゃ壊れたり、外に音が漏れたりしません! どうです。すごいですよね! 我ながら素晴らしいものを作ったとドヤ顔しちゃいますよ。ドヤァ!」

「ドヤァ!」


 ドヤ顔するサシャーナさんを真似するようにドヤ顔をするコトミちゃん。うん、すごく可愛い。サシャーナさんも、いくつかはわからないけどはしゃぐ姿はとても可愛い。

 卓哉さんがもう三十代ぐらいだから、サシャーナさんもそれぐらいなんだろうか? 俺が召喚された異世界の獣人達は、年齢と合わない見た目が多かったからなぁ。

 人間と違って、体の成長がある一定までで止まってしまう種族もいたぐらいだ。


「それじゃ、コトミちゃん。さっそく火の玉ジャグリングをやろうか」

「やるやる!」


 大喜びでまた火の玉をコトミちゃんは複数出す。これだけの火の玉を一瞬のうちに出すとは。まだ小さいのにすごい。

 だけど、魔力が込められすぎている。これが普通の地面に落ちたりしたら軽いクレーターが出来上がってしまうだろう。


「まった。その前に」


 俺は、魔力を人差し指纏わせ、何もない空間に突っ込む。

 これは、俺が召喚された世界で随分と役に立った魔力空間。魔力を持っているものであるならば、誰でも使える収納スペースのようなものだ。

 ここに、ものを入れておくことでいつでも取り出す事が可能。魔力空間は、指の数だけ作る事ができる。が、複数作るにはそれなりの魔力と制御が必要になる。


 俺の場合、人差し指が重要なもの。親指が食材など。入っているものは、頭の中に自動的に思い浮かび必要なものを決めれば手に収まるんだ。

 とはいえ、食材なんかは仲間に任せていたからな。俺は、大抵魔導具とか武器とか。重要なものを受け持っていた。なので、使うとしたら人差し指がほとんど。


 帰還するにあたって、存在するだけで世界に影響を及ぼすようなものは全て置いてきた。その他は、俺の使い方次第で決まるものばかり。

 ちなみに、アイオラスを呼び出す指輪は手放す事ができないので持ってきた。というよりも、記念品だと言って無理やり持たされた、というのが正しいだろうか。

 指輪だけならば、影響を及ぼすことはないからだそうで。


「何を探しているんですか?」

「えっと……これだ」

「時計?」

「これは、魔力測定機だ。コトミちゃん。俺は君の教育係。力の制御を教える。今から、魔力値を設定するから、今日はその魔力値にするよう心がけてくれ」

「う、うん。わかった」


 ちょっと緊張気味だな。

 俺は、魔力測定機をコトミちゃんの腕に取り付け、ボタンで魔力値を設定する。今回は、小手調べってことで五十にしてみるか。


「よし。それじゃ、もう一度魔力で火の玉を作って」

「ほい!」


 これまた一瞬のうちに火の玉を作ってしまうコトミちゃんだったが。

 ビー! ビー! と魔力測定機から音が響く。

 設定した魔力値の隣に、今回コトミちゃんが火の玉に使った魔力が数値化され表示される。


「八十九か。うーん、かなりのオーバーだな」

「む、難しい……」

「コトミ様! ファイトですよ!! あの! 私もやってみていいでしょうか?!」

「別にいいですよ。機械は、まだありますし」


 苦戦しているコトミちゃんのために、サシャーナさんも一緒にやると宣言。俺は、もう一機の魔力測定機を三十に設定し、サシャーナさんに取り付けた。

 サシャーナさんなら、これぐらいは可能かなと思ったのだが。


「わひゃ!? 四十もオーバーしちゃいました!!」

「むむ……さっきよりは下がったけどまだ」


 何度も、何度も設定した魔力値にしようと試みている二人だったがそう簡単にはいかないようだ。そんな二人を見て、頭を掻く。


「ちょっと難しかったかな?」

「難しい!」

「難しいです!!」


 やっぱり、いきなりこういうのは難しすぎたか。それじゃちょっと趣旨を変えていこう。コトミちゃんは、遊び盛りな年頃だし。

 遊びながら魔力制御をやってみるか。


「それじゃ、こういうのはどうだ?」


 俺は、コトミちゃんから魔力測定器を取り外し、大きさが全然違う複数の火の玉を俺は作り出した。


「これは、十から百までの火の玉だ。今から、火の玉合戦をしよう。コトミちゃんも、俺の真似をして火の玉を作ってみて」

「火の玉合戦! 楽しそう!! よーし!!」


 今度は、遊びというものを入れることでコトミちゃんのやる気を底上げした。その効果もあり、難しい顔をしていたコトミちゃんもパッと明るい表情で火の玉を作り出す。


「これでいい?」


 まだまだ制御の仕方は雑だ。見た感じ、二十と四十辺りはないだろう。だけど、やっているうちに慣れてくるだろう。


「よし。それじゃ、火の玉合戦開始だ!!」

「まずは、これだ!」


 俺の見立てから、今投げた火の玉の魔力値は七十と言ったところか。ならば、同じ七十の火の玉を投げて。


「そら!」

「わ!?」


 相殺させる。

 空中でぶつかり合う火の玉は簡易な花火のように弾ける。その光景を見たコトミちゃんは目をキラキラと輝かせ、俊敏に動き出す。

 早いな。

 やっぱり、並大抵の獣人ではないってことか。


「こっち!」


 と、背後に回りこんだコトミちゃんが八十ほどの火の玉を手に構える。


「これで!」


 でもまだまだ子供ってところかな。回り込んだまでは良いけど、声に出しちゃ場所を教えているようなものだ。

 反応が少し遅れても、対処はできる。


「わは! また弾けちゃった! すごいよ、刃太郎お兄ちゃん!!」

「楽しんでもらえているなら、嬉しいよ。だけど、これは遊びであっても教育だ。教育係としては、もうちょっと魔力値を均等にして火の玉を生成してくれると嬉しいな」

「むう……だって、いきなり言われても難しいだもん!」

「難しく考える必要はないって。コトミちゃんには、才能がある。だから、こうして俺と火の玉合戦をしながら徐々に慣れていけば良いんだ」


 難しく考えれば、それだけコトミちゃんに負担をかけることになる。彼女の場合は、考えるよりも実践で慣れろ、が一番だと判断した。

 とはいえ、いつまでも続けるわけじゃない。

 魔力が少なくなれば、それで終了だ。

 それにまだ、世界を滅ぼしかねない、という雰囲気はない。多少力が強いだけで、いたって普通。まあ、今の段階ということでだが。


「そういうことなら! どんどんいくよ!!」


 俺の言葉に、コトミちゃんは十を越える火の玉を一瞬にして作り上げた。魔力値は、どれも高め。そのうち二つは、今までよりも低く六十と設定した五十に近い。

 もうここまで……成長が早い? それとも才能? どちらにしても、未来が楽しむになる子だ。


「ああ! とことん付き合ってやるぞ、コトミちゃん!!」

「うぅ……うぅ……! もう堪えられません! 私も、参加させてくださーい!!」


 ずっとうずうずしていたサシャーナさんは、とうとう火の玉合戦に参加し始めた。しかし、出現させたのは火の玉だけではなく水の玉、雷の玉などの他属性も混ざっていた。


「うおっ!? サシャーナさん! これは火の玉合戦ですよ!?」

「わーい! サシャーナもやるの!? じゃあ、もっと火の玉出さないと!!」

「今日はフィーバーだぜー!!」

「ああもう! 収集がつかない!! これは、一応教育なんですよ! 忘れないでくださいよ!!」

「わかっておりますとも!! でも、楽しそうなことに首を突っ込むのが私なのです!!」


 卓哉さん、この人本当に大丈夫なんですか? 色々と大変なことになると俺は今までの経験で思ってしまっている。

 トラブルメーカーにならないことを祈る。

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