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これからは

一ヶ月遅れの一周年記念の話。

今日から、パソコン解禁なので明日からはどんどん作品を投稿していくつもりです! 

「こらー。今は授業中だぞぉ」

《はーい》


 俺は、多種族の子供が集まる賑やかな教室を見詰め、俺は眉を顰める。地球が、ある戦いから変化したことで人々も徐々に変化してきている。

 そのせいもあってか異世界へと続く次元ホールもいくつか不定期だが、繋がるようになっていた。

 突然繋がるため、誰にも予想できないので、平和に暮らしていたところに繋がることもあれば、危険地帯に繋がることもある。


 今、俺の目の前に居る生徒達は次元ホールに巻き込まれた子達や地球が変化したことで普通じゃなくなった子達ばかりだ。

 両方の事情を知っているため、俺達が色々と教えるべく簡易的だがこうして学校を設立したわけだが。


「せんせー」

「なんだー」


 白チョークで黒板に文字を書いていると猫耳を生やした少女が挙手をする。ちなみに名前は、美晴ちゃんだ。猫耳が生えておりファンタジーな姿をしているが、彼女は日本人だ。


「サシャーナ先生が窓から覗いてますー」

「……」


 ちらっと窓へと視線を向けると美晴ちゃんの言うようにサシャーナさんがまだかまだかと俺のことをじっと見詰めていた。

 知ってた。そりゃもう、十分ほど前から居たのはわかっていた。しかし、今は、授業中。生徒達もわかっていただろうが、慣れていたので今まで無視していたのだろう。


「サシャーナ先生。今は授業中ですよ」


 がらっと窓を開けて俺は言う。


「わかっております!」


 わかっておりますと言っているが、本当にわかっているのだろうか。


「それに、あなたにも採点という仕事があるでしょうに」

「わかっています! ですから、それを迅速に終わらせてこうしてやってきたということです」


 さすが、仕事が速い。とはいえ、どうして外から覗いているのか。


「それよりも、刃太郎さん! 本日はとてもおめでたい日だとか!!」

「おめでたい日?」


 いったい何のことだろうか。今日は、特に行事があるとか聞いていないんだけど。


「ですので、サプライズパーティーをお開きします!!」

「言っちゃったらサプライズにはならないんじゃ……」

「というわけで、こちらに会場とお時間などを記しておりますので後ほど!! おさらば!!」


 脱兎の如く走り去っていくサシャーナさん。サプライズパーティーか……。いったいどんなことをしてくれるのか。

 それよりも、今日がめでたい日ってどういうことなんだろう。


「せんせー?」

「あ、ああ。ごめんごめん。それじゃ、授業を再開するぞ」


 最近忙しくて、曜日の感覚もずれてきているし。めでたい日とかも気にしないようになってきたからなぁ。この前だって、舞香さんとの約束を忘れそうになったし……。

 いけないな。忙しいからって、大事なことを忘れるなんて。





・・・・・★





「ふう。こんなものか」


 一日の授業を終えて、やることをやっていたらもう夕暮れだ。ペンを置くと、背後から俺に覆いかぶさってくる人物が。

 とても良い匂いを漂わせている。とはいえ、俺の覆いかぶさっている人物には覚えがある。


「刃くーん。あぁ、刃くぅん!!」

「なんだよもう……」


 ひょっこりと顔を覗かしたのは、とても可愛らしい顔。クリーム色の髪の毛がふわっと俺の肩から流れ落ちているようだ。


「今日は、何の日か知ってるのです?」

「サシャーナさんにも言われたけど、今日は何か行事があったのか? ニィ」

「はいなのです。もしかして、忘れちゃってるのですか?」


 彼女、いや彼と言うべきか。もはやどっちでもいいような気がしてきたこいつニィーテスタ。付き合いだけならばサシャーナさんよりも長い神様。

 俺も神になってから、色々と教えてもらっている。学校の先生としても働いており、元々は俺が召喚された世界の三柱の内の一柱なのだが、今では新たな俺の世界の神様として助力してくれている。


「忘れている、んだろうな。でも、今日は大事な行事があったとは思えないんだけどなぁ」

「最近忙しいですからねぇ。神様としても、まだまだ慣れないことばかりで大変なのです。でも、今日は刃くんにとっては本当に大事な日なのですよ。でも、今日のサプライズパーティーで思い出すはずなのです。では、私は先に帰るのですよー」


 たく、ニィもか。教えてくれたっていいんじゃないか……。


「帰る前に戸締りをしっかりするか」


 この学校に盗みに入るような奴はいないけど。その後、俺は戸締りをしながら遣り残した仕事を思い出し、それを片付けていく。

 そして気づけば、約束の時間五分前となっていた。やばいと思った俺は、急いで学校を後にしようと玄関まで走っていくと。


「お兄ちゃん。もう、何やってるの?」

「あ、有奈? それにリリー、華燐も」


 仲良し三人組が、玄関先で待っていた。これは、俺がいつまで経ってもこないものだから、迎えに来たってところか。


「今日の主役は刃太郎さんなんですよ?」

「そうですよ! 私も、腕によりをかけてお料理をしましたから! 是非、味わってほしいんです!」

「リリーったら、すごく張り切っていたんですよ。未来のだん」

「わー! わー!!」

「もう……積極的になったと思ったら、まだなんだリリーちゃん」


 相変わらず、仲がいいなこの三人は。


「ごめんな。やり残した仕事を片付けてから行こうって思ったらギリギリになったんだ。よし! 皆が待ってる! 行こう!!」

「うん! じゃあ、お兄ちゃんこっちこっち」


 頷くと有奈が手をかざすと足下に魔方陣が展開する。転移魔法もこの一瞬で展開できるようになったんだな、有奈。

 さすがは、俺の妹だ。


「いいぞ」

「それじゃ、サプライズパーティー会場へ……転移!!」


 眩い光に包まれたと思いきや一瞬にして、風景が変わった。そして、目の前に現れたのは木の扉だ。


「ここは?」

「今日のために天宮家が用意してくれたところだよ」


 さすが天宮家。一日だけの行事のためにこんな豪華なところを用意するとは。すでに中だけど、内装だけでも豪華な建物だというのはわかる。


「ささ! 行きますよ! 刃太郎さん!!」

「予定時間まで、三、二、一!」

「オープン!!」


 予定時間になったと同時にリリーと華燐が扉を開けると。


 パン! パパァン!! と弾ける音が鳴り響く。

 これはクラッカーか? 

 パーティーってことだったから当たり前だけど。


《刃太郎!! おめでとう!!!》


 視界に広がるのは、広々とした会場に多くのテーブルと料理。そして、俺が今まで出会ってきた人達がクラッカーを持って俺を笑顔で迎えてくれた。


「え、えーっと」

「刃太郎お兄ちゃん!! おめでとう!!」

「ああ、コトミちゃん。久しぶりだね」

「やあ、本当に久しぶりだね。最近は、こっちもこっちで忙しかったからね。魔帝軍として」


 一番に俺に近づいてきたのは、コトミちゃんとコヨミちゃんの二人だ。彼女達も、徐々にだが成長している。けど、まだまだ幼さは残っている。

 それに、彼女達とも本当に会うのは久しぶりだ。なにせ、魔帝にとられてしまったからな……。


「魔帝軍とか言っても、仲良し軍団でしょ?」

「優夏ちゃん。さすがに、それは極端な答えじゃないかな?」


 続いて近づいてきたのは、コトミちゃんの友達である優夏ちゃんとそらちゃんだ。彼女達は、元々コトミちゃんのことを運動神経のいい女の子として接してきたが、今ではその正体を知り、より仲良くなっている。学校に通いつつも、時々魔帝軍の城へと遊びに行っている。

 魔帝とも仲良しだから、いつも大歓迎されてるって話だ。

 で、その魔帝なのだが。


「はっはっはっは!!! 刃太郎よ!! 今日は、貴様を素直に祝ってやろう!! はぐ! はぐっ!!」


 噂をすればやってきたな。


「祝うなら祝うで、口に物を含みながら祝ってくれよ……」


 いつものように食べ物をおいしそうに食べている銀髪ツインテールの少女。周りの人達と同じく、ドレスを身に纏っている。

 馬子にも衣装ってやつか。中々に合っていると思うが、それでも子供って感じだな。


「貴様など、バルトロッサ様に祝いの言葉を送られるだけ感謝してほしいものだな」

「光太……相変わらずだな」

「ふん。貴様も、相変わらず教師まがいなことをする毎日のようだな。そのせいで、力が弱まっていないだろうな?」


 続いて現れたのは、バルトロッサの部下であり魔族から人間。人間から魔族へと転生を繰り返した男である光太だ。

 びしっと黒いスーツで決め、ロッサの隣に立っている。


「そんなことは」

「なんなら、俺は確かめてやろうか?」


 と、構える光太だったがすぐにロッサが肉がなくなった骨で制す。


「控えよ、光太。ここは祝いの場だ。争いごとは我が許さん」

「申し訳ありません、バルトロッサ様」


 うんうん、いい上司だ。


「だが、光太の言うことも一理ある。刃太郎よ? あの時よりも力が弱まっていないだろうな? 我を失望させるなよ。忘れてはいないだろうが、この世界は我が頂く! 貴様を倒してな!! 楽しみにしているがいい!! ふははははは!!!」


 と思ったら、そうでもなかった。言うだけ言ってまた料理を食べに行ってしまった。


「よーし! 私達も行くぞー! ロッサに続けー!!」

「はいはい」

「仕方ないわねぇ」

「え、えっと失礼します!」


 まったく新魔帝軍は騒がしいな。というか、彼女達も結局今日がどんな日なのか教えてくれなかったな。この様子だと、知っていないのは俺だけみたいだな。


「困ってるようねぇ」

「リフィルか。お前、今日学校に来ないと思っていたら」

「ふっふっふ。あんたのために、このあたしが色々と用意してあげたのよ? 感謝しなさいよ」


 いつもの赤いジャージではなく、赤いドレスに身を包んでいる。こうしていると、本当に女神様って感じなんだけどな。普段が普段だけに、なんだかものすごい違和感がある。


「はいはい、感謝してますよ。ところでさ」

「あー、今日が何の日かってことでしょ? まったく、そんなことまで忘れるなんて。いい? 今日はね……あんたが、地球に帰還した日よ」

「あっ」


 そう、いえばそうだった。なんで忘れてたんだろう……そうか、去年はそれどころじゃなくてそのまま忙しい毎日の繰り返し。

 すっかり、忘れていた。


「思い出したようね」

「刃くんは、うっかりさんなのです」

「お前も教えてくれればよかったのに」


 いつの間にか隣にいたニィはにっこりと笑っていた。まあ、ニィの言うように俺がうっかりだっただけなんだけどな。


「お兄ちゃん。さあ、楽しもう。さっきも言ったけど」

「今日は、刃太郎さんが主役なんですから!」

「皆が待っていますよ。まずは、主役の言葉からです」


 そう言って、俺の手を引いていく有奈達。


「え? な、何か言うのか? まったく考えていないんだけど」

「大丈夫。お兄ちゃんだったら、アドリブでいけるよ!」


 信頼してくれるのは嬉しいけど……ちゃんとできるだろうか。


「わかったよ。俺のために、皆が用意してくれたんだもんな」


 だったら、主役として俺もそれに応えないと。それにしても、俺が地球に帰還した日か……あの時は、本当に大変だったな。

 特に。


「どうしたの? お兄ちゃん。ほら、ここに立って」

「ああ。わかってるよ、有奈」


 今となっては、昔以上に有奈は素直になってくれている。他の皆も、本当に変わったよな。


『おほん。皆、俺なんかのためにこんな素晴らしいパーティーを用意してくれてありがとう。俺自身すっかり忘れていたのに、本当に。……あまり長い話はあれなんで。皆!! 今日は思いっきり楽しんでいこう!!』


 今日からは、この日を忘れないように気をつけていこう、うん。

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