プロローグ~ハロウィンに向けて~
今日から数日にかけて、特別編を投稿します。
よろしくお願いします。
そして、電子書籍五話が配信中!
それは、九月も下旬に入った時のことだった。
いつものように学校の職員室で、生徒達に出したテストの採点をしていたところへ、ニィがひょっこりと現れたんだ。
数日前から、何かの準備のために姿を消していたのだが、もう終わったのか?
「ニィ、おかえり。もう用事は終わったのか?」
一度、赤ペンを置いて俺はニィに問いかける。
「はいなのです! もう九月も終わる時期。そして、十月に入るのです。ちなみに十月と言えば?」
「十月? ……体育祭?」
「違うのですよー、ほら? あの時のことを思い出すのです。楽しい楽しい一日を! ヒントは仮装! なのです」
仮装? ああ、そういうことか。俺の頭の中には、なんだか懐かしい思い出が蘇る。まだ、俺が神様でも教師でもない頃。
目の前の先輩神様が楽しげに用意したあの空間。
「ハロウィンか。でも、ハロウィンって言っても、まだ一ヶ月は先だぞ? 気が早いんじゃないか」
だけど、世間ではもうハロウィンに向けて準備をしているところもあった。それは俺が、自分の目で見てきたから間違いない。そういえば、去年は忙しくてあの時みたいなことはできなかったけな。まさか、ハロウィンの準備のためのこの数日いなかったってことか?
「そんなことないのです。去年の分も、今年は最高のハロウィンにしてみせるのです。だけど、問題があるのです」
「問題?」
ニィが問題と言えば、それはただ事じゃない。大抵のことはやってみせるニィだ。そのニィが、問題だということとは一体?
「実は、ハロウィンの精霊が消えちゃったのです」
「は、ハロウィンの精霊?」
そんなものがいたのか。ハロウィンってことだから、かぼちゃの頭でもしてるんだろうか……。
「はいなのです。毎年、ハロウィンが最高に賑わっているのはそのハロウィンの精霊が居るおかげ。だけど、その精霊がいなくなったせいで、今年は半分も盛り上がらないこと間違いないのです!!」
そこまで影響を及ぼすのか。でも、ニィが言うなら間違いないだろうな。このままハロウィンの精霊とやらがいないままハロウィンを迎えれば、いつもよりも盛り上がりは半減……いや、それ以上かもしれない。
「それで? 俺は、何をすればいいんだ」
「ふふ、話が早くて助かるのです。リフィル!!」
「はいはい。あたしもやりますよ、やらせてもらいますよー」
いつも通り、めんどくさそうな声を漏らしながら現れる残念美人神様。そういえば、こいつもニィと一緒にいなかったんだっけ。
「さあ!! ハロウィンのために、この謎を解明! そして、ハロウィンの精霊を取り戻すのです!!」
「はあ……めんどく、あいえ! なんでもないです!」
「その前に、採点を終わらせてからな。ニィとリフィルも手伝ってくれ」
「はいなのですー」
それにしても、前回は夏がなくなったと思ったら、次はハロウィンの精霊か。世界が変わってから、色々とおかしなことが頻繁に起こるものだ。だけど、これも俺達が解決しなくちゃならないことだ。それが、神様となった俺がやるべきこと。
変わってしまったこの世界を……。




