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第十三話「天宮遊園地」

「きたー!! 天宮遊園地!!」


 日曜日だ。俺達は、約束通り遊園地へと訪れていた。

 天宮遊園地。

 日本が誇る大富豪天宮龍造の息子である天宮卓哉がオーナーとして作った遊園地。この遊園地が人気なのは、入場料の安さもあるが、最新の技術で作り上げたVR体験ができる施設にある。


 いくつものジャンルから選び、それを自由気ままに体験する。

 制限時間は十分となっている。

 一斉に体験できる人数は五人まで。毎回のように、長蛇の列になっているそうだ。この遊園地は、俺が、異世界に召喚されてから半年後に作られたらしい。


「何度か来た事があるけど……やっぱり、すごい人気」

「それに今日は日曜日だから、本当に人が多いね……」


 とはいえ、有奈達は学生であるため長期休み以外は土曜日と日曜日か祝日しか休みがない。俺も、シフトの都合上三人に合うのは日曜日以外しかないのだ。

 だから、日曜日を選んだのだが。


「いやぁ、予想はしていたけど。すごい数だな、こりゃ」

「はっはっは!! よいではないか!! これだけ人が多いと我は、逆に気分が高揚するぞ!!」

「だよね! だよね!! よーし!! 今日は思いっきり楽しもうー!!」


 それにしても、ロッサの服……舞香さんが選んだそうだが。

 はっきり言って、可愛い。

 見た目だけは、美少女だからなぁこいつ。

 白いワンピースというシンプルなものだが……ツインテールだった髪の毛を下ろしたことで、印象も変わって白いワンピースに抜群にマッチしている。


「おい、お前達! はしゃぎ過ぎて怪我するなよ!!」

「ほら、有奈もいこう」

「何から乗ろうか? 華燐ちゃん」

「やっぱり定番のジェットコースターって言いたいところだけど……あそこは人多そうだからなぁ」


 各々、パンフレットを片手にどの施設へ行こうかと相談している。

 いい具合に楽しんでいるな。

 有奈も、なんだか普段よりも柔らかい雰囲気だし。


「刃太郎さん!」

「うお!?」

「刃太郎よ!!」

「な!?」


 さて、有奈と一緒に遊ぼう! と思った刹那。先に行ったはずのリリーが右から、ロッサが左から現れがっしりと腕を掴む。


「何を突っ立っている! ゆくぞ!!」

「今日は、刃太郎さんとの思い出をいっぱい作りまーす!!」

「あ、有奈あああ!! 昼に合流しよおおおお!!!」


 金髪と銀髪の美少女達に、引っ張られ俺は天宮遊園地を駆けた。

 リリーもテスト頑張ったからな。

 テストという悪魔から解放されたんだもんな。だが、ロッサがいるということは、疲労も二倍、いやそれ以上になりそうだ。

 この前のゲームセンターの時の比ではないだろう。


「それじゃ、手始めにローリングシップに乗りましょう!!」

「あのぐるぐる回っている船か! なかなかの絶叫を上げているではないか!」


 おおっといきなりハードなものを。

 でも、俺はもっとハードな体験をしているからどうってことはないんだけど。問題は、リリーだ。このテンションがどこまで続くか。


 ローリングシップとは、さっきも言ったがぐるぐると回転する船だ。

 しかも、回転は回転する毎に速度があがる。

 あんなに回っているのに、船が吹っ飛ばないのか? と心配されていたがこれまでそんなことは一度もない。

 いったい、どんな素材で作られているんだ? と思われるほど。ここの施設全ては頑丈なんだそうだ。


「はーい! ローリングシップにお乗りになるお客様はこちらの列に並んでくださーい!!」


 客引きをしているお姉さん……なんでウサギ耳を?


「あ、気になりますか? あれ、オーナーの趣味なんだそうです。動物が大好きらしくてですね。それでここで働く女性は付け耳をつける規則になっているそうなんです」


 俺がお姉さんの姿に困惑しているとリリーが教えてくれた。俺が調べたのは、この遊園地のことについてだけ。

 オーナーの趣味までは知らなかった。

 女性だけに獣耳をつける規則? ……まさか、オーナーって。 


「ほう? 亜人がいるのかと思ったがあれはつけ耳であったか」


 亜人か……懐かしい。

 まだそれほど経っていないけど。懐かしく思ってしまうのは、まだ異世界が忘れられない証拠か。

 帰還して一ヶ月。

 あっちでは、そんなに経ってないんだろうなぁ。


「それでは、次のお客様。お席にお座りください。安全のため、しっかりとベルトをしてください!!」

「このようなものをするのか。これでは、爽快感が薄れてしまうではないか」

「こっちでは、安全のためにするんだよ。いいから、お前もベルトをしろ」


 いつまでも安全ベルトしないので、俺は無理やりつけてやった。

 ローリングシップは、一列十人まで座れるようになっており、五列設置されている。つまり、一度に五十人までローリングシップを楽しめる。


「お客様、準備はよろしいですね? では……レッツ! ローリング!!!」

「きゃああ!!」

「わあああ!?」


 回転した途端に、他のお客さん達が叫びを上げる。そんな中で、俺だけが沈黙している。


「ひゃああ!! どんどん速度が上がってきましたよー!! 刃太郎さーん!!!」


 リリーは思いっきり楽しんでいる。怖がってはいないようだ。そして、ロッサだが……。


「まだだ! まだ回転が足りぬぞ!! こうなったら我自ら!!」

「やめい」

「いたっ!?」


 魔力により回転を早めようとしたので、俺がチョップで止めた。普通の人なら、この回転でも十分だ。それをもっと早めようなんて。

 頑丈に作られている施設でも、壊れる恐れがある。

 有奈達は、なにをしているかな? 今頃。





・・・☆・・・





「うーん。確かに怖いけど……本物で慣れているからなぁ」

「わ、私はまだ慣れないかな……」


 現在、有奈と華燐はお化け屋敷に来ていた。

 一部だがバーチャル映像を使って人間では不可能なところから現れ、よりリアルな怖さを出しているようだ。


「それにしても、有奈が一緒に来てくれるなんて」

「華燐ちゃんには、お世話になってるから。私じゃ、役に立てないかもだけど。一人よりは安心できるかなって」

「ありがとう。へぇ、こういうのもいるんだ。創作物だからできることだね」


 飛び出してくるお化け達を怖がることなく観察する華燐。


「そ、それにしても華燐ちゃんはこういうところは避けていくかと思ったのに」

「まあ、正直行きたくはなかったけど。依頼が入っちゃったから。しかも、結構な金額だからってお婆ちゃんがね」


 依頼? と有奈は華燐にくっつきながら首を傾げる。依頼のことは、有奈も知っている。今でも、世の中には悪さをする霊達が蔓延っている。

 それを祓うのが霊能力者。

 銃や剣などでは、対抗できないため自衛隊などにも頼む事ができないのだ。


「てことは、お化け屋敷に本物が?」

「うん、ほらあれ」

「え?」


 静かに、指差す方向にはとてつもなく大きな髑髏のお化けがこちらを睨んでいた。


「ば、バーチャル映像じゃ、ないんだよね?」

「うん。今は、普通に人を驚かせているだけなんだけど……これ以上力が大きくなれば、怪我を負わせるような事態になるかもしれない。だから、今のうちにって」

『て、てめぇ!! 俺のこと見えてるのか? てーことは、霊能力者か!!』


 有奈には元々幽霊は見えていなかった。しかし、華燐と一緒にいるようになってからリリー同様に見えるようになったのだ。

 とはいえ、まだ普通の霊しか見えていない。


『ここなら、誰にも見つからず力を蓄える事ができるって思っていたのによ……』

「あなたに恨みはないけど。これ以上人に迷惑をかけるなら容赦しないよ。大人しく、成仏してくれないかな?」


 今日は、思いっきり楽しむ予定だった。

 だから、あまり力は使いたくない。大人しく成仏してくれれば、楽なのだが。


『うるせぇ! 俺は、このまま力を蓄えて最強になるんだああ!!』


 どうやら交渉は失敗のようだ。

 しょうがないなぁっとため息を漏らし、華燐は左手で有奈を守りながら右手に霊力を込める。


「言っておくけど、あなたは最強にはなれないよ」

『ぐああああ!?」

「だって、私に負けているようじゃ無理だから」


 今回も一撃にて、霊は祓われた。


「さすが華燐ちゃん。また一撃で倒しちゃったね」

「さっ。早いところここを抜けて、遊園地を楽しもう」

「うん。この次は、シューティングパレードだからね!」

「はいはい」


 いつもよりも楽しそうにしている有奈の姿を見て、華燐は小さく笑う。

 が、そんな時だった。


「ん?」


 何かの気配を感じ取った。しかし、それは一瞬にして消える。まさか、まだ霊が残っていた? そう思い、意識を集中させるが……感じられない。


「気のせい、だったのかな?」

「華燐ちゃん! どうしたのー?」

「なんでもない」


 なんだか、嫌な予感がする。

 先ほどの気配が気になるが今は、遊園地を楽しもう。

 華燐は、有奈と共にお化け屋敷を早々に抜け出し、シューティングパレードへと向かった。

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