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第十四話「鏡の迷宮」

どうも。

この作品も、ついに累計PV百万を超えました。

これも皆様のおかげです! これから、頑張って執筆していこうと思います!

「あうあぁ……さ、さすがに回転系連発は無茶しすぎましたぁ……」

「おい、大丈夫か? ロッサもあれは回しすぎだぞ」

「なに? 我が悪いのか? あれは、リリーがもっと回せというから回しただけだ」


 ローリングシップに乗った後、次の乗ったのはぐるぐるカップだ。

 色んな形をしたカップに乗って、自分で回転させる乗り物。

 まさか回転系連発とは思っていなかったが、リリーがテンション高めにハンドルを握っているロッサに対しもっと回せと言った結果……下りた時には、口を押さえ足元がおぼつかない状態になってしまった。


「いつも言ってるが限度ってものを考えろ。ほら、リリー。歩くのが無理ならしばらく休んでろ」


 近くに丁度ベンチがあったので、俺はそこへリリーを導き座らせる。

 遊園地に来て早々、ベンチの世話になるとはな。


「はふぅ……ちょっと落ち着きました」

「そっか。次からは、もうちょっと安全にいこうぜ。な?」

「はい、わかりました。それにしても、二人はすごいですね。あんなに回転していたのに平然としているなんて」


 確かに、普通の人ならばリリーと同じ状態になってもおかしくはない。とはいえ、俺も平然としいるわけじゃない。

 多少は世界が回っている。鍛えているとはいえ、あれだけの回転を体験すれば、な。

 勇者としての力、というか回復力がすごいんだ。


「鍛え方が違うのだ。なに、気にすることではない。貴様は、普通の人間。我らとは違うのだからな」

「俺も一応は普通の人間なんだけどな」

「貴様は、勇者だ。普通の人間に、我は殺せはしない」


 まったく、俺はこいつにとっては勇者という人種として認識されているようだ。


「ふう。お待たせしました! もう回復しましたので、次に行きましょう!!」


 ベンチで休んでいたリリーは、ぴょんっと跳ねるようにベンチから離れる。


「もう少し休んでいてもいいんだぞ?」

「いえいえ! せっかく遊園地に遊びにきたんですから。もっと遊びませんと!」

「ならば、次はここに行くとしよう!」

「どこだ?」


 パンフレットを広げ、ロッサが指を差したところは鏡の迷宮だった。

 ここは、どれだけ早く迷宮を抜け出せるかというタイムアタックも出来る場所だ。普通に鏡で囲まれた迷宮を楽しむ、ということもできるのだが。


「お前、まさか」

「察しがいいな。そう! 今日はここで勝負だ! 刃太郎よ!!」


 はいやっぱりー。

 そう言うと思っていた。こいつは、こういう日ぐらい俺との勝負を忘れていればいいのに。


「勝負かぁ。あ、じゃああたしも参加していいかな? ロッサ」

「なに? リリーもか? ……ふむ。それも一興! さあ、刃太郎よ。貴様はどうするのだ?」


 リリーは、勝負事が好きだな。

 色々とロッサに似ているのかもしれない。えーっと、タイムアタックをした場合、最高記録を出した者にはここでしか手に入らない限定アイテムをプレゼント、か。

 限定アイテムと聞くと、ちょっと惹かれてしまう自分がいる。

 よくあるよな。

 コンビニとかそういうところで、限定! とか新発売! とかそういうのを見ると衝動的に買ってしまうんだ。


「しょうがない。俺も参加する」

「決まりだな。では、鏡の迷宮へといざ!」

「わーい!」


 そして、ぐるぐるカップから少し歩き鏡の迷宮へと辿り着いた俺達。出口は二つ。左側が普通に楽しむ用のもので、右がタイムアタック用だ。

 大体は、左側に数人で入っていくのだが。


「小娘! 我ら三人でタイムアタックに挑戦する!!」

「こ、小娘?」

「おい、お姉さんが困ってるだろ。あ、すみません。俺達でタイムアタックに挑戦したいんですけど。手続きお願いできますか?」


 鏡の迷宮で客引きをしているお姉さんは二人。左側のお姉さんは犬耳。右側のお姉さんは猫耳だ。

 突然、見た目だけは小娘なロッサに小娘と言われ困惑していた。

 中身の年齢的には、ロッサのほうが上だろう。しかし、今の見た目では絶対通じない。俺は、ロッサを後ろに下がらせ、タイムアタックの手続きを進める。


「では、こちらにご参加されるお客様のお名前を」


 タブレットか。どうやら、ここに名前を入力して、ゴール側のタブレットにデータを送るようだ。

 俺は、全員分の名前を入力し、お姉さんの説明に耳を傾ける。


「ありがとうございます。では、ルールのご説明をします。ルールは簡単。まず一人目が迷宮へと入り、出口を目指します。ゴールした時点であちらで待機している者がゴールしたお客様のタイムがわかり次第、こちらに連絡が来ます。そうしたら、次のお客様がスタートする。このような流れになります」

「なるほど」

「では、最初にスタートする人はどなたでしょうか?」


 そういえば、決まっていなかったな。

 ここは、入力した順番に行くべきか。


「では、あたしが先に!!」

「やる気十分だな。よかろう! ゆくのだ、リリーよ!!」

「らじゃー!!」


 などと、考えているうちにリリーがスタート地点に立ってしまう。まあ、俺は最後でも構わない。今日は、皆のために提案したことだからな。


「では、位置に付いて! よーい……スタートです!!」

「いってきまーす!!」

「気をつけろよ!」


 その後、二分半ほどでリリーはゴールを決めた。受付のお姉さんも今まで一番のゴールインということで驚いていた。

 今までは、三分が最速だった。それを簡単に塗り替えてしまったと。


「やるではないか、リリー。なら、我も本気を出さなければなるまい」

「それでは、次のお客様。どうぞ!!」


 気合い十分のロッサ。

 何かやらかすんじゃないかと思っていたが……別にそんなことはなかった。とはいえ、リリーのタイムを軽く越える。

 受付のお姉さんはもちろんのこと、周りにいた人々も驚愕。

 なんと、一分四十秒というありえない速度でゴールしたとのこと。あいつ……絶対、リリーの気配を辿って迷宮を突破したな。

 まあ、俺も何も言わなかったし。騒ぎが起こっていないからよしとしよう。別の意味で騒ぎになっているけど。


「そ、それでは。次のお客様」


 お姉さんも、周りの人達も次々に最速タイムを叩き出すため、俺も更に上を行くんじゃないのか? と視線を集中させている。

 やればできそうだけど、俺は普通にいかせてもらうとしよう。


「へぇ。こうなっているのか」


 迷宮に入り、俺は迷宮の中を楽しみながら進んでいる。

 鏡の迷宮というだけあって、鏡がいたるところに張られている。どこを向いても、自分が映っているため分身でもしたかのようだ。

 とはいえ、全部が全部鏡ではない。

 全部が鏡だと、光の反射で目が痛くなるかもだからな。


「さて、俺は何分ぐらいでゴールしようか」


 リリーとロッサの中間ぐらいで、いいかな? いや、勝負は勝負だからな。負けないようにいくか。そうと決まれば一気に! と思った刹那。

 俺を狙う殺気を感じる。


 バリィン!!


 傍の鏡が派手に割れ、黒き槍のようなものが俺を襲う。殺気を感じていたため、避けるのは簡単だった。


「おいおい。まさか、こんなところで襲ってくる馬鹿がいるとはな」

「……」


 少し広い場所に転がり込んだところで、俺を襲った奴を発見した。

 般若の仮面を被ったフード姿の男。

 しかも、宙に浮いている、


「お前がやったのか? その力……ザインのだな」

『……』


 答える義理はないってことか。

 無言のまま手をかざし、四方八方から割った鏡の破片と共に黒き槍が襲ってくる。ちっ、周りになんて迷惑な攻撃だ。

 絶対これ、外に響いているだろうな。

 あぁ! どうやって誤魔化そうかな……。


「風よ!!」


 詠唱しておいた風属性の魔法にて鏡の破片を吹き飛ばしながら、黒き槍を避けていく。


「おい! 攻撃をするなら迷惑のかからないところでしろ!!」

『……死ね!!』


 おいおい今度は、直球な言葉だな。

 でも、この殺意……マジだ。

 早いところ、迷惑のかからないうちに気絶させないとな。般若の背後から、また攻撃がくるかと思い、俺は飛び出した。

 しかし、俺の予想とは裏腹に般若は吸い込まれていく。


「お、おい! 待て!!」


 なんだったんだ、あいつ。

 でも、ザインの力は前感じたものよりも強力になっている。そのせいか、般若が誰だったのか気配ではわからなかった。


「たくっ。楽しい日曜日だっていうのに。……これは一波乱きそうだな」


 さて、さっきの奴もそうだが。


「とりあえず、直しておくか」


 周りに散らばった鏡の破片。

 これをこのまま放置しておくのはな。眉を顰めながらも、俺は魔力で鏡の破片を操作し、壁に貼り付けていく。

 この世の中のものは、魔力。自然エネルギーに満ちている。だから、こうやって魔力で修復することも可能なのだ。

 でも、俺修復がそこまでうまくないからな……。


「あ、やべ」


 修復が終わったと思った箇所にまだひびがある。俺はそーっと指に魔力を込めてなぞった。すると、ひび割れた箇所は綺麗になる。

 こんなものかな。

 後は、外に出た時の対処だけど。


「ゴール! 威田刃太郎さんのタイムは四分五十秒です!」

「え?」


 俺は目を丸くしていた。

 言い訳が決まらないままゴールして焦っていたが、お姉さんは何事もなかったかのようにゴール宣言をした。

 ど、どうもと頭を下げながら先にゴールしたリリーとロッサのところへと歩いていく。


「あ、あの! さっきすごく大きな割れる音がしたような気がしたんですけど」


 俺が到着すると、すぐにリリーが心配した様子で俺に問いかけてくる。やっぱり、ガラスが割れた音は響いていた。

 なのに、あのお姉さんは何事もなかったかのように。


「おい、お前。記憶操作、したか?」

「なんのことだ?」


 ロッサが記憶操作をしたと思っていたが、そうではないようだ。

 じゃあ、なんで? 


「ところで、刃太郎よ。……先ほどの気配。あのザインという男だな?」


 声を潜めロッサが問いかけてくる。俺は、静かに頷きもう一度鏡の迷宮を見た。


「どうやら、相当パワーアップしているみたいだ。協力者もいたようだし」

「そうか……まあ、狙われいるのは貴様だ。我は、関係ないということだな。それと今回の勝負はなしにしてやる。邪魔が入ったからな」

「お、おい!」


 小さく笑いロッサは先に進んでいく。邪魔が入ったからなし、か。俺に甘いとか言っておきながら、お前も甘くなってきているんじゃないか? 

 明らかに、俺に殺意を持っていた。この世界で俺に殺意を持つような人なんていな……くはないか。でも、さすがに殺意っていうのはちょっと。


「あ、あの刃太郎さん?」

「あっと。ほら、リリー。ロッサに置いてかれるぞ!」

「は、はい!」


 だけど、もしあの般若が俺の予想通りの人物だったら……関係なくはないと思うぞ、ロッサ。

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