異世界から帰還して地球かと思いきやまた異世界でした。
前回とは違い番外編のようなものです。
もしもこうだったら?
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「帰ってきた……地球に!」
俺の名は、威田刃太郎。平凡な高校生だったが、突然異世界から召喚魔法で勇者として召喚され、世界を救ってくれと言われ、その役目を終えた。
待っている家族のために、急ぎ地球へと帰還したのだが……。
「……あれ?」
周りを見渡すも、見覚えの無い光景だ。帰還魔法を使って、俺を地球へ送ってくれた人の話では、自宅近くだと言っていたはずだが、どう見ても森林地帯だ。
まさか、座標がずれたのか?
いや……座標がずれたとかそういうレベルじゃない。マナが薄い? いや、無いに等しいか? どういうことなんだ。地球は、異世界とは違ってマナは濃くないにしろ大気中に漂っていると聞いていたのに。
魔法を使う時の魔力を生み出すために必要なものだ。大体は、生物の体内にある魔力があればしばらくは大丈夫だが、無くなると大気中のマナを吸い込みそれを魔力へと変換する。
まあ普通に呼吸しているだけで、マナを吸い込むことができるから、考えてやることはないんだけど。
「とりあえず、移動するか」
いつまでも、森林地帯で突っ立っていても何も始まらない。俺は、軽く跳ねて近くの木を登っていく。天辺に到着した俺は、周りを見渡す。
「やっぱり地球じゃないのか?」
もしやと思っていたが、どうやら俺は地球じゃないところに飛ばされてしまったようだ。少し移動して、地球らしいところが見つかればこれを使うことはなかったんだけど……。
俺はポケットから魔方陣が刻まれた板を取り出す。
これは、もしもの時にと渡された転移魔法を使えるようになる神具だ。一度使えば、しばらくエネルギーをチャージするためクールタイムがあるが、まさかもう使うことになるなんて。まさか、あいつ……こうなることを予想していたんじゃないだろうな。
「っと、その前にやることができたみたいだな」
すぐにでも使って地球に向かいたいところだったが、体に染み付いた性分ってやつなのか。目に入った困っている人を助けずにはいられない。
黒煙上がる町、暴れる機械の巨人、逃げているゴーグルをした一人の少女。まずは、あの子を救助だ。
「わわ!? な、なんですか!? あなた!!」
木の上から飛び上がり、逃げる少女の前に着地する。少しやる過ぎたか? 少女は、尻餅をついてしまった。
「すまない。怖がらないで欲しい。俺は、敵じゃない。お前を助けるために、跳んで来た」
「た、助けに? じゃ、じゃあ! あたしの町を助けてください!! お願いします!!」
すぐに信じてくれるとは思っていなかった。けど、それだけ切羽詰っているということだろう。翡翠色の長い髪の毛が地面につくほどの頭を下げる少女の肩に俺は手を置く。
ゆっくりと頭を上げる少女の不安な顔を見た後、俺は黒煙上がる町を見詰めた。
「大丈夫だ。信じてくれるかわからないけど、これでも世界を救った勇者なんだぞ?」
「ゆ、勇者?」
「だけど、機械の巨人と戦うのは始めてかもな」
色々と聞きたいことはあるけど、今は。
大地を力強く踏み、俺は一気に町を襲っている機械の巨人へと近づいていく。
「これでどうだ!!」
『ぐぎゃあ!?』
右拳で思いっきり機械の巨人を殴った。その勢いのまま、町から離れ平原に倒れる。まさかとは思うけど、さっき喋ったか? この機械の巨人、喋るのか?
「な、なんだ?」
「ひ、人が巨兵を吹っ飛ばしたぞ!!」
「あ、どうも。助けに来た者です」
軽い挨拶を終え、俺はその場から離れていく。まだ、機械の巨人はやられていない。このままだとまた町を襲う可能性がある。
それにしても、町の人達から魔力を感じられなかった。それにこの機械の巨人……まさか、魔法がないのか?
『お、お前。俺を吹き飛ばすなんて、人間か?』
町を襲っていた機械の巨人。この世界の人達は巨兵と言っていたが、でかいなやっぱり。おそらく五メートル以上があるだろう。
まるで、よくあるブリキのようなデザインだが。
「まあ、一応人間だ。世界を救った勇者って名誉があるけど」
『勇者だと? はっはっはっは!!』
何がおかしいんだろう?
『お前! 本の読みすぎじゃないのか! 勇者なんて名乗ってる奴など、子供ぐらいだぞ!!』
「……なあ、ひとつ聞いていいか?」
『誰が、お前の質問など聞くかぁ!!』
どうやら、容赦などしないということらしく、起き上がったと同時に拳を振り下ろしてきた。その巨体から繰り出される攻撃は、まさに圧巻の一言。
だけど……俺には関係ない。
『なにぃ!?』
「まったく、質問の一つぐらい聞いてくれよ。まあ、仕方ないな……話は、町の人達に聞くとする!」
『ぐごあああっ!?』
拳を掴んだまま、俺は空いている左拳に魔力を集束させ、打ち出した。腹部に円形の穴が空いた巨兵は、断末魔のような声を響かせ、目の光が消え、平原に轟音を上げ倒れた。
「ふう、異世界で巨人と戦った経験が生きたな」
「す、すげえ!!」
「あの巨兵を倒しちまったぞ!!」
さて、一仕事終えたけど……まだまだ終わりじゃないだろうな。
「って、ん?」
これから、この世界で何かをすることになるだろうと思っていた刹那。足下から見た事の無い魔方陣が展開。
「え? ちょっ!?」
ここで何かをするんじゃないのか!?
「うわあああ!?」
俺は、魔方陣によりどこかへと転移する。無事着地した俺は、周りを見渡す。何も無い……まるで、神々の領域のような場所だ。
だけど、あいつらの領域とは少し違う気がする。いったいここは?
「はーっはっはっはっはっは!!」
「誰だ!!」
「はーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」
「だから、誰だ!?」
「ひゃーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」
「……」
なんだこの声は。ただただ笑っているだけ……というかどれだけ長い笑い声なんだよ。
「げほっ! げほっ!! げほっほっ!?」
案の定、笑い過ぎて咳き込んでいるようだ。俺は、頭を掻いてその場に座り込む。
「すみませーん、早く出てきてくれませんかぁ?」
「はーい」
随分と素直だな。先ほどまで笑っていた声の主は、顔のパーツがない真っ白な仮面を被った子供。俺の目の前に現れ、ちょこんっと座る。
「それで? お前は何者で、俺の何をさせたいんだ?」
「わたちの名は、ミカエナ!! 次元王じゃ!! お前には、わたちの手伝いをしてもらうぞ!!」
「どういうことだ? 次元王さん」
「うむ。いまや、異世界召喚が当たり前になってきている。そのせいで、次元がぐちゃぐちゃなのじゃ。あっ! お前もその原因のひとつなんだぞ!!」
などと言って、俺の頬を突いてくる次元王ことミカエナ。確かに、ネット小説などでは異世界召喚などは多いけど、まさかそれが現実でもそんなに起こっているとは。
まあ、俺もその召喚された一人だから、嘘を言っているってことはないか。
「なるほど。で? 具体的には何をしてほしいんだ?」
「さっきみたいに、色んな異世界に行って、異変を解決してほしいのじゃ!!」
「やだって言ったら?」
「お前はいやとは言えない! わたちの手伝いが終わらなければ元の世界に帰れないのじゃよ!!」
なるほど、俺に選択権はないってことか。まあ、やるのはいいとしてひとつ気になることがある。
「なんで俺なんだ? 異世界召喚された者達なんてもっと居るだろ?」
そう、俺だけじゃないはずなんだ。それなのに、どうして俺なんだと。周りを見た感じでは、俺以外に人がいないし、気配もない。
「うむ、いい質問じゃ。確かに、お前のような異世界へと召喚された者達は数え切れんほどいる。だが! そのほとんどがそのまま異世界に居続けたりするから中々適任な奴がいないのじゃ」
「どういうことだ?」
「つまりじゃ。わたちが、選ぶ人選は異世界召喚されて、尚且つ何かしらの役目を終え、元の世界に帰還せんとする者なのじゃよ。それだと言うのに、ほとんどの奴らはのん気に異世界を楽しみおって……第一!! お前らは死にすぎなのじゃ!! そして!! 神々も神々じゃ!! どうして、すぐ異世界に送ってしまうのじゃ!? そのせいで、次元がダメージを受けてしまい、バランスが崩れていくというのに! それを直すわたちの身にもなってほしいのじゃ!! ぷん! ぷん!!」
ぷんぷんって……それを自分の口から言うのか。確かに、ネット小説では勇者召喚的なものよりも、何かしらの理由で死んで異世界に送られる話が多いけど。
あれって、次元とかそういうのにダメージを与えちゃうようなことだったのか。そうなると、次元は相当なダメージを受けていることになるな。
「ま、まあまあそう怒るなって。俺達だって好き好んで死んでるわけじゃないんだから。俺は、死んでないけど」
「そうかぁ? おぬしら、まさかとは思うが異世界に行きたいがゆえにわざと死んでるわけじゃあるまいな?」
「まさかそんな! 第一、俺だって異世界なんて自分で体験するまで空想の存在だと思っていたんだぞ? それに誰だって、自分の命は大事だって」
「……そうか、まあそういうことにしておいてやる」
「ありがとうございます」
まったく、何なんだろう? この小さいのは。次元王ってことは、神々かと思っていたけど。さっきの口ぶりから察するに神よりももっと上位な存在なのかもな。
はあ……とんでもない奴に捕まってしまった。俺は、早く地球に帰って、家族に会いたいのに。
「まあ、そういうわけでじゃ! お前が、代表として次元バランスを安定させるためわたちの下で働いてもらう!」
「お、俺一人でか? さすがに、それは」
「心配するな。誰もお前一人とは言っておらん。後に、お前のような存在を第二、第三と増やしていく。ま! それまでは、お前一人で頑張ってもらうがな! はーっはっはっはっはっはっはっ!!!」
それは、いったいいつになることやら……これは、勇者以上に大変な役回りになってしまったな。
「あっ、そうじゃ。働きに行く前に、わたちと茶会をしろ」
「なんで?」
「誰かと喋るのは久しぶりなのじゃ。付き合え」
「……はいはい」
こうして、俺は複数の異世界を救い、次元のバランスを安定させる使命を強制的にやらされるのであった。




