第六話「自分らしく」
今日中に、新作を投稿するかもしれません。
「本当にすみませんっす……」
「謝れるだけよしとしよう」
「えー? 許しちゃうのですか?」
地球を襲った夏が消える異変は解決した。地球には、暖かな日差しが戻ってきている。夏を奪った張本人であるクロッサは、俺達を前に土下座をしていた。
背後には、次元ホールがあり、これからクロッサを元の世界へ送り返すところなのだ。
「まあまあ、いいんじゃないの? ほら、夏って暑過ぎてうんざりする時があるでしょ? だから」
「リフィルは黙ってるのです。肝心な時に、ゲームをしたり、寝惚けていたのを私は忘れないのですよ?」
「ひっ!? す、すみませんでした……」
そういえば、途中からこいついなかったっけな。なにをしているかと思いきや、まさかいつも通りゲームとかしてのんびりしていたとは。
「それで? ちゃんと約束を守れるんだろうな?」
「ま、守るって! マジで、もう地球にはこないから! むしろ来たくねぇ!」
ちらっとニィのことを見て、震えるクロッサ。あぁ、これは完全にトラウマを植えつけられているな。俺達が宇宙に行っている間、どんな仕打ちを受けていたのか、想像しただけで俺も震えてくる。
年を重ねるごとに、Sっ気が増してきているな。
「わかったわかった。もう二度と来ないように、ニィも色々と覚醒しそうだから」
「お、おう!!」
そう言って、立ち上がり次元ホールに入ろうとした刹那。
「待つのです」
「ひっ!?」
ニィに呼び止められた。
「これを持っていくのです」
「な、なんだこれ?」
ニィが渡したのは、何かの宝石だ。感じられるオーラは、ニィの神力だ。それ以外はなんの変哲のない宝石だが。
「目印なのです」
「め、目印?」
「もしも、何かの拍子にここに来ても、すぐ気づくのです。なので、肌身離さず付けておくのですよ?」
なるほど、そういうことか。自分から来ないとは言っても、今の地球とそれを取り巻く空間は不安定だ。また何かの拍子の他の異世界人達のように、流れ着く可能性がある。
クロッサは、おぞおずとニィの掌にある宝石に手を伸ばす。
「お、おう。その時は、お手柔らかに」
「はいなのです。敵対しなければ、私もあそこまでのことをしないのですよ」
にっこりと笑う眩しい笑顔は、なんていうか……若干恐怖を感じる笑顔だった。俺には、ちょっとなのにクロッサには、最大限の恐怖が与えられたようだ。
「それじゃ、今度こそじゃあな。もう二度と悪さするなよ」
「わかってるよ……」
また呼び止められるんじゃないかと思っているのか、ちらっとこちらを見詰め、ニィの笑顔を確認したところで次元ホールへと姿を消した。
静寂に包まれた空間で、俺の後ろに隠れているリフィルを前に出した後、ニィに伝える。
「さあ、俺達も仕事をしよう」
異変が収まったが、地球はまだまだ不安定だ。神になった俺は、故郷である地球のために色々とやらなくちゃならない。
「えー、あたしも?」
「そうだ。後で、イベントとか色々手伝ってやるから」
「じゃあ、仕方ないわね。あたしがいいって言うまで付き合ってもらうからね」
「だったら、それなりの仕事をするのです。最近のリフィルは怠けすぎなのですよ」
そうだ。元々居る地球の神様にも手伝ってもらわないとな。俺は、明日の授業の準備で忙しいからな……。
「ところで、有奈達はどうしたの?」
「刃くんの言いつけ通り、ロッサ達とバカンスをまだ楽しんでいるのです。せっかくの南の島だったのに、半日も無駄にしちゃいましたから」
「俺達も、今日やることをぱぱっと終わらせて、有奈達と合流しよう。俺も休日を楽しみたいからな」
「待ちなさいよ。あんたは、仕事が終わったら、あたしとゲームするんでしょ?」
「今日とは言ってないぞ」
「なっ!?」
こいつとのゲームはまた次の休みだ。じゃないと、こいつは下手をすればいつまでもやるからな。時間が無い今日を使うわけにはいかない。
今日は、有奈達と楽しむほうに回すって決めたからな。
「神が嘘をつくの!」
「お前だって、よくつくじゃん」
「まったくなのです。リフィルは、もう少し神としての自覚を持ったほうがいいのですよ」
「はいはーい、仰せのままにー」
神としての自覚か……俺も神として、色々頑張ってるけど、今でも実感湧かないなぁ。元が、ただの人間で、そこから勇者、そして神様か。
ホップ、ステップ、ジャンプ、じゃなくて、一気に飛び上がった感じだな、俺って。
「なあ、二人とも」
「何なのです?」
「なによ?」
「俺って、神様っぽいか?」
と、二人に問いかけたところ。
「神様っぽくはないのです。刃くんは、刃くんだと私は思うのですよ」
「あたしも、同意権ね。力そのものは神様だとしても、あんたはあんたって感じね。どうしたのよ? いきなり」
俺は、俺か。やっぱりそうだよな。
「いや、なんでもない」
俺は、嬉しそうに笑い歩き出した。




