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エピローグ

ついに完結です!

 ロッサに呼び出され、俺は誰にも見つからないように移動をした。

 今この場にいるのは、俺とロッサだけ。

 どこまでも続く真新しい草原に、髪を頬を撫でるそよ風が吹く中、ロッサは振り返る。その瞳は、いつものように……いや、いつもよりも自信に満ち、やる気のある真っ直ぐなものだった。


「ついにこの日が来たな」

「なんのことだ?」


 と、俺はわざと惚けたように返す。

 いつもなら、なにっ!? と驚くロッサであるが。今日だけは何かが違う。


「惚けるな。わかっているであろう? 一年も待ったのだ……いや、一年も我は待ってやったのだ! さあ、やり合おうではないか刃太郎! 約束の真剣勝負を!!」

「たくっ。よくもまあ、一年も覚えていたな」


 俺は、空間に手を突っ込みアイオラスを取り出す。


『お? なんだなんだ。気持ちよく眠っていたのに。俺を抜くようなことはもうないんじゃなかった……なるほどな。もう一仕事ってところか、相棒』


 どうやら、状況を理解してくれたようだ。

 アイオラスを突きつけ、にっと笑いながら、俺は宣言した。


「言っておくが、今の俺は今までの俺とは違うぞ。そして、ここからは真剣勝負だ。手加減なんて、できないぞ?」


 そんな言葉を聞き、ロッサは笑い返す。


「笑わせてくれる。誰が手加減をしてくれと、頼んだ? 手加減など一瞬たりともしたのなら……我は、容赦なく貴様の命を狩り取る!! それに」


 目の前に魔方陣を出現させ、それを握り潰して見せた。

 すると、今まで感じたことのない魔力が爆発する。

 肌にびりびりと突き刺すこの感覚。

 ……なるほどな。


「我が、この一年。何もしていなかったと思うのか?」

「修行でもしたのか?」

「ガラにもなくな。見るがいい。一年みっちりと修行した結果。我は、強くなった。もはや誰にも止められないほどにな」


 溢れ出る魔力は、ロッサを包み込んでいき、髪の色を服装を変化させていく。

 銀色だった髪の色は、漆黒に染まり、普通の女の子のような服装も、大魔王かのように邪悪に、それでいて若干のエロスを感じるものへとなった。

 というか、なんだか成長していないか? これも強くなった影響なのか?

 そして、右手にはナイフほどの長さだった魔剣ディアブロもすっかり力を取り戻している。いや、力を増した影響でディアブロも変化していた。

 より邪悪に、より黒く、より鋭く。


「確かに、今までの俺だったら今のお前は止められないだろうな。だけど」

『いっちょやるか! 相棒!!』


 アイオラスをから解き放たれる光は、周囲へと広がり、それは俺へと集まっていく。そして、一瞬にして弾けた。


「今の俺は、普通の勇者じゃない。神だ」


 新たな俺の姿。

 髪の毛は白くなり、びしっとしたスーツ姿だったのが今では、真っ白な服に包まれた勇者のようになっている。

 体には常に神力を纏っており、どこぞの戦闘民族のようになっている。


「ならば、我は神をも殺す魔族となってやろう!! 貴様を殺し、我は再び魔帝として解き放たれよう!! 覚悟するがいい、刃太郎!!!」

「させねぇよ。お前は一生、大食いキャラとして過ごしてもらうぞ!! バルトロッサ!!」


 互いに、名前を呼び合い、一斉に飛び出す。

 そして、力強くぶつかり合う神の力と魔の力。

 混ざり合う白と黒。

 どちらも、一歩も引かない攻防の中、自然と笑みが零れる。


「くっくっく! 何を笑っているのだ?」

「お前こそ、いつもの高笑いはどうした? 静かに笑うなんて、珍しいな」


 ガキィン! カギィン! とどこまでも響き渡るような剣と剣のぶつかり合う音。

 弾ける神力と魔力の波動が、空気を振動させる。

 次第に、二人は空中でぶつかり合い、当たり前のように停止していた。


「ずっと、我はこの時を待っていたのだ。だが、このように静かに笑うとは我自身も驚いている」

「それは、お前が変わったってことだろ。どうだ? 今からでも遅くない。魔帝なんて辞めて、俺と一緒に教師でもやってみないか?」

「それは……ありがたい誘いだな!!」


 などと言いつつ、バルトロッサは俺へと背後から切りかかってくる。

 しかし、それを読んでいた俺は振り返ることなく受け止めた。


「言っていることとやっていることが逆だぞ?」

「今の我は魔帝バルトロッサ。貴様を倒す存在。今やるべきことは、貴様を殺すことのみ!!」


 更に魔力を爆発させ、それを変質。

 目の前の獲物を噛み砕くかのような鋭利な牙へとなった。


「そういえば、そうだったな。だったら、俺も思う存分お前を倒しに行こうか!!」

『俺は最初からそのつもりだったぜ、相棒!!』


 アイオラスから解き放たれる障壁が、闇の牙を弾く。

 そのまま、流れるようにアイオラスを横薙ぎ。

 が、バルトロッサは魔力を帯びた左手で受け止め、空いている右手のディアブロを振り下ろす。しかし、俺も空いている右手でディアブロを受け止めた。


「滾る。滾るぞ、刃太郎! 我はずっとこんな戦いをやりたかった!!」

「俺的には、今のお前とは若干戦い難いんだがな!」

「ほう? それは、我が女だからか?」

「それもあるが……なあ、バルトロッサ。マジで、俺達と一緒に過ごさないか? お前はずっと拒否ってきていたが。俺はお前と友達になれるって思っているんだ」

「……」


 これまでのことが鮮明に思い出される。

 毎日のように俺に勝負を仕掛けてきては、やられて、それでも諦めずに挑戦してきて。何かが起こった時は、協力をしているわけじゃないとか言いながら協力をしてくれて。

 ただ純粋に、今の生活を楽しんでいるバルトロッサを見て、俺は。


『相棒は、どうやら本気みたいだぜ? 俺は、どっちでもいいがな』

「ふん。真剣勝負の中で、何を言い出すかと思えば……」


 そう呟き、自ら離れていく。


「刃太郎よ。我は、貴様のことを一度たりとも友になりたいとは思ったことはない。我にとって貴様は、倒すべき存在であり、貴様にとっても我は止めるべき存在だったはずだ」

「まあ、確かにそうだが」

「これまでも、これからもそれは変わらない。……我は、魔族。そして、貴様は神。我は決して相対せぬ存在! ゆえに!!」


 ディアブロを天へと投げる。

 刹那。

 ディアブロは、弾け複数の魔方陣へと変化する。それは、バルトロッサの周りに集まり、膨大な魔力を生み出していく。


「貴様とは、こうして戦うことでしか分かり合えぬ。それでよかろう?」

「……つまり、喧嘩友達ってことか?」

「だ、誰がそう言った!! ライバルだ!! ライバルだと我は言いたいのだ!! 勘違いをするでない!!」

『何が違うんだ?』


 確かに、喧嘩友達とライバルって似たようなものだと俺は思うんだが。必死になっているバルトロッサを見て、俺は小さく笑いながらアイオラスを構える。


「まあ、そういうことにしておいてやるよ。それじゃ、決着と行こうか。ライバル」

「わかればいいのだ。では、終幕としよう。この一撃で!! 集え、魔星!! 我が道を邪魔をする敵を撃ち滅ぼせ!!」


 大技で決着か。

 そういうことなら、俺も乗ってやろうじゃないか。


「いくぞ、アイオラス」

『やったろうぜ、相棒。今のお前の力を見せ付けてやれ!!』

《白き一閃。それは、全てを切り裂く一撃。神の名の下に、発現せよ!》


 重なり合う声に呼応し、膨大な神力がアイオラスの刃へと収束していく。


「この一撃にて沈め!! 《ディアブロ・ノヴァ》!!!」

「この一刀に全てを籠める!! 《アイオラス・セイヴァー》!!!」


 ぶつかり合う二つの力は、どちらも一歩も引かない。

 しかし、力は徐々に混ざり合っていつつも、互いを消しあっていた。


「我は、負けぬ。今日こそ、貴様に……勝つ!!!」


 更に魔力を注ぎ込むことで威力を増したバルトロッサの攻撃は、俺の攻撃を押していく。

 強い……本当に強くなった。

 あの時と比べれば、本当に。

 だが、それは俺も同じだ。


「アイオラス!!」

『おうよ!』


 集う神力。

 増大する光の刃。それは、増大したバルトロッサの攻撃を。


「な、なにぃ!?」


 切り裂いていく。


「もう……一押しだあああぁっ!!!」

「ぐぅぅおおおっ!?」


 アイオラスを振りぬき、俺はふうっと一息つく。

 どうやら、俺が押し勝ったようだな。

 いやぁ、マジで今までの俺だったら絶対負けていたな、さっきのは。


「……」

「よっと」


 そのまま地面に落ちていきそうだった、バルトロッサを受け止め、共に地面へと下りていく。仰向けに下ろすと、バルトロッサは元の姿に戻り青空を見上げながら口を開く。


「また、負けたか」

「そうだな」

「まったく。いつになったら、我は貴様に勝てるのだ……」

「さあな。もしかしたら、永遠に勝てないかもしれないな」


 隣に並び、俺はバルトロッサの語りに言い返していく。そして、しばらくの沈黙の後バルトロッサは勢いよく立ち上がり、俺のほうへと振り向く。


「刃太郎よ!!」

「どうした?」

「今日のところは、負けにしてやる!! だが、次こそは我が勝つ!!」

「……ああ、うん」


 なんだいつも通りか、と俺はどうでもいいように返事をした。しかし、その後の言葉にさすがの俺も驚いてしまう。

 指を擦ると、出てきたのは光太にいつかの悪魔娘ユフィカだった。というかこの感じ……光太のやつ、悪魔堕ちしてやがる。


「今日からこの世界に、我の城を建てる!!」

「……はっ?」

「ちなみに、今のところの配下はこの二人と。コトミ、それにコヨミだ! あ、ついでに旋風丸も入れてやった」


 コトミちゃんやコヨミがバルトロッサの配下? い、いつの間に。それにあの旋風丸も? いったいどうやって……。


「ま、待て! そんなこと俺が許すとでも思ったのか?」

「許さぬと言うのなら、我が城に攻めてくるがいい。あの時のようにな」


 そういうことか。だが、まさかコトミちゃんやコヨミまで配下にしたとは。これが、寝取られというやつなのか。

 そういえば、最近二人とも連絡を取り合っていなかったしなぁ。なんてこった……まあ、旋風丸は別にいいとして。


「威田刃太郎! 次こそは、貴様の息の根を止めてくれる!! それまで、せいぜい生き延びることだな! くっくっくっく! アッハッハッハッハッハ!!!」

「覚悟しろ! 今の俺は再び魔族となった!! 夜道には気をつけるんだな!」

「ば、バルトロッサ様。今宵は、いったいどんなプレイを」

「ん? 今日は、疲れた。お前とは遊んでやらん」

「ほ、放置プレイですね!? で、ではこの縄を……」


 なんだか、あの子もすっかりと変な方向に染まってしまっているな。バルトロッサ自身にはあまり、そういう自覚はないんだろうけど。

 それにしても、城か。

 まあ、この世界は他のところよりも小さいとはいえ建物は今のところ学校のみ。建物が増えればそれだけ活気が出るけど。


「お、お兄ちゃーん!! た、助けてぇ!?」

「刃太郎さん!! あ、あのあたし!!」

「させません!! 刃太郎様! 私の告白を!」

「それもさせないよ! 刃太郎さん! 先にリリーの!」


 なんて、考えていたら背後から騒がしい声が近づいてきた。


「ふふ。これから、なのですよ刃くん」

「まあ、そういうことね。今でも、十分活気があるとあたしは思うわよ?」


 いつの間にか、俺の両脇に佇んでいた先輩神様達。

 まあ、確かにそうだな。

 俺の世界は……まだ始まったばかりだ。時間なら、たっぷりある。


「お前達ー! そろそろ次の授業の時間だぞー! さっさと学校に戻れー!!」


 これが俺達の今の日常。

 普通じゃないけど、それがいい。さあ、これからどうなっていくのか。想像しただけで、楽しくなってくるな。

そんなこんなで、半年間ご愛読ありがとうございました! 自分もまさかここまで人気が出て、ここまで書いていけるとは思ってもいませんでした。

ローファンタジーなので、ハイファンタジーよりは……と思っていたのが、終わってみれば自分が書いた中で一番になっていたという。


今作はこれにて完結となりますが、スタイリッシュ警備員の作品はまだまだ続きます。というわけで、この後……たぶん、お昼中には新作を投稿できるかと思います! 新作は、なんと……なんと! SF! ファンタジーばかりだったので、色々と知識が偏ったりしていますが、新たな挑戦! 新たな可能性を信じて、張り切って書いていこうと思います!!

 

さて、あまり長いとあれなので、これにて。

最後に……本当にご愛読ありがとうございました! これからも頑張りますので、スタイリッシュ警備員をよろしくお願い致します!! では!! 新作でお会いしましょう!!

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